第58話 効能
連日、徹夜気味でお疲れのギルマスに、俺はフリオセラ王国の女騎士、ファムさんから頂いた特級復癒液をお試しして貰う事にした。
100本も貰ったしな。
俺はコソッと後ろ手に収納魔法から特級復癒液を取り出しギルマスの机に置くと、ギルマスは虚ろな目をしながら特級復癒液を手に取る。
「んー?何だこれはぁ。酒かぁ?…………!?!?」
ガタタッ!!!
ギルマスは椅子から飛び上がり、特級復癒液を両手で手に取る。
「お、おおおお、お前……こここ、これ……特級復癒液!?」
「えええぇえええぇぇぇえ!!」
ギルマスは特級復癒液両手で大事そうに持ち上げて落とさない様に取り扱う。
アイルも驚愕の表情でその様子を見ている。
「特級復癒液は中々市場に出回らず、1本の相場は、金貨1枚前後(¥10万)する高級治癒液だぞ!!それをこんな簡単に渡すって……おまえ……一体どこでこれを……。」
………。
……………。
………………………。
へー。やっちまったな。
そんな高級な物だって知らない!!知らなかったんだ!!!
だって100本だよ?100本も貰ったんだよ!?『100本はいあげる』って渡されたらそんな高価な物だって思わないじゃない?ねぇ!?
え?と言う事は何?………約1,000万円の市場価値がある特級復癒液をほいほい貰っちゃってたの?俺!?アホやん!!
「おまえ……これをどこで手に入れた!?」
「え!?」
落ちてましたー。あははっははー…………は流石に無理か……。
どうすんべ。
俺は冷や汗を流しながら言い訳を咄嗟に考える……。
「エート………マァソノ……アル伝手カラテニイレタデスよ。」
「伝手?おまえこの間この街に来たばかりだったよな?いつからそんな伝手が出来た?」
「お、俺にだって伝手ぐらいありますよ!知り合い(ファムさん)が偶々、この街に立ち寄ったので、融通して貰ったんです!」
ファムさん=知り合いって事でいいよね?
嘘は言って無いよ?俺。
俺は自分にそう言い聞かせる。うんうん。
「おまえにそんな知り合いがいたのか……。これ本物か?」
…………。
恐らく本物だろう。使った事ないけど。
まさか王族を護衛する騎士が偽物を持ち歩く訳ないし、俺の鑑定でも間違いなかったし。
「本物……ですよ。多分。」
「多分て……。」
「少し使ってみたらいいじゃないですか。」
「いいのか?」
「ええ。構いませんよ。」
使い方を知らないからギルマスに使って貰おう。
するとギルマスは特級復癒液の蓋を開栓してゴクリと一口飲んでみる。
なんだ。やっぱり飲むのか。
するとギルマスの身体が緑に輝き、土気色で表情が暗かった顔に血色があっという間に戻り、眼下に出来ていたクマも消えて瞳に輝きが戻る。
「ッカァー!!すげぇな!!特級復癒液!!一気に元気になったぜぇ!間違いなく本物だ!!よっしゃぁぁああ!!!」
「「おおぉおおおー!」」
いつもの元気なギルマスの口調に戻り俺とアイルは驚嘆の声をあげる。
「じゃぁ銀貨1枚(¥1万)でいですよ。」
「「え!?」」
俺がそう口走った瞬間、俺をアイルとギルマスが驚いた表情で見る。
「いやだから、1/3程飲んでしまったので、ギルマスだからまけて銀貨1枚でいいですよ。」
俺はこれでもかと言うぐらいの優しく且つ、慈しみの微笑みを湛えながらギルマスにそう告げる。
「「……………………。」」
見つめ合う俺とギルマス。
「え?俺にくれるんじゃなかったの?」
「え?そんな事いいましったっけ?『使ってみて』とは言いましたけど。」
「「………………。」」
再び見つめ合う俺とギルマス。
元気になった筈のギルマスの表情がみるみる暗い表情になってしまい涙目になってしまった。
「パンツ……あんた、詐欺師スキルもあったの?人が弱っている所に付けこんでお金を毟り取るなんて……最低‥…コワッ。」
アイル。詐欺師とは失礼だな。
ギブアンドテイクですよ?
……。
………なーんて、これ以上ギルマスをからかうのは止めとくか。
ギルマスの瞳から一筋の涙がツーっと流れ落ちてるし。
「ギルマス、冗談ですよ!何、本気にしてるんですか!」
「グス……え?じょ、冗談?な、何だ!冗談か!でもお前のさっきの眼はマジだったぞ?」
「気を付けて下さいよ?ギルマス。疲れ過ぎて判断力低下してるんじゃないですか?」
「む、た、確かに。しかしお蔭で元気になったぞ!」
「ギルマスがその様子じゃ、副ギルマスのリッターさんも疲労困憊だと思いますから、リッターさんにも分けて下さいね。」
「おう!分かったぜ!!……って、本当に貰っていいのか?」
まだ怯えた表情を浮かべながら疑いの眼差しで俺を見るギルマス。
そんな怯えた小動物みたいな顔しないでくれよ。
「いいですよ。これからもお世話になりますからね。」
そう言うと、あからさまにギルマスはホッとした表情をする。
「なぁ……その、おまえの知り合いを俺にも紹介してくれないか?ギルドでもこいつをいくつか購入したいんだが。」
「え?」
紹介なんかできる訳ない。
そもそもファムさんから貰った物だし。
ファムさんを紹介したら昨夜の事も説明しないと行けなくなる。
めんどくさい。うん。めんどくさい。
まだ99本持っている事は黙っておこう。
そして適当に誤魔化そう。うんそうしよう。
「……その方はもうこの街を離れたみたいなので会う事は出来ないですよ。俺も偶々会ったので……。それにそんな市場に出回る物じゃないですから……。(ギルマスが言った事をそのまま言ってるだけだけどな)」
「……まぁ確かにそうだな。残念だ。」
今度、自作してみて上手く作成、量産する事が出来たら、架空の知り合いから融通して貰った事にしてギルドに流してみてもいいかもしれないな。
そうすれば危険な冒険者とかしなくても稼げるかもしれないぞ?
グフフフフ……
ボコッ!!
「パンツ!またいやらしい事考えてたでしょ!!」
あ、はい。
確かにイヤらしい(金)事を考えてました。
「と、兎に角。もう面倒事には巻き込まれたくないので、ギルマス、俺の噂は程々にして下さいね?」
「うーん。しかし……もう手遅れかもしれんぞ?」
「……え?どういう事ですか?」
「実はな、王都からお前への召喚状が届いた。お前と会った時に予想してた通り、やっぱり面倒な事になったぜ。」
「王都への召喚状?何ですか?それ?」
「王都ギルド……と言うか、王国側がお前さんの力を鑑定したいんだとよ。」
「鑑定?ですか。何されるんですか俺?」
「特におめぇさんが何かするって事は無い…………と思う。多分。」
「何ですか。その間は。」
「まぁあれだ。簡単に言うと、パンツ兄ちゃんの力の真偽を確かめたいって事だ。それを鑑定するから王都まで来いって事らしい。
向こうには鑑定魔法を使える奴がいる。そいつは人間の能力を識別する力を持っている奴だ。だからその鑑定スキルを持つ奴の目の前に出るだけでいいんじゃないか?多分。」
「多分て……。さっきから語尾に多分が多いですよ。」
「俺も何をされるのか知らないんだよ。死ぬ事は無いから大丈夫だろ。多分。」
この話を聞いている限り、俺が使っているのと同じ『鑑定』を使用する魔法使いがいるって事か。
厄介そうだな……。
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