第95話 未知
「ぎゃぁぁぁああああああん!!目が!MEGAaaaaaaaAhaaaa!!!」
俺が光魔法を付与した魔石にカロリーさんが魔力を通すと、その光を真面に喰らったプリンちゃんが目を押さえて苦しみ悶えている。
凄い効果だな。
俺が元いた世界でも軍や警察の特殊部隊が建物に籠城するテロリストに突入する際に使用する『閃光手榴弾』の様な効果だ。
勿論、知識として知っているだけで、実際に俺自身が喰らった事はないけどね。
閃光手榴弾は強烈な光と音により、対象者に光による方向感覚の喪失や、音による難聴を引き起こさせる代物だ。
別名スタングレネードとも言われている。
「しょうがないだろぉ?こんなに光るって知らなかったんだし。それに普通の照輝が付与されたアイテムは周囲を朧気に照らす程度だろ?」
「だからってその後も光を浴びせ続ける必要ないでしょうぉぉおおん!!ばかあぁぁああん!!!」
そう。
カロリーさんは魔石のライトで目潰しを食らってのた打ち回っているプリンちゃんに笑顔で明かりを照射し続けていたのだ。
「……………そうだ!これからおまえが妙な言動や行動をした時には、こいつ(魔石ライト)を使おう!ウリウリぃ。」
「んもぉぉぉおおん!!やめてぇぇぇん!!」
カロリーさん、ドS過ぎるだろ。
薄目でこちらを怯えながら伺い視るプリンちゃんに、また魔石のライトを容赦なく当てようとする。
昔、パーティを組んでいた事もあって、ドMのプリンちゃんときっと相性いいんだろうな。そう言う事にしておこう。うん。
しかし、通常、市場に出回っている照輝が付与された魔石の明るさは、カロリーさん曰く、辺りを朧気に光らせる程度らしい。
ガガンさんの家の明かり、やゲイブルさんの工房で見た、ぼんやり照らされていた間接照明程度がデフォって事か。
これはビジネスチャンスなネタだな……。グフフ……。
それと閃光手榴弾の様に1回の使用にして、強烈な光と音を発生させる魔石を作れば、冒険者に売れそうだな。
……ムフフ……人生長いし(不老不死)、ギルドや冒険者相手に商売するのもいいかもしれない。
そんな事を思っていると、幼女姿のマナがこちらにやって来た。
「主よ。いつまで遊んでおるのじゃ。はよ先に進むぞ。」
「ええぇ!?俺!?」
俺が遊んでる事になってるの!?解せぬのじゃ。
数分後、めくらまし状態で動けなくなっていたプリンちゃんと狼達も回復したので先へ進む。
再び歩き始め、時間の感覚が無くなりかけた頃、大体1~2時間?程度だろうか、俺達と並走している副官の狼が上に跨っている幼女姿のマナに伝話を飛ばしている様で、マナが一人うんうんと頷いている。
「主殿。どうやらこの辺りにその行方知れずのグリフォンは降り立ったようじゃ。」
「何にもないね。」
「ほんとうぉおん。何もないわねぇん。」
マナの言葉にカロリーさんとプリンちゃんが反応する。
「ふむ……。僅かに魔力の流れが乱れておるのぉ。どれ。」
マナはそう言うと、副官の背から降り、目の前に魔力を帯びた手を翳して周囲を探索する様な仕草をする。
すると靄が晴れた様に、突如として視界が開け洞窟が現れた。
しかし洞窟と言っても湿ったらしい土壁をくり抜いた様なものではなく、どちらかと言うと人為的に作られた物の様に綺麗な半円形の形状をしており、入口は淡く青白く光り輝いている。
大きさは大体、幅5m、高さ3m程だろうか。
かなり大きい横穴の筈だが、その存在を感じ取る事は難しい様に感じた。
意識しないとその入り口を認識出来ないのだ。
「ふむ。我の知らぬ間にダンジョンが出来ておったのか。」
マナが独り言の様に呟く。
ダンジョン……これがダンジョンか。
ファンタジー世界やゲームでお馴染みにのダンジョン。
しかし、マナが手を翳した途端にこのダンジョンが現れた。
「マナ、一体、何をしたんだ?」
「簡単な探知魔法なのじゃ。」
「探索魔法?探知魔法って、風魔法で周囲の魔力痕跡を探知する魔法だっけ?」
「うむ。知っておるとは流石我の番となる主じゃな。」
「マナちゃんすごぉおおい!探知魔法も使えるんだぁぁ!!流石神獣様だね!!大好きぃぃいいいぃん!!!」
マナが俺に抱き着こうと近寄ろうとしたのだが、すかさずカロリーさんがマナに愛の告白をしながら後ろから抱き着き頬ずりする。
しかし探知魔法って……以前、ルク・スエルでギガパイ(ギガントパイソン)さん襲撃事件(勝手に命名)の際に、騎士団がギガパイさんを討伐した相手を捜索する為に風魔法で探索魔法を使用していたな。
あれと同じ魔法か?
マナを愛でながらカロリーさんがプリンちゃんに話しかける。
「このダンジョンて、アレだろ?」
「そうねぇん。アレ系のダンジョンねぇん。しかもかなり高位の隠蔽魔法も張られてたみたいねぇん。気づけない筈だわぁん。」
何?アレ系て。
カロリーさんとプリンちゃんがぼそぼそと二人で会話しているのが聞こえてきた。
そんな事言われたら気になるじゃないか。
「な、何なんですか?二人とも、アレ系って。」
「あら、パンツちゃん知らないのぉん?アレよぉん。アレぇん。」
「おい、オカマ。パンツ君はまだ冒険者になりたてなんだから勿体ぶってないで教えてやれよ。」
「んもぉぉお!!失礼しちゃうぅうん!!オカマじゃなくて、オカマライオンよぉぉおん!!せめてライオンも付けてぇぇええん!!」
自分の種族忘れてない?
あなた、種族は一応、グリフォンの筈ですよ?
以前はオカマである事も否定してたのに……。もう開き直ってるな。
「そ・れ・に……うふふぅうん。焦らしはプレイの基本よぉおおん。ウフッ!」
クネクネしながらウィンクしつつそう答えるオカマグリフォン。
懲りないライオンだなぁ。また羽を毟られるぞ?
「このダンジョンはねぇん。………スライムなのよぉん。」
「……………?え?スライム?」
え?ダンジョンがスライムとな?どーゆ事だ?
俺の頭に「?」マークがある事を察したのか、カロリーさんが補足説明をしてくれる。
「ダンジョンには大まかに分けて2種類あるんだ。一つは普通の洞窟ダンジョン。そしてもう一つが、スライムが変異してダンジョン化したりするんだ。」
「スライムがダンジョン化て、そんな事あるんですか?スライムって、あの魔物のスライムですよね?」
「うん。そうだよ。勿論、普通のスライムじゃダンジョン化なんてしない……。実はまだ良くは分かってないんだけど、一部のスライムが突然、ダンジョン化するんだ。」
「それって……中に入っても大丈夫なんですか?」
俺は最初にスライムに襲われた時の事を思い出す。
マップの敵性マーカーにも反応しなくていきなり襲われて一部の服を溶かされかけたんだよな……。
副ギルマスのリッターさんに助けて貰ったのもいい思い出だ……。
ステータスを開いて敵性を示すマップを開くが、目の前の洞窟化?したスライムには反応を示さない。
代わりに『スライムのダンジョン』と表記されている。
このマップ画面は、俺の認識された名称が付与される様なので、今聞いた内容が表示されているのだろう。
「それは全く問題ないわよぉん。中は普通のダンジョンと同じの筈だからぁん。むしろ普通の洞窟ダンジョンより綺麗よねぇん。」
「そ、そうなんですか……。しかし……何でスライムがダンジョン化なんてするんですか?」
「パンツちゃん、知りたいのぉん?」
「そりゃ知りたいですよ。」
「ンフフ………そ・れ・はぁ………」
「そ・れ・はぁ……?」
「私も知らないわぁぁあん!!」
「知らないんかぁぁあぁあいいいい!!!」
俺は即ツッコんだ。




