第90話 捜索再開2
神獣マーナガルム改め、マナとなった白狼さん。
マナが率いるその群れは、テレパシーの様な魔法?を使い、喋らなくても意思の疎通も出来るらしい。
「マナさん。その伝話って俺も出来たりする?」
「うむ。既に主は我らの群れの首領であるからな。当然、出来る筈じゃ。我の事を思い、頭の中で話しかけてみるのじゃ。」
(マナさんの毛並はサイコ―です。またモフモフさせて下さいね~。)
「ガフォオオッ!!な、何をいきなり言うのじゃ!!!主どの!!!そ、そんな……まだ番になる前にそ、そんなふしだらな……。」
マナさんは噴出しながらも顔を赤らめてモジモジしだした。
え?いや、モフる事がふしだらって、さっき既にモフモフしたじゃん。何を今更。
「え?何々?パンツ君、何を伝えたの?何かイヤらしい事を伝えたんじゃないのぉ~?パンツ君のすけべぇ~。」
カロリーさんが顎に手をやりながら二ヒヒと茶化して来る。
「いやいや!そんなエロい事をお願いなんかしてませんよ!?また今度、モフモフな毛並を触らせてってお願いしただけです!」
「まっ!!パンツ君いやらしい!まだ乙女のマナちゃんの肌(毛並)をねっとりとたっぷりとずっぷりと撫でまわすつもりなの!?」
「いや、カロリーさん言い方!!」
「だっハハハハハ!!じょーだん冗談!」
カロリーさんは俺の背中をバンバン叩き豪快に笑う。
この人、本当に忍なの?全然忍んでないよね。
忍と言ったらもっとこう、寡黙でいかにもな黒装束を纏って黙って任務を遂行するイメージなんだけど……。
この世界の忍はまた違うのかな……。
「しっかし、あのオカマライオン。どこまで行っちまったんだぁ?一向に帰って来ねーなぁ。」
確かに。
カロリーさんが言う様に、俺達がプリンちゃんに放置されてから既に2時間以上は経過しており、このままではこの暗い森の中で夜を明かす事になりかねない。
まさか本当に置いてけぼり食らわされたのか?
と思っていると、突然マナさんが上空を見上げる。
「む?何かこちらに近付いてきておるな。かなりの速度じゃのぉ。」
かなりの速度で空を移動する物体……。
この世界に飛行機なんて物はないので、空を飛ぶ魔物、魔獣しかいない。
俺の知ってる空を飛ぶ生き物……あのオカマグリフォンのプリンちゃんである可能性が高い。
俺はマップを表示し、縮尺を広げると、青いビーコンが物凄い速さでみるみるこちらに進んで来ている。
青いビーコンに触れると、『オカマグリフォン(プリンちゃん)』と表示された……。
これ、俺の認識がそのまま反映されるみたいだな……。
種族名が『オカマグリフォン』になってる……。
するとあっという間に俺達が居た場所にプリンちゃんが降り立った。
「はぁ~ん。すっきりしたわぁ……あれ?あんた達!!マスファングウルフに囲まれてるわよ!!早くそこから離れるのよぉ~ん!!!!」
降り立った途端、俺達が狼に襲われていると思ったのか、牙を剥きだし、戦闘態勢に入るプリンちゃん。
誰のせいでこんな事になったと思ってんだ。
すると、カロリーさんがプリンちゃんにテクテクと歩いていき…………
ブブ血チィッ!!
「イッタぁぁああああいん!!!!」
「てめぇ!!今迄俺達をほっぽって、何処に行ってやがったんだ!!このオカマライオン!!!(ぶちぃぃいいいぃブチィイイ!!)」
カロリーさんはプリンちゃんのご自慢の鬣の一部を徐に掴むと躊躇なく引き千切った(笑)
鬣を引き千切るって宣言してたしね。
有言実行だね。
文句を言う間も引きちぎる手を止めないカロリーさん。
プリンちゃんは引き千切られた既に鬣だった物の上を痛みに耐えかねてもんどりうってゴロゴロと転げまわっている。
傍から見るとまるで遊んでるみたいだなぁ……。
俺がその光景をほのぼのと見つめていると、後ろに控えていた神獣マナさんが近づいて来た。
「あ、主どの。あれはキメラの類か?其れともグリフォンなのか?」
「一応、グリフォンみたい。変異種らしいから珍しいのかな?見た事ない?」
「我も長年ここに住んでおるが、久しぶりに見たのじゃ。前世でも2~3回しか見た事は無かったのじゃが……。」
「前世……?ちなみに、マナさんはどれぐらい生きてるんですか?神獣と言われるぐらいだからかなりの年月……。」
「主どの!乙女に年齢を聞くのは御法度ですのじゃ!」
乙女が『主の力……熱くて太くて固い魔力がドクドクと我に入って来るのを感じるぅぅううう!!!』なんて言うかね?
俺はジト目でマナさんを見る。
「わ、分かったのじゃ。その様な目で我を見る出ない。そうじゃな。人の暦で言えば、大体300年程度と言った所かのぉ。まだまだ未熟なのじゃ。」
「さ、300年!?いや!それってもぅ、バッァ……!?」
俺がババァと言いかけると、マナさんから俺達に攻撃を仕掛けて来た時よりも恐ろしい殺気を放つのを感じて俺は咄嗟に言葉を噤む。
「マナさん……あの、その……かなりの年月を召されていたのですねぇ……。」
俺は引きつった笑み(愛想笑い)を浮かべながらそう話すと殺気は収まった。
「ふん。我は神獣ゆえの。これでも人間の年齢で言えば、まだ10代前半程のピチピチなのじゃぞ?」
「えッ!?10代前半!?300歳で!?と言うか、寿命はどれぐらいあるものなの!?」
「寿命のぉ……我は元々一つの意思が繰り返し転生する者なのじゃ。ある意味寿命は永遠といっても良いのじゃ。」
「転生!?それは………どゆことですか?」
「そうじゃなぁ……。いずれこの肉体的な寿命が訪れはするが、精神自体はそのまま引き継がれ、新たな命として転生すると言う事じゃ。」
はぁ……。精神や記憶はそのまま引き継がれて新たな肉体を得ると言う事か。
神獣凄い。それって正にほぼ永遠の命を持っている様なものじゃないか。
『前世』と言ってたのはその為か。
「そ、それで、今のマナさんはもう何世代繰り返してるのでしゅか?」
「いや、まだ2世代程じゃな。肉体的には2000年程で衰えが来るゆえな。」
と言う事は、少なくとも2000年以上……完全にバッ……
心の中でそう思っていると、再びマナさんの殺気が溢れ出して来る。
(やだなぁ……冗談ですよ?じょーだん。マイケルジョーダン)
(主よ。その様な事を態々、伝話で伝えなくても良い。)
「後、主よ。我の事は『マナ』でよいのじゃ。過去含めて我と対等の関係が築ける者が現れるとは思わなんだ。それに行く行くはいずれ番になるのだしのぉ……」
すると2000年以上生きているらしいマナさんは顔を赤らめて俯きモジモジし尻尾をブンブン振り始める。
なんだ。
犬としてもカワイイじゃねぇか。
しかし番になんぞなれる訳ないだろう。
そもそも生物として異なるし、大きさも違い過ぎる。
俺は普通の人なのにマナは体高5m以上あるし……今も見上げる形で会話していて首が痛い。
「マナさん。」
「『マナ』で良いと言うておろう。」
「あ、はい。あの、マナ。まさかとは思うんだけど俺に付いて来るつもり?」
「当たり前なのじゃ!妻として、夫について行くのは当然じゃろう!!」
「いや、夫婦になってないからね。それにマナのサイズじゃ人里や街中には入れないぞ?」
「ん?なんじゃ。そんな事を気にしておったのか。やれやれ、神獣も随分安く見られたものじゃのぉ。」
マナはやれやれと首を振る。
するとマナが目を閉じ意識を集中させると、マナの周囲に霞がかかり、5mの体高を覆い隠す。
そして徐々に霞が晴れて行くと、そこにはマナの姿は無かった。




