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ブラックバスターズ  作者: 岩魚
死の館と霊能少年
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死の館と霊能少年 Ⅰ

「行ってきまーす」

 クロは声をかけて家を出る。家にはすでに誰もいないが、これが彼の日課だった。

「右よーし、左よーし、目撃者なーし、よっと!」

 マンションの入り口で周囲を確認した後、クロは大きく飛び上がる。近くの家の屋根に飛び、屋根から屋根へと飛び移りながら中学校を目指す。

 龍の身体能力があるからこそ可能な芸当であり、見られれば怪しまれることは間違いないだろう。しかし、今までに見つかったことはなかった。

 しばらくして中学校の前にクロは飛び降りる。そこには誰の姿もない。

「7時半だからか?毎回人がいねえってのも悲しいもんだな…」

 部活組は朝練でもっと早く来るしそうじゃない者は遅くに来る。その為クロはいつも一人で登校することになっていた。

 もちろんクロがこうなっているのは理由がある。

「んじゃまあ、始めるか」

 クロはその場から壁を蹴って駆け上がり、校舎の屋上に立つ。

 そして一人で殴り合いを始める。言葉にすると矛盾しているが、いわゆるシャドーボクシングのようなものであった。

 15分後、クロは汗を拭きインナーを着替える。

「そろそろ来そうだな」

 クロはそう呟きながら再び荷物を抱えて飛び降り、校舎の入り口に着地するとそのまま教室へと歩いていく。これがクロの日課である。

 人間の星に来たとはいえ、体を鍛えるのをさぼるというわけにはいかない。特にクロたちの営む何でも屋は体が資本のようなものだ。なおさらであった。

 とはいえ普通の人間と同じ訓練というわけにもいかない。龍には龍のレベルというものがある。それなりに人間離れした訓練をする必要があった。

 しかし、この星に来てしばらくしてクロたちは学んだ。この星において人間にできない動きをする人型生物というのは怪しまれると。

 その為、あまり目立たない、できれば誰にも見られないような場所でクロたちは訓練をする必要があった。アクルスやヒカドラもそれは同様であった。

 その場所としてクロは鷹島中学の校舎の屋上を選んだ。理由は二つ。一つは周囲に屋上が目に入る高さの建物がないため。二つ目は屋上からの景色がいいからであった。

 クロの通う鷹島中学は近くの土地と比べると高いところに建つ。山というほどではないが、緩やかな坂を上り続けた先にある中学校で、屋上からは水平線と朝日に照らされる建物が見える。雀のさえずりを聞きながら見るその景色はクロにとって楽しみの一つとなっていた。

 しかし本来屋上は立ち入り禁止である。クロは鍵を無視して壁から上っているが、屋上にいることを見つかるわけにはいかない。その為、この比較的人のいない時間に登校し訓練していた。

「……ん?」

 自身の教室についたクロは教卓にプリントの束が置かれていることを確認する。その後ろには黒板があるが、そこにはでかでかと

『↓これ配っておいてくれ竜野』

 とチョークで書かれている。書いたのは彼の担任である。

「人使い荒いぞ、ったくよぉ……」

 クロはぶつぶつ文句を言いながらもプリントを各机に置いていく。

「ふー、なになに……」

 配り終え一息ついたクロは自身の席に座りながらプリントを確認する。

「『不審者のお知らせ』…?」

 内容は最近このあたりで不審者を見かけたという情報であった。

「そういえば先生もなんか言ってたな。行方不明がどうとか……」

 クロは担任から、少し前に行方不明者が出たという情報を聞いていた。時期的にはちょうど田中太郎をめぐる一件をクロたちが調べた、あの日の少し前のことだった。

「……ま、俺には関係ねぇか」

 クロはそう言いつつプリントをしまう。実際に不審者が誰を狙うかはわからないが、クロの場合は返り討ちにできるし、そもそも金髪に碧の目、いかにも不良そうな見た目のクロの前に不審者がのこのこ正体を晒すようにも彼には思えなかった。

 最も、依頼があれば解決するつもりではあった。あるかは分からないが覚えておくに越したことはない。クロはそんなことを考えてプリントの保管を選んだ。

「お、ちゃんと配ってくれたみたいだな。感心感心」

 そこに大人の男性が入ってくる。年は30そこそこ、無精ひげを生やし、髪は短めのツーブロック、赤いジャージを着たその容姿は学校の外で見れば確実に不審者だ。

「まだなんかあんのかサボり教師」

 クロは入ってきたその男性に悪態をつく。入ってきたその男性は閏田守(うるうだ まもる)、この中学の体育教師であり、クロの担任だった。

「サボりとは人聞きの悪い。適材適所ってやつだよ。俺が配るより教室に早く来るお前が配った方が俺の手が空いて仕事の効率ががるだろ?」

 閏田は笑いながら話す。

「何が適材適所だ、どうせタバコ吸ってたんだろうが」

 クロは諫めるように閏田をにらむ。

「ストレスの発散も教師の仕事だからな。それに、いろいろ見逃してやってんだからいいだろ?」

「ぐ……」

 閏田は笑みを崩さずに話し続ける。

 クロは中学への入学に際して、戸籍や入学金など、いろいろと問題が多かった。もちろんほとんどはヒカドラがなんとか用意したが、それでもいくつか残ったものがある。

 一つはクロの見た目である。お世辞にも日本人的ではないクロの見た目は周囲から目をつけられたが、ハーフということでなんとかごまかしている。その便宜を図ったのは彼だった。

 もう一つはクロの家庭事情である。さすがに宇宙人であるなどと言ったわけではないが、3人兄弟で暮らしていることは彼も知っており、それが不利益とならないようにうまく書類を作ったのも彼だ。

 兄弟で暮らすことが問題なわけではないが、クロの家で正式に勤務している者はいない。アクルス、クロは身分上学生であり、ヒカドラは実質フリーターである。このことが露見した場合、先ほどの戸籍の件と合わせてクロ達は普通の生活を送ることが出来なくなる可能性があった。

 その為、クロは基本的に目の前のただの人間である教師に頭が上がらなかった。

「でだ。お前に一つ頼みたいことがあってな」

 閏田はクロに一枚の写真を手渡す。

「この子、見たことは?」

お読みいただきありがとうございます!クロの日常の一コマのお話でした。担任の持ってきた写真の意味とは何なのか?それではまた次回!

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