第88話 神獣4
「パンツ君!!そこから離れるんだ!!!目覚めているぞ!!!」
「え?」
まるでナイアガラの滝の様な長い睫毛をバッサバッサとまばたきし,まるで黒い”真珠”の様なつぶらな瞳をしている神獣さん。神獣(真珠)だけに。なんつって。
起きてらっしゃったのね。
しかし……起きているにも関わらず、起き上がる素振りを見せない神獣さん。
俺の一撃でまだ足に来てるのか?
「キモチイイのじゃ……。」
「「 え? 」」
神獣が目を覚ました第一声が「キモチイイ」……だ……と?
予想外の言葉に俺達は言葉を失う。
な、何なんだ。
まさかM属性なのか!?
「…………今、何か勘違いされた気がするのじゃ?」
「いえ、大丈夫です。他言はしませんので。まさか神獣が”M”だったとは……。」
「違うのじゃ!!我はその……撫でらて偶にグリグリされるのがイタキモチイイだけで、痛みがキモチイイと言う訳では……」
「似たようなもんじゃないか。」
「違うのじゃ!!」
神獣さんはすっくと立ち上がりながら否定を口にする。
あぁ………モフモフがぁ……俺のモフがぁぁあ。
立ち上がったモフ……神獣さんは、突然、静かにスフィンクスの様な座り方で頭を垂れる。
猫の香箱座りみたいだな。
「まさか我が一撃で倒されるとは……。この世に生を受けて以来、初めて事じゃ……。しかも我を『カワイイ』などと呼ばれた事も初めてじゃ……。」
俺の呟き聞かれてたの?
「そ、そうなんですね。」
何だろう。気のせいか神獣さんの顔が僅かに赤く染まっている気がする。
「我ら一族、今生、命が尽きるまであなたにつき従いましょう!我らが主!!そして我が夫となる者よ!!!」
「「………………は?」」
神獣さんはそう言い、改めて頭を垂れると後ろに控えている他の狼も同様の動きをしている。
俺とカロリーさんは顔を見合わせる。
「お主は我を倒したのは紛れもない事実。我が一族の長となる資格を十分に持ち合わせておるのじゃ!!」
「いや、おるのじゃと言われても、犬のボスになるつもりは全くないんですが。」
「何を言うか。お主は我を倒したのだ。後、犬ではない!!さぁ……我と誓いの契約を結ぶのじゃ。」
「いやだから結ぶのじゃと言われても分からんのじゃ!カロリーさん、何なんですかこれ?」
「話の流れ的に、君が神獣を倒したのでこの狼達の群れのボスになる序に、神獣の旦那になる契約を結ぶって事じゃないのかな?」
は?群れのボスはまぁ分かる。分かりたくないけど。
序にこの神獣さんの旦那になる契約って何だ!
カロリーさんが俺の肩にそっと手を置く。
「良かったね。パンツ君。君の性癖が満たされるよ?おめでとう。」
「いや、だから違うから!!おめでとうって何!?と言うか、メスだったの!?」
「メスって言うでない。我は……乙女……なのじゃ。」
頬を赤らめて恥らっている神獣さん。
生物学的にはどっちも同じだろ……。
えっ!何?俺、狼と結婚しないといけないの!?
「いや、ケモナーじゃないから俺は!流石に狼、しかも神獣と人間が番になるなんていいんですかぁ!?」
「何じゃ?我と婚姻の契りが不服と申すのか?主よ。」
「いや、不服と言うか、そもそも種族が違うから!」
「パンツ君。異種族での婚姻なんて珍しい事じゃないよ?……君はあっちの性癖なんだから願ったり叶ったりじゃん。私の知り合いにも何人かいるからさ。」
何人かお知り合いにいるんだ。
どういう交友関係なんだろう。カロリーさん。
あのオカマグリフォンとパーティを組むぐらいだから……やっぱり真面の方々じゃなさそう……。
「パンツ君?また私に変な妄想してない?」
「……え?バレました?」
「そりゃわかるよ。私はいたってノーマルだよ!!知り合いにパンツ君と似た性癖を持ってる奴がいるってだけだから!!」
あんた全然ノーマルじゃねぇよ。
小さいお子さまを愛し過ぎだよ……ソフィちゃんに結婚申し込むとかやヤバいからね?
「そんな事よりパンツ君どーするの?神獣を……テイムしちゃうの?」
「え?テイム?」
「そう。魔物と主従関係を築いて従わせるって事。操獣者がやってるやつ。」
「俺、操獣者じゃないですよ?」
「操獣者は別に魔法属性とは関係ないからね。魔獣を従えさせる為にはテイムさせたい魔獣に力で屈服させる必要があるけどね。それが一番難しい事なんだけどさ。」
へーそうなのか。
魔力さえあれば6属性の適正、所謂、魔法使いでなくとも魔獣を従えさせる力があればなれるのが操獣者らしい。
「勿論、屈服させるってのは『力』だけ……って訳じゃないよ?中にはその魔獣の好物を定期的に提供する事で契約する奴もいるみたいだしね。」
何だそりゃ。それって只のペットなんじゃ……。
「しかし……神獣を倒してテイムするとか……君、やっぱりおかしいよ……。」
カロリーさんはおちゃらけた顔つきは消えて、神妙な顔つきで俺と神獣を交互に見る。
まだ神獣に警戒している様だ。
女神様曰く、この世界でぶっちぎりの強者と言われている「魔王」に匹敵する神獣。
それに過去にカロリーさんと同じ忍の人間が喰われたらしいし思う事もあるのだろう。
あ、でもこの事はギルドに報告しないで欲しいなぁ……って都合が良すぎるか。
後でダメ元でお願いしてみよう。
「さぁ!主よ!!我と主従の関係になるのじゃ!!ほれほれはよはよ!」
そんな思いに耽っているともふもふ神獣が俺にすり寄ってデカい顔をこすりつけて来る。
クッ!!悔しいけどこのフワッフワでもふっもふっの毛並みは抗い難い!!この最上の毛並みに包まれて寝たりしたら二度と起きる事が出来ないかもしれぬ。うむ。
そう思った瞬間、神獣が淡く光り出した。
「な、なんじゃあこりゃあぁぁああ!(松田優作風)」
「あらーパンツ君、なんだかんだ言ってテイムしちゃったじゃん。」
「え!?どういう事ですか!?カロリーさん!!」
「今、神獣の事を受け入れる様な事考えたでしょ?」
………毛並みの事か?確かにこの滑らかな毛並みを独り占めしたいと一瞬思ったけど…。
「後は名を与えるだけでテイムは完了する筈だよ。」
「カロリーさんて、博識なんですね。」
「当たり前じゃん!これでも結構ギルドに信頼されてるんだよ!!」
カロリーさんはそう言うと腰に手をやりドヤ顔でそう答える。
しかし名前かぁ。ラノベで言う所の所謂、「名付け」って奴だな。
「ちなみに今の神獣さんには名前は無いの?」
「我に名などないのじゃ。」
「え?でもカロリーさん、名前言ってませんでしたっけ?」
「あぁ、『マーナガルム』の事か。あれは御伽話に出てくる種族名みたいなもので人が勝手に付けた名称だからね。と言うか、まさか本当に目にする事になるとは思わなかったけど……。」
なるほど。
ギガパイ(ギガントパイソン)が種族名を現すみたいなものか。
しかし名前か。
マーナガルム……。
まーながるむ……。
マナガルム……。
マナカナ……。
どっちが姉でどっちが妹なんだろう……。
「主よ。何をぼーっとしておるのじゃ?はよう我に名を付けてくれぬか?」
俺がどうでもいい事に思考が飛んでしまった所を神獣さんに咎められてしまった。
「ポチとかタマじゃダメだよね?」
「……何かわからぬが、適当に付けられているようで癪に障るので却下じゃ。」
「あ、やっぱり……ダメですか……。」
うーむさてどうするか……。
※貴重な時間を使いお読み頂きましてありがとう御座います!
またブクマ登録して頂いている皆様、感謝です!!
更新が遅れ気味ですみません…。
神獣さんの名前……どうしましょう……。




