第96話 スライムダンジョン
「私も知らないわぁぁあん!!」
「知らないんかぁぁあぁあいいいい!!!」
スライムがダンジョン化すると言う事象について知っている風な口調だったプリンちゃん。
知らないんかい!俺は即ツッコみを入れた。
「パンツ君。聞くだけ無駄だよ。こいつは頭を使うタイプじゃないからな。オカマだし。」
「ちょっとぉおおん!!オカマなのは関係ないでしょうぉおおおん!!!失礼しちゃぅううんん!!」
カロリーさん……相変わらずプリンちゃんに対して辛辣だな(笑)
カロリーさん達と冒険者パーティを組んでいた頃は、プリンちゃんは武闘派で鳴らしていたらしい。
考えるよりも先に身体が動いてしまうとカロリーさんは言う。
「こいつは素早さもパワーもあるからな。戦闘になると勝手に突っ走るんだ。ほんと迷惑なオカマだったぜ。」
「うるさいわねぇええんん!!」
「そもそもお前が俺たちと出会った切っ掛けもおまえが力試しと称して男を襲ってギルドから討伐依頼が出たからだろ(笑)」
「だぁぁああってぇぇん!強い男の子とまぐわり……腕試しをしたかったのぉぉおおん!」
プリンちゃんの犠牲になった男子諸君………ご冥福を……。
「ま、そんな事より、スライムのダンジョンについてだったな。色々な説はあるけど、その筋に詳しい学者連中が言うには、餌を呼び寄せる為ってのが有力らしいね。」
「餌?」
詳しく聞いてみると、スライムがダンジョン化した後、そこに魔獣が住みつきそれ餌とする更に強い魔獣も住み着き、更にその魔獣を討伐しにくる者達がやって来る。
どちらが死んだとしても、ダンジョン。つまりスライムの腹の中で死ぬ事になる為、労せずして食糧確報が出来、死体はスライムに吸収される。
そして吸収された者の知識や欲までも吸い取り、人や魔物が欲しがる食料や装備品を生成して次々におびき寄せて、吸収した人や魔獣達の知識から得た罠を設置して待ち構える。
装備品はスライムが吸収しておびき寄せる為の餌……つまり宝箱などになるとの事。
人の知識を吸収して幻のアイテムも生成する事も稀にある為、非常にレアなアイテムや装備品も出現するらしい。
所謂、提灯アンコウみたいな感じか。
光る(食料、アイテム、装備品)物で餌を誘き寄せる。
しかし……
「それって、探索に入った途端、いきなり入口を塞がれたりして、食われたりしないんですか?」
「そんな事にはならないのよぉん。彼らもそんな事したら次の餌がやって来ないって本能的に分かってるんじゃなぁい?今までそんな話は聞いた事ないし、私も冒険者時代に何度も入った事があるけどそんな経験ないわよぉおぉん。」
「プリンちゃん達も過去にスライムのダンジョンに入った事があるんですね。」
「スライムのダンジョンはレアアイテムが通常の洞窟ダンジョンに比べて出現しやすいからな!」
動物は本能に従って動くものだ。
誰に教わる訳でもなく、虫や動物でも罠を作成したり、住みやすい住環境を構築する生物は多数いる。
蜘蛛は芸術的とも言える巣を張り巡らせたり、蟻も巨大な巣を作り、海のハンター蛸や烏賊は己の色を変えて擬態して獲物を捕獲したりする。
スライムすごっ。
ドロドロねばねばしてるだけの単細胞生物かと思ったが……スライムの認識を改めなくてはいけないな。
恐らく日本人の大凡がイメージするであろう青いスライムさん。ごめんなさい。
スライムのダンジョン。略してスラダン………。バス○ットボールの漫画だっけ?
「もぉぉおそんな難しい話はもういいわよぉおん。パンツちゃぁん。早くイキましょ?ウフッ!ホラホラァん。早く私に乗ってぇえん。」
「何してんだこいつ、キメェな。ほれ。」
「ギャッ!!目が!!MEGAaaaaaaaAhaaaa!!!」
後ろ向きになってライオン姿なのに女豹のポージングでケツをフリフリするプリンちゃん。
こちらを振り向いてウィンクした所に例の強力魔石ライトがプリンちゃんに炸裂した。
カロリーさん。羽を毟るよりも手軽に罰を与えるアイテムを手に入れたみたいだな。
この人たちといると退屈しないなぁ。
俺が苦笑いしている所にマナが近づいてきた。
「これおまえ達、下らぬ事で主を困らせるでない。」
「おお!流石神獣様!!達観していらっしゃる!!伊達に2000年以上生きてない!!!」
「主どの!!年齢の事は言うでないのじゃ!!後、我を年上みたいに敬う態度を取ってはいかんのじゃ!!それにまだ今世ではまだ300年しか生きてないのじゃ!!」
年齢の事、気にしてたのね。
ほっぺを膨らませてぷりぷりしている幼女が怒っている。
前世を含めて2000年以上生きてるのにそこは達観してないんだな。
年上みたいに敬うなとは……?実際年上なのに………300年しかって……。
傍から見たら、大人の女性とライオンが言い争ってるのを幼女が事態を収めた何ともシュールな絵面なんだけどな。
ここは異世界、気にしない気にしない。一休み一休み……。
「ほれ。主殿。何をぼーっとしておるのじゃ。ダンジョンに入って調べるのじゃろう?」
あら、一休みしようとしたら、マナに促されてしまった。
ダンジョンの入口で何とも姦しいやり取りをしながら、俺達は中へと歩を進めた。
?? スライムダンジョン1階層 ??
「このダンジョンはまだ出来てでそこまで大きくなさそうじゃの。」
スライムのダンジョン、略してスラダンに一歩足おを踏み入れて早々にマナが呟く。
「マナって、そんな事が分かるのか?」
「我には空間把握能力と言う能力があるのじゃ。これはその名の通り空間を3次元で認識出来るのじゃが……大まかに探ってみたが、まだこのフロアしか構築出来ていない様じゃの。」
「え?このフロアしかって……と言う事は、1階層しかないって事?」
「うむ。」
そうなのか。初ダンジョンで緊張と期待を胸にしていたのだが、俺の思っていたダンジョン探索にはならなさそうだな。
ダンジョンと言えば、下層に行くほど強い敵が出て来て最下層でボスと対決!みたいな熱い展開になるかと思ったんだが……。
「しかし、随分と変わったダンジョンじゃな。1本の通路にまるで枝葉を伸ばしている巨木の様な作りになっておって枝先が部屋の様になっておるのじゃ。」
「マナちゃん凄いねぇー!そんな事も分かるんだ!!ウチのギルドで働かない?いや私とパーティ組もう!ね?」
「嫌じゃ!!」
カロリーさんがマナを勧誘しだしたのだが、はっきりと拒絶してマナは直ぐに俺の後ろに隠れてしまった。
どうやらカロリーさんに無理矢理、頬ずりされた事で苦手意識が付いてしまった様だ。
神獣様も形無しだな(笑)
カロリーさんは涙目で指を咥えている。
子供が好きなのはいいけど、スキンシップ過剰で怖がらせたら本末転倒だろ……。
と言うか、マナに同門の忍を喰われた筈なのに、その事については何とも思わないのだろうか……。
「カロリーさん。同門の忍がマナに喰われた事についてはどう考えてるんですか?」
「え?あぁ、そんな事言ってたねぇ。もう忘れてたよぉ。アハハ!」
「アハハ!って……」
「どういう状況だったかは知らないけど、望んで神獣に挑んで敗れたなら本人も本望だったんじゃないかな?そもそもマナちゃん(神獣)に出会える事さえ難しいんだしね。喰われた奴も神獣相手に挑もうとするぐらいの強者だったんだろうし。」
成る程。
カロリーさんの中では、既に過去の事。
自分が望んで戦いを挑み敗れた事には蟠りはない……か。




