第54話 御礼?
アレクサ姫からありがたい脅し……忠告を受けた後、
姫様と入れ替わる様にファムさんに話しかけられる。
「パンツ殿。大変世話になった。このご恩は決して忘れない。報酬の件についてだが……お主の望み通りにしよう。」
「報酬ですか………そうですねぇ。僕はお金より……。」
「……そ、そうか。やはり私の身体を……」
「今度、二人っきりでデートして下さい。」
「わ、私はそ、その……まだ心のじゅ、準びが……って、え?で、デート?」
「はい。いつか俺とデートしてくれたらそれでいいですよ。」
「そ、そんな事で良いのか?」
ファムさんはキョトンとした顔で俺を見つめている。
まぁ今後、王室関係者と会う事もないだろうしな。
俺の記憶にある世界でも王族やら王室の関係者が一般人と会う事なんてなかった。
先の衛兵達の感じだと、この世界でも王族は一般人には遠い存在だろう。
報酬とか特にいらないし、面倒事(権力争い)にこれ以上関わるのは御免だ。
そもそもルク・スエルに来たのは『空間転移』を試す為だったし、今回、ファムさん達を助ける過程で土魔法やら魔法の同時発動する事も確認出来た。
「はい。また会う機会があれば、ですけどね。」
「いや、必ず!騎士として約束は必ず守る!!」
「いえいえ、忘れてくれていいですよ。」
「いや駄目だ!!………そうだ!その約束とは別にこれを受け取ってくれ!」
ファムさんは衛兵が騎士を呼びに行っている間に俺が横付けにした2両目の馬車から取り出した収納袋から350mlのペットボトル程の小瓶を1本取り出して俺に手渡す。
その小瓶の中身は赤色の液体で満たされており、まるでワインの様だ。
「……?なんですかこれ?お酒?」
「フフッ。葡萄酒の様だが、それは特級復癒液だよ。体力回復と魔力回復も出来る万能薬だ。パンツ殿も野盗どもを蹴散らすのにかなり魔力を使ったであろう?良かったら受け取って欲しい。」
そう言うとその収納袋毎、俺に手渡す。
え?この中身全部、これ?
「ファムさん、この収納袋の中身、全部これ(特級復癒液)なんですか!?」
「あぁ。今回の護衛で用意していた物だ。かなりの余剰になってしまったからな……。」
ファムさんはそう言うと、俯いて悲しそうな顔をする。
今回の護衛の任で多くの護衛と、仲間の騎士2人が亡くなり、残り1人は犯罪組織と繋がっている可能性もあるのだ。
その心情はファムさんの過去を知らなくても察する事が出来る。
俺は話題を変える為に話を特級復癒液の事に話を戻す。
「ファムさん、ちなみにこれに(収納袋)特級復癒液がどれぐらい入ってるんですか?」
「確か予備も含めて100本程だった筈だ。」
「100本も……いいんですか?」
「私達の国では光魔法が扱える神官を多く抱えているからな。特級復癒液はフリオセラ王国の基幹産業となっているので手に入りやすいのだ。気にしなくてよいぞ。」
「はぁ……。」
特級復癒液と光魔法が使える神官との繋がりがよく分からない俺は気の抜けた返事をする。
それに魔力は使った筈だが、別に疲労感は全く感じていないのでいまいちピンと来ない。
これを飲む?塗る?使い方も分からないが、こいつを使えば疲労感や魔力が回復するって事か?
こう聞くと、やべぇクスリみたいに聞こえるな。
良く分からんが、くれるって言うんだから貰っとくか。
「ファム?そろそろ行きますよ。」
「は、はい!申し訳御座いません。お嬢様。では、パンツ殿。またいずれ会おう。」
「お主!例の事!!決して忘れるでないぞ!!!」
「はい!!!」
ファムさんが俺と握手している所にアレクサ姫が念押しする様に叫ぶ。
そしてアレクサ姫とファムさんは駐屯騎士団長と共に街の中へと消えて行った。
ファムさん、綺麗な女性だったな。スタイルも良かったし……。
お姫様も美少女だったなぁ。腹の音凄かったけど。
ウフフ……。
ハッ!!俺はアイルのパンチに対応する為に身構えて振りかえるが誰もいない。
そうだ。ここはルク・スエル。
俺しかいないのだ。
今までイヤラシイ事を考えるとアイルの鉄拳が飛んで来てたので自然と反応してしまった。俺はパブロフの犬かよ……。
しかし……。
「これ、どうやって使うんだ?やっぱり飲むのか?成分、やべぇもん混ざってないよな?麻○的なもんとか……。100本も貰っちゃったけど……。」
俺は特級復癒液を見ながら思案する。
鑑定して見るか。
※特級復癒液
体力・魔力を9割回復出来るアイテム。
成分は復癒草に加え、神官の光魔法による第3位階魔法『神の祈り(ゴッズプレイア)』により製造する事が可能。
成る程、ファムさんが言っていた光魔法と神官の話はこの事だったのか。
光魔法の第3位階………か。
結構、簡単?に出来そうじゃない?
要は普通のポーションにその『神の祈り(ゴッズプレイア)』って魔法をかければいいだけなんだ。今度、作れるか試してみよう。
俺はファムさんから頂いた『特級復癒液』が入っている収納袋を収納魔法に入れる。
しかし久々の徹夜だったなぁ。
俺は道の脇で背伸びをして欠伸をする。
しかしこの世界は本当に空気が美味しい。
大気汚染が進んでいないからなのか、徹夜したにも関わらず清々しい気分だ。
「グネグネの兄ちゃん!!」
俺が街の入り口でボーっとしているとさっきの無駄話衛兵が話しかけてくる。
と言うか、その『グネグネの兄ちゃん』て何だよ。
軟体人間みたいな呼び方ヤメテ。
しかしステフさんからは『パンツ兄ちゃん』と呼ばれて衛兵から『グネグネの兄ちゃん』と呼ばれ碌な名前じゃねーな。
グネグネグネール・パンツさん。
………。
………………。
……………………あ、俺の事か……。
「あのお姫様とどこで会ったんだよ!?」
「…………森を散策してたら偶々、野盗に襲われていた所を助ける為に加勢しただけですよ。それだけです。」
「そうなのか?野盗ってどんな連中だったんだ?討伐したら報奨金出るぞ?」
報奨金出るのか。
何て言ってたかな?あの鼻毛さん……。
「あぁ、そうだ。『龍の巣』とか言ってましたね。」
「り……『龍の巣』!?それマジか!!あいつら王族にまで手を出すのかよ!!やべぇ連中ってのは聞いてたが、マジやべぇな。」
そう。マジやべぇよ。所で仕事しなくていいのか?マジやべぇよ?
ゴチンッ!
「いてっ!!」
無駄話衛兵の後ろに上官らしい別の衛兵が頭にゲンコツを叩き込んでいた。
「こんの朝一で忙しい時にサボるんじゃねぇ!!さっさと仕事に戻れ!!」
「あい!!すみませぇぇぇえん!!」
ゲンコツされた衛兵は全速力で門へと戻って行く。
確かに門の周辺はいつの間にか街へ入ろうとする商人と冒険者でごった返していた。
「ったく。少し目を離すとすぐサボりやがる。君も街の中に入るのか?」
「あ、いえ、俺は大丈夫です。」
「そうか。では気を付けてな。」
「はい。有難う御座います。」
俺は上官衛兵に挨拶をして森の中へ移動する。
街に入るには金を払って許可証を貰う必要があるしな。
許可証を持ったまま街を出ると魔法が発動して動けなくなるらしいし今の俺には不要だ。
そして周囲に誰もいない人目の付かない場所まで移動すると、メリッサ村のガガンさんの家へと戻る為、空間転移を発動させて顔を入れて様子を伺う。
「…………。」
「…………。」
「「ぎゃぁぁぁっぁぁぁっぁっぁぁ!!」」
ガガンさん家のリビングに空間転移で顔だけ出した所、既に起床して朝食の支度をしていたアイル達の母親、コフィさんの目の前に出てしまい、お互いにビックリして大声を出してしまった。
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