物語の始まり XIX
数日後のある晴れた昼下がり。
「あんたこんなとこで何やってんだい?」
かつて『ブラックバスターズ』に出会った場所。彼らの住処に向かった紗希は、警察の黄色い帯がまかれ、すでにボロボロの家の姿を見て立ち尽くしながら、一人の老婆に声を掛けられた。
「えっと、ここに住んでた人にお礼を言いに来たんですけど……」
「え!?ヤクザにかい?」
老婆は驚きの表情を見せる。
「ヤクザ…?」
「だって、そこに隠れて住んでたヤクザがこないだの銃撃事件を起こしたんだろう?それより前は空き家だったし」
「……え?」
空き家。老婆はそう言った。
しかし彼らはどう見てもしばらく住んでいたはずだ。ヤクザ、というのがこの間ヒカルに返り討ちにされた人達の事なら、彼らはどこから来て、どこに行ったのか?
紗希は少し悩んだ。しばらくしてから、
「……住所違いだったみたいです」
そう言って老婆に会釈して、その場を後にした。
彼らが結局何者なのかはわからない。でも、きっとまたいつか会える。だから礼はその時でいい。紗希は心の中でそう思った。
「戻りましたー」
紗希は自宅に戻ると、部屋で座る男に声をかける。
「……やはりいなかったか」
部屋にいるのは田中である。
あの後、紗希の希望で田中は一緒に住むことになった。
ボディガードとして、事情を知る者としての義務として、そして……
「……」
「何を笑っている。買い物に行くんだろう?早く準備しろ」
無言で笑顔になる紗希を気持ち悪がりながら田中は紗希を急かす。
「……体は大丈夫か?」
「……はい」
事件の後、紗希は特に異常もなく過ごしていた。
彼女がどうなったのかは誰にもわからない。少なくとも紗希の体は今までと変わらず01が存在しているし、また周りに何かないとも限らない。
ただ、紗希には最後に声が聞こえた。
「……バイバイ……」
どこか安心していたような、少し寂しそうな彼女の声が。
「さ、準備完了です!行きましょう!」
紗希と田中は住んでいるマンションの玄関を開け、外に出て歩き出す。
こうして神奈川紗希の依頼は幕を閉じた。ブラックバスターズにいつか会える、そんな日が来ることを少しだけ期待しながら。
「なんでダメなんだよぉ!?カバンも教科書も、穴だらけになったのはアニキのせいだろうがよ!」
「無理なものは無理だ!まだ前回の依頼の報酬も受け取ってないしそもそも今日食事できるかすら怪しいレベルだ!大体お前があの家に放課後直行してこなければそんな風にはならなかっただろ……」
「「「「あ」」」」
最も、『そんな日』はすぐに来てしまうのだったが。
これにて第一章ひとまず終了です!長すぎました……!
次話はおまけです!話に出てこなかったあれやこれやがどうなったのか、是非お付き合いください。
更新は4月の14日の予定です!




