第49話 襲撃3
「その王位継承権の話は俺には良く分からないんで、兎に角さっさと移動しましょうか。またあの野盗どもが帰って来ちゃいますので。それに身体も洗いたいし。」
「受けてくれるのか?」
「そこまで話されちゃ受けない訳にはいかないでしょう?」
「すまない。宜しく頼む。所でお主の名を聞かせてくれぬか?」
「俺はパンツと言います。」
「……パン……ツ?……パンツか?それはご両親にどういう経緯で付けられたのだ?可哀想に……。これからも大変だと思うが、強く生きるんだぞ?」
ファムさんは凄い哀れんだ目を向けて俺を慰めてくれる。
えぇ。この名前もあの方向音痴の獣耳娘が勝手に付けやがったんですけどね。
しかも何だよ。グネグネグネールとか……。ブツブツ。
そして気絶しているお姫様を馬車の中に寝かせて、ファムさんが御者をし俺が隣りに座りルク・スエルへ向かう。
「所でお主、本当に何者なのだ?素手でブラッドボアを討伐するなど我々でも出来ぬ事だ。」
「そ、そうですね。さっきも話ましたが一応、冒険者で職種が武闘家って事になってるので素手での戦いには慣れてるって事になってるんです。」
「武闘家……。武闘家とは皆、お主の様に強いのか?」
「いえ、武闘家は殆どいないと聞いてます。」
ギルマスのレトが言ってた事の受け売りだけどな。
「パンツ殿は白金級以上、もしかして金緑石級以上の冒険者なのか!?」
「実は俺、まだ冒険者として1ヶ月も活動してないんですよ。ランクは先日、金級に上がったばかりの新人です。」
「!? 1か月しか活動していないのに金級に昇格するとは……。お主、やはり普通の冒険者ではないな。」
「そうなんですかね?俺はまだこちらに(異世界)来て日が浅いので余り常識が分からないんですよ。」
「こちらに来て?」
ッと、しまった。つい口を滑らせてしまった。
「あ、あのルク・スエルに来てからって事です。」
「パンツ殿はルク・スエル出身ではないのか?」
「出身……は、メリッサ村……ですね。」
そう言う事にしておこう。
こっちの世界に来て初めて訪れた集落はメリッサ村だったしな。
嘘は言って無い。うん。
「メリッサ村か。マゾン草原の近くの村だな?懐かしいな。」
「メリッサ村を知ってるんですか?」
「知らない者はいないだろう。マゾン草原へ続く最後の村だからな。私も何回か訪れた事があるぞ。」
へぇ。メリッサ村って有名なんだな。
マゾン草原が観光資源になってるって感じかな?
ん?用心の為にマップを開いて進んでいたが……馬車の後方から赤いマーカーが近づいてくるな。
赤いマーカーはモンスターかこちらに対して敵意を持っている表示だ。
大方、野盗どもが様子見に帰ってきたらお姫様の死体の痕跡が無く馬車の跡を追いかけてきたんだろう。
「ファムさん。どうやら例の野盗どもがこちらに近づいているみたいです。」
「何!?本当か!何故分かるのだ!!」
……。
…………。
「シュギョウシタカラ。」
「……………。そうなのか。パンツ殿、修行して身に付けたのか。さぞ辛い修行をされたのであろうな。名前もアレなのに……。」
あれ?簡単に信じてくれた。
俺が言うのも変だが、大丈夫かな?この騎士さん。ピュア過ぎない?
と言うか、名前が『アレ』ってどういう事だよ。今は関係ないだろ。
ファムさんは馬車を操作し速度を上げる。
すると馬車の後ろから複数の矢が飛んで来る。
もう追いつてきやがったか。
どうやら向こうも馬でこちらを追っている様だ。
マップ画面の馬車と赤いマーカーとの距離が見る見る縮まって行く。
「ファム!!ここはどこなのだ!?」
馬車の中から少女の声で呼びかけられる。
どうやらお姫様が目を覚ました様だ。
「お嬢様。しばしお待ち下さい!また野盗どもと戦闘になりそうなので中に居て下さい!!」
「え!?」
するとお嬢様は馬車の窓から外に顔を出して後ろを振り返ると同時に目の前を弓矢が通り過ぎる。
「ヒッ!!…………う~ん……。」バタッ。
あらら、また気絶しちゃったよ。お姫様は白目を剥いて馬車の中で仰向けに倒れてしまった。
「どうします?ボス?(キリッ)」
「どうしますって、私は御者なのだからお主が相手する他ないだろう!?そもそも護衛として雇ったんだぞ!?」
ですよね。知ってた。
でも言ってみたかったんだ。
『どうします?ボス?』って。出来る部下っぽいじゃん?
「さて、お仕事の時間か。」
俺は御者台から馬車の上部へ移動する。
すると馬に乗った野盗どもが弓を射かけながらこちらに近づいてくるのが視えた。
遠距離攻撃か……。
俺は腕組み少し思案する。
その間にも弓矢が馬車に降り注ぐ。
アブねッ!!
「パンツ殿!!どうするのだ!!止まって相手するのか!?」
「いえ!止まらないで下さい!少し試したい事があるので!」
試したい事。
先日、太陽の風のエチルさんに教えて貰った土魔法だ。
エチルさんは補助的な役割で土魔法を使っていたが、これを攻撃魔法として使えないかと思っていた。
しかも、昨日、俺のイメージする土魔法をガガンさんに伝えるとそれに近いイメージに合う土魔法を教えて貰ったのだ。
勿論、ガガンさんは土魔法を使えないのでイメージと魔法名を教えて貰っただけだが、恐らく俺の想像する通りになる筈!
「イメージ通りいけよぉ!!……成形土槍!!!!」
俺は野盗どもに向けて手を翳すと目前に黄色の魔法陣が浮かび上がり野盗が走り込むタイミングを見計らい魔法を発動させる。
すると『ドン!』と言う音が辺りに響き渡る。
「な、何だぁこりゃぁ!!地面がぁぁぁあぎゃ!!」
野盗の一味は絶叫する。
俺の魔法により地面の真下から夥しい剣山状に変化した土の槍が突出し、先頭付近を走っていた野盗ども十数人を馬ごと串刺しにした。
どうやら上手くいった様だ。
この魔法を時間差で発動させて罠にしてもいいかもな。
ちなみにこの土魔法、第5位階魔法。
「な!?ぱ、パンツ殿!!何をしたのだ!」
「え?ちょっと魔法でちょちょいと。」
「ちょ、ちょちょいと?お主!魔法も使えるのか!?武闘家では無かったのか!?」
「あ~、少しだけ魔法を使えるだけですよ。」
「……少し……だと!?……ん……今は何も言うまい。」
困惑の表情で俺を見るファムさんはそう呟くと直ぐに前方に視線を移し、ピシリと手に握る馬の手綱を振るい馬車を更に加速させる。
流石騎士様。
今は自分の感情よりも自分の出来る役割を優先するとは。
状況判断優秀ですな。
さて、残りの野盗はっと……。
再び後続を確認すると、魔法で築かれた土の槍の脇を抜けて野盗どもは尚も追撃して来ている。
残りは8人程度か……。
さてもう一つ試してみるか。
俺は追って来る野盗へ両手を翳すと、右手赤い魔法陣、左手に白い魔法陣が浮かび上がる。
「威力を抑えて抑えて……魔力を抑えて……イメージイメージ……。またファイアソール(か○はめ波)みたいな事になったら面倒だ。」
そして俺は魔法を放つ。
右手からは炎、左手からは氷塊を含んだ冷気が飛び出し絡み合うように野盗の集団の目掛けて向かって行く。
「「「「ぎゃぁぁぁぁあああぁあ!!」」」」
威力を抑えて放った魔法だが、野盗達は一部の者は落馬し火達磨で地面を転げまわり、またある者は馬ごと全身凍り付いたりしていた。
試したかった事。
それは複数の魔法を並行で使用出来るかと言う事だ。
取りあえずは2属性同時での使用は問題無いみたいだな。
今後は6属性全てでの魔法発動もやってみたいな。
空間転移しながら他の攻撃魔法を3つ4つ同時に発動とか。
ま、それはおいおい試して行こう。
「くそがぁぁぁあぁ!!!」
「え?」
炎と冷気の魔法を放った先から一騎抜けてこちらに猛然と駆けてくる野盗がいる。
確かあいつ……野盗のリーダーだった奴か。
名前しらんけど。
鑑定してみるか?
===================================
【 名 前 】ハッナン・ゲーヴォルグ
【 種 族 】人族
【 職 種 】斥候 :風 適正
【 体 力 】217
【 魔 力 】57
【 攻撃力 】216
【 防御力 】259
【 俊敏性 】254
===================================
ステータス的にはファムさんといい勝負って所だな。
名前は……ハッナン・ゲーヴォルグ……鼻毛さんか。
※ブクマ登録して頂いてありがとうございます!
今後とも誤字・脱字・評価・ブクマ等して下さるととても嬉しいです!
感想など頂ければ作品の方向性の参考にもなりますのでよろしくお願いします。




