第85話 神獣1
プリンちゃんに森に放置された俺とカロリーさん。
そこにマスファングウルフと言う狼の群に襲われたが、俺は群を一掃すると、その群れのボスと思しき白銀に輝く5m程の巨大狼が現れた。
「貴様……。我が領域に入り込み我ら一族に害を及ぼす人族め。」
「え……あなたの……領域ですたか……。」
俺はどうやらこの狼達の領域?縄張り?に勝手に入り込み襲われてしまった様だ。
とはいえ、あのオカマグリフォンのプリンちゃんが勝手に降りて勝手に俺達を置いていったんだよ……。
悪気があって入り込んだ訳じゃないんだけどなぁ……。
「あの……勝手にあなたが管理されている領域とは知らずに入り込んでしまっ…」
「知らなかったからと言えば許されるとでも?我が一族を傷つけておいて。」
………俺が言い訳を口にすると、巨大な銀狼は喰い気味にお咎めになりなさる。
確かに不法侵入した上に群れの一部を攻撃してしまった。
しかしこちらもいきなり襲われた為、反撃した迄だ。
「では……どうすれば……。」
「……簡単な事だ。我と戦うのじゃ。」
「え?何故そんな事を?」
「我が一族を傷つけ、領域に入り込んだ所業を許してほしければ我を倒してみよ。この世界は弱肉強食が常。お主が我を倒せば不問にしてやろうではないか。」
俺は狼のボスを鑑定する。
※一族を率いる神獣マーナガルム
月夜を統べる伝説の神獣。
魔王に匹敵する力と魔力を持ち死者を喰らい尽くしその魂までも魔力へ変換し不死の力を持つとされる。
属性:風・冥魔法
…………え?
俺は鑑定された説明を改めて確認する。
”魔王に匹敵する力と魔力?”
……………
俺は目をゴシゴシと擦り確認するが……。
間違いなく”魔王に匹敵する力と魔力”と表示されている。
女神様が仰るには、魔王はぶっちぎりにこの世界で強いとか何とか言っていた気がするのだが!?
この狼さん、それに匹敵するの!?え?ちょ……チョマテヨ!!
『ぶっちぎり』て事はそれに比肩する者がいない場合に使うと思うのだが!?この狼……魔王に匹敵しちゃってるの!?
あんの女神……いい加減な事言いやがってぇ……
これはいきなりのピンチなんじゃないのか!?
……もういきなり魔王クラスと戦うとか!?
「どうした小僧。我と戦わぬのか?お主に戦う気が無くとも一方的に嬲り殺してやるがの。お主の魔力……普通の人族とは違ごうて美味そうじゃ……フッフフ。」
「!?」
この狼……俺の魔力量に気づいているのか!?
しかし……何というオーラだ。
魔王に匹敵すると言われるだけあって神々しい毛並みが青白く輝いている……。
どうする……戦うしかないのか?
いきなりこんな大物と戦う事になるなんて……しかもまだ起きないカロリーさんを守りながらとか……。
逃げた方が……!
「逃がすとでも?」
まるで俺の心読んだかの様に狼はそう言うと瞬時に俺たちの周囲に結界の様な空間を展開させる。
「これは風魔法第6位階魔法の『領域結界』。貴様ら人族程度ではこの結界を破る事は不可能だ。魔王か勇者……竜種の連中ではない限りな。では……そろそろ始めるのじゃ。」
狼は走り出し瞬時に距離を詰め、パンツの目前に迫り鋭い前脚の爪を一閃する。
ガキン!!!
パンツに振り下ろされた前脚が直撃寸前で止まる。
「っ!!カロリーさん!?」
「……まさかいきなりこんな化け物に出くわすとはね……。パンツ君、逃げるんだ!」
「ほぅ。我の一撃を受け止めるとはな。貴様も少しは出来る様じゃな。」
狼の前脚の一撃をカロリーさんはどこから出したのか自身の身長以上の大太刀でそれを受け止めていた。
しかし………頭が不自然な方向に曲がっているが……。
「カ、カロリーさん!大丈夫なんですか!?く、くびが……。」
「大丈夫……と言いたい所だけど、ヤバいね。まさか……神獣マーナガルムと遭遇する事になるとは。冒険者になって長いけど、こんな化け物にあったのは初めてだよっ……。」
「いや、頭が変な方向に曲がってますよ!?
「…………やっぱり?」
オカマグリフォンのプリンちゃんに乱雑に振り落された際に鈍い音が聞こえたが……間違いなく、その時の影響だろう……。
「フンっ」
「グッ!!」
神獣マーナガルムは受け止められている前脚に力を込めカロリーを軽く弾き飛ばす。
カロリーはその攻撃を受け流し後方へ跳躍し距離を取る。
体勢を整えると、神獣に駆け出しながら空いている腕で素早く己の目の前に印を描く。
「躯操影の術!」
「!?カロリーさんが増えた!!!」
カロリーが叫ぶと同時に突如としてカロリーの分身体が5体現れた。ちなみに分身体も律儀に首が傾いたままだ。
そして瞬時に数体の分身体の姿が消えたかと思うと、次の瞬間、神獣の後方と側面に現れ攻撃が開始される。
それはとても常人、いや腕に覚えがある者でも到底防ぎきる事は不可能な程の全方位からの圧倒的な速度と攻撃力。
華奢な身体で振るう事も困難に見える大太刀を軽々振り回し、分身体と本人の計6人での攻撃が次々と神獣へ叩き込まれていく。
そして止めとばかりに刀を振り上げ神獣の頭部めがけて剣を振り下ろした。
ガギンッ!!!
「グッ!!」
カロリーは呻く。
彼女渾身の一撃だった筈の刃先は、神獣の頭部に到達する事なく、何かに阻まれているかの様に中空で弾かれ、カロリーの身体が逆に弾き飛ばされ再び距離が離れる。
分身体を含めた6体での猛撃すべてを受けた筈の銀狼は、何事もなかったかの様に平然としている。
「……その技…貴様、忍の者か。」
「!?……知っていたか。」
「いつだったか、過去に貴様と同様に我に挑んで来た者がおってな。其奴も貴様と同じ術を使っておったわ。フフフ……。」
神獣は不敵ににやりと愉快そうに笑う。
カロリーは思う。
流石は神獣。
過去に我が忍の同門と戦っていたか。
「躯操影の術」は中忍以上の忍しか行使する事が出来ない術。
しかも1体の分身体を極めるのも至難であり、複数の分身体を完璧に制御し、更に技の精度と威力を保つのは困難を極める。
この神獣が過去に忍と戦った経験があると言う事は、こちらの手札が一つ減った事を意味する……。厄介だ……。
だが、このまま何もせずに食われる訳にはいかない!!
「そのニヤケた表情を直ぐに消し去ってくれる!!」
「そうそう。その過去に挑んできた忍の者だが、我が倒したのじゃ。脆弱な人族ではあったが、中々美味であったのじゃ。貴様も喰ろうてやろう。」
「それはこちらの台詞だ!!貴様を倒し、その後、皮を剥ぎ肉も骨も全て売り捌いてくれる!!」
そこへパンツがカロリーの元へ駆け寄る。
「カロリーさん!大丈夫ですか!!首が……」
「大丈夫……じゃないね。君だけでも逃げるんだ。私が食い止られる内に……ね。」
「俺だけ逃げる訳には行かないですよ!それに逃げると言っても奴の結界があって逃げれないですし……。あと、くびが……」
「……結界か。そうだったな。奴を倒すしかないという事か……絶望しかないんだが……。」
「カロリーさん、あの狼の事を知ってるんですか?……あと、く、くびが……」
「……知っているも何も、あれは『神獣マーナガルム』。奴と対等の力を持つ者は魔王とドラゴン種の連中ぐらいだろう。はっきりいって出来るなら私も逃げ出したいよ。それに……奴を覆っている光が見えるかい?」
あのオーラっぽい光か。
そりゃ見えますよ。何とも神々しい雰囲気を醸し出してるし。
首が変な方向に傾いてますよと忠告したいのだが、食い気味にカロリーさんが話し続ける。
「あれは『対魔法多重障壁』だけじゃなく、『物理耐性障壁』まで展開している。
並の攻撃や魔法は全て弾かれるだろう。悔しいけど私の攻撃も全く効いてない。
推測するに……第4位階魔法……君の土魔法でもあの障壁を抜く事は不可能だろうね。奴はそれを常時展開し続けている。まさに『神獣』だ。」
「……そ、そうなんですか……って、え?何で俺が第4位階魔法を使える事を知ってるんですか!?」
「え?だってさっきの(魔法)見てたし。」
「え?」
………
………………
「……起きてたんかい!!!」
スパァーン!!グキッ!!
※貴重な時間を使いお読み頂きましてありがとう御座います!
またブクマ登録して頂いている皆様、感謝です!!
更新が遅れ気味で申し訳ありません…ご容赦くださいませ。




