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別世界

 いきなりピョンと思わぬ方向に跳び、大きな角を突き出すようにして迫って来る。

「狭いな」

 篁文はそう言って、半身で躱しながら切る。

 今回次元の揺らめきの向こうから出て来たのは、大きな角を持つ四つ足の動物だった。揺れる景色の向こうからこちらを見ると、ゲゲゲゲゲと声を上げ、涎を垂らし、突進してきたのだ。

 ドルメは槍を振るい、パセはナイフを振り回す。

 不意に中の1頭が、その恐るべき脚力で壁を蹴って空中に躍り上がると、紗希の方へと跳んで行く。

「え!?」

「ドルメ、踏むぞ」

「うむ!」

 篁文は腰を落としたドルメの膝上を踏んで壁に跳び、壁を蹴って狭い通路でドルメとパセを飛び越えると、銃を引き抜いて紗希に飛び掛かるヤギもどきを撃った。

 ヤギもどきは白と茶色の斑の体を膨張させ、弾け飛んだ。

「紗希、下がってろ!今回柵はいいから!」

 紗希は言う通り、下がって行く。

 同時に、篁文は距離のあるヤギもどきを銃でいくらか片付け、スティックを起動させて突っ込んで行った。

 異次元が遠ざかり、ヤギもどきを全て片付けると、息をつく。

「狭いなあ」

「うむ。相手によっては困るであるな」

「サル型や虫型くらいなら行けるけど、こうピョンピョン跳ばれちゃうとねえ」

 紗希は、申し訳なさそうな顔で立っていた。

「ううう。役に立てなかった」

 紗希が向いてないのは明らかだが、本人はやると言ってきかない。人数が少ないからと言われると誰も反論できないでいたが、ケガをする前に別の仕事を振り分けるべきだと皆で実は相談していたのだ。

 次元トンネルの中にある特殊次元庁の部屋に戻ると、ヨウゼ、綾瀬、ルルカ、セレエの他に、迷彩服の男女が2人いた。

「お疲れ様でした」

 ヨウゼが穏やかに言い、沢松がそれに続ける。

「お疲れ様。

 自衛隊から寄こしてもらった新しい人員だ」

 それで、迷彩服の2人がシャキッと背筋を伸ばして、男の方から自己紹介をする。

「伊丹昇太2尉です」

「河田清香3曹です」

 伊丹の方は20代後半、河田は20歳半ばだろう。鍛えられた体をしていた。

 それで篁文達も自己紹介をした後、沢松が紗希に向かって言った。

「そういうわけで、紗希は配置転換な」

「ええーっ!?」

 不満そうな声を上げる紗希だが、皆、同意してやる者はいない。

「紗希、それがいいとあたしも思うよ」

「うむ。吾輩もそう思うであるな。篁文もそう思うであろう?」

「そうだな。紗希は――」

 どんくさい、運動音痴、色々言いかけたが、篁文は危ういところで踏みとどまった。

「……こ、広報とかどうだ?そういうのは好きだろ」

「……そりゃあ、まあ、好きだけど」

「似たようなもんだ。な、セレエ」

 セレエは、

「僕に振りやがったな、篁文のやつ。

 こほん。そうだな。この前みたいな騒ぎが起きないように、発信しておけばいいよな?」

 チラッとルルカを見ると、ルルカはタバコをくわえてよそを見た。

「適材適所だ、紗希。な」

「……私がどんくさいって遠回しに言ってる?」

 皆が一斉に首を横に振った。

 伊丹と河田は、聞いているのかここから見ていて察したのか、伊丹は困ったような顔で立っている。河田は、冷たい目で皆を見回していた。

「紗希。俺は紗希がどんくさいとは思ってないぞ」

「篁文ぃ」

「でもな、紗希はきっと、こういう方が得意だと思う」

「そうかなあ。でもねえ」

「この先、ゴキブリ型が出て来てもやれるか?」

「ヒッ!?」

「もしくはつぶらな瞳のハムスター型」

「あああ……!」

 紗希は配置転換を受け入れ、皆はホッと胸をなでおろした。

「じゃあ、紗希の武器の登録を変更するからね。それと、僕のと」

「では、よろしく」

 俺達は、新しい編成に変わった。


 一緒に訓練をし、実戦を経験し、お互いの動きも掴んだし気安くもなった。敬語もなしにして、呼び名も、伊丹はショウ、河田はキヨだ。

 5人で一緒に訓練をし、一休みしながら雑談をしていた。

「外ではここの事は広報を通じて知るのみですが、流石に突入しようというバカはいませんよ、もう。別世界と捉えていますね」

 ショウが外の雰囲気を伝えた。

「ただ、国となるとねえ。技術を何とか手に入れたいというやつは相変わらずで」

 ドルメとパセは、溜め息をついた。

「吾輩の所くらい技術が遅れていれば却ってそういう声は出ないであるが……」

「あたしのところもよ」

「セレエの所はもっと進んでるし、面倒なのは、中途半端な地球だけか」

 篁文達日本人は苦笑した。

「まあ、そういうわけで、篁文と紗希は気を付けてくれ。篁文は滅多な事は無さそうだが、紗希を盾に取られたら弱いだろ?」

「え……まあ……幼馴染だし」

 篁文の答えに、皆、ニヤニヤとしている。わかっているとも、と言わんばかりの顔付きだ。

 キヨだけが、フンと鼻で笑って冷笑を浮かべた。

 そこへ、紗希がプリンの差し入れを持って来る。

「お疲れ様ーっ」

「紗希、もう、可愛いわねえ」

「へ?へへへっ。ありがと、パセ」

 紗希が笑い、おやつならとセレエもやって来て、皆でおやつになった。

 明るく冗談を言い合う空気の中で、棘のように、嫌な予感が引っ掛かっていたのだった。



お読みいただきありがとうございました。評価、御感想など頂けたら幸いです。

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