表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/116

第37話 グリフォン便2

グリフォン便(グリ便)の事務所にやってきたパンツさん達。

扉の奥に待ち受けていたのは……?

…………。


俺は静かに扉を閉める。



「あれ?ここって『グリフォン便』の発着場だよな?」

「そうよ。どうしたの?」

「……え?あれ?グリフォンて鳥の頭だったよな?」

「そうね。」



俺は再び扉を少し開けて恐る恐る顔を入れて覗き込む。



「ギロッ」

………バタン

………………。

俺は静かに扉を閉める。

うん。やっぱり先ほどと同じ体勢でこちらを睨みつける『ライオン』の顔があった。

俺の記憶で言うならば、イタリアの観光地にある『真実の口』みたいなライオン顔がそこにある。



「やっぱり場所を間違えたかもしれない。」

「ええ?そんな筈ないでしょ?だって看板にも『グリフォン便』て書いてるし!」



そう。

確かに看板にも『グリフォン便!親切!早いがモットーのグリフォン便!!お気軽にお声かけください!!』

なんて謳い文句が書いてある。

あのライオン顔………親切そうには見えなかったけど……。

と言うか、何でライオンが放し飼いされてんの!?



「もう!どうしたの?パンツ!」

「え?あ、ちょっ……危ないかも!?」



アイルが俺を押しのけて扉を開くと直ぐに閉じてこちらに振り返る。



「!?…………なに!?……あれ!?」

「………。だから間違ったかもしれないって言っただろ?」

「ええ!?何でライオンがいるの?魔獣が街に入り込んでる!!早くギルドに伝えなきゃ!!」



アイルはそう言うと走り出す。



「アイル。ギルドは逆方向だぞ。」



アイルは走り出す体制で止まってしまった。



「///……。もう~じゃぁ早く行きましょうよぉぉお!!ヤバいわよ!!」

アイルは俺の外套を掴みグイグイ引っ張る。

「く……ぐるじぃ……死……死ぬぅて……アイル……ぢょっ……首…締まってるから……はなし……て」

「ウチになんか御用かしらぁ~ん?」



後ろから声を掛けられた先を見やると、そこには扉を少し開けた隙間からライオン顔がこちらを睨み付けていた。



「「「ひぃっ!!モンスターが出てきたぁぁぁ!!」」」

「ッきゃあぁぁぁぁぁぁ!!どこ?どこにモンスター!?どこぉぉおん!?」



俺とアイル、ソフィちゃんは同時にそう叫んでいた。

するとそのライオン顔も悲鳴を上げて俺に抱き着いてくる。


抱き着かれて思ったが、このライオン、毛並はフサフサで所謂、モフりがいがありそうで中々、抱き心地がよさそうだ。

俺に抱き着いているライオン顔はまだ周囲をキョロキョロして警戒の目を漂わせている。

上半身と下半身にはちゃんと?衣服を纏っており、人間で言うならば白ノースリーブに黒ホットパンツのへそ出しルックと刺激的な衣服の筈なのだがライオンなので全く扇情的な事にはならない。

それに……


モンスター、いないし。

モンスター、おめぇだし。



「あの~……ライオンさん?離してくれませんか?」

「………!?えっ!でもモンスターがいるんでしょう!?どこ?どこにいるのぉぉお?」



ライオン顔はブルブルと怯えながらそう捲くし立てて一層、俺を抱きしめる力を強める。

……ライオンてこんなんだっけ?

…………ちょっとカワイイな。

アイルとソフィちゃんもそんな俺達を見て冷静になったのか少し離れた所からこちらの様子を伺っていた。


ボコーン!!

ええ~!?何で!?


アイル様のストレートが俺の顔面を打ち抜いた。

そのお蔭?で俺はライオン顔から解放される。



「あ、アイル!な、何するんだよ!!」

「またニヤけてたわよ!!あれはパンツが変な事を考えてる時の顔だわ!」

「きゃぁぁぁあ!!モンスターってこの子でしょぉぉん!?怖いィぃ!!」

「誰がモンスターよ!!あんたの方がどちらかと言えばモンスターでしょうが!!」

「何言ってくれちゃってんの!?この小娘ぇ!!失礼しちゃうわねぇ~!!」



アイルとライオン顔が顔を突き合わせて文句を言い合っている。

何だ?これ?

と言うかライオン顔が普通に喋ってる。違和感ありまくりんぐだ。



「何よ!ここは『グリフォン便』の事務所の筈でしょ!!何でライオンの魔獣がいるのよ!!」

「んまぁぁぁ!魔獣ですってぇ~!?失礼しちゃうわね~!私もれっきとしたグリフォンよ!!この翼が見えないのぉぉおお!?」

「「「あ……。」」」



そのライオン顔がバサリと翼を大きく広げて見せる。

確かにそのオカマ口調のライオン顔の背中には見事な翼が生えていた。

俺達3人は呆気にとられているとそのライオン顔が続けて話す。



「あんた達、そのプレートを見た所、冒険者なんでしょ~?ユニーク種(突然変異)のグリフォンがいるって知らないのぉ~!?勉強不足ねぇ~ん!!」



ライオン顔が頬を膨らませてクネクネしながらオカマ口調で怒っている。

色々情報が多すぎて処理できない。


そう言えば、『太陽の風』リーダー(仮)のシェールが言ってたな。

キラーアントからの救出後、野営した時の事を俺は思い出す。



『稀にライオンの身体にライオンの頭のグリフォンもいる。』

……いや、それ、ただのライオンじゃね?

『簡単に言うと翼が生えてるライオンと思ってくれればいいな。』


そんな事を言っていた。



「アイル!この人?もグリフォンだよ!シェールもユニーク種のグリフォンがいるって言ってただろ?」

「え?……えぇ。確かに言ってた……けど、ユニーク種のグリフォンなんて早々会えないと思ってた……。」

「ほんっとに失礼しちゃうわねぇ~!!」



俺もまさか普通のグリフォンを目にする前にいきなりユニーク種、ライオン型のグリフォンと出会ってしまうとは運がいいのか悪いのか……。

どちらかと言うと『キマイラ』寄りなんじゃ……。



「アイル……グリフォンて喋れるんだな。」

「喋れるに決まってるじゃな~い!!むしろあんた達、人族や亜人なんかよりよ~っぽど賢いわよ~ん!!失礼しちゃう!!」



『失礼しちゃう!』ってのは口癖なのか?

俺がアイルに尋ねた事が聞こえたらしくそのライオン顔はそう答える。



「すご~い!!初めてみたよぉおお~!グリフォ~ン!フサフサしてて気持ちいいぃぃ!!」



そう言うとソフィちゃんはそのライオン顔に抱き着く。



「あら~んカワイイらしいお嬢ちゃんねぇ~。……食べちゃいたいぐらい。」

「……!?!?」



アイルは咄嗟にソフィを抱き抱えてライオン顔から距離を取る。



「ふ~ん。動きは悪くないわね~ん。食べたりしないわよぉん。ウフフ。」



オカマライオン顔は不敵にニヤリと笑うと翼を閉じる。



「それで、あんた達、当然ウチに用があって来たんでしょう?中に入って話しましょ?」



ライオン顔はそう言うと、事務所に入る様に促す。

未だにライオンが普通に喋る事に違和感を覚えながらも俺達は事務所の中へと入っていった。

グリフォン便の事務所は入って直ぐの所にカウンターがあり、その先には応対用と思われる応接セットが設置されていた。

俺達はその応接セットの長椅子に進められるままに座り対面にオカマライオンが座る。

座ると言っても猫が横になる様な感じだ。



「さぁて、私はこのグリフォン便ルク・スエル支所の所長の『プリンシパル・ダモン』と言う者よん。気軽に『プリンちゃん』って呼んでねぇ~ん。宜しくぅ。それで、今回はどちらに行きたいのかしらん?それともお荷物のお届け依頼かしらぁ?」



ライオン顔はねっとりとして口調で挨拶をすると器用にタバコに火を付けながら尋ねて来る。

しかし目の前のプリンちゃん、思っていたより小さいな。シェールに聞いていた話だと体長5m×体高3m程度、俺の記憶の世界では象ぐらいの大きさだと聞いていたのだが。

プリンちゃんは体長3m×体高2m程度でサイやカバぐらいの大きさだ。

勿論、普通の人間からしたら十分に大きいのだが。



「どうしたのぉん?お兄さん?じ~っと私を見つめちゃって。私に惚れちゃったぁ?」



んなわきゃ~ない。

とんでもない事言い出すなこのオカマライオン。略してカマオンめ。



「あ、すみません。グリフォンを始めて見たので見とれてしまいました。……御不快な思いをさせてしまってすみません。」



と言っても、翼の有無だけで見た目、普通のライオンだよ。

見た事あるよ。動物園で。



「あらぁ。私に見惚れるなんて、あなた……いい目を持っているわねぇ~ん。今度、お食事にでもいかなぁ~い?」



何言ってんだ?このカマオン。

と言うか、多分、性別オスだよね?たてがみあるし、これでメスなら申し訳ないけども。



「しかし綺麗な翼ですね。」



するとライオン顔は顔を赤らめながらまんざらでもない口調で答える。



「まぁねぇ。この翼は私達グリフォンにとって全てと言っても過言じゃないからぁ、お手入れも十分にしているわよぉん。」



そう言うとカマオン……プリンちゃんは金色の翼をバサァと広げて前足で毛づくろいを始めた。

その前足の爪にもマニキュア?が施されている。

アイルよりも女子力高いな。このカマオン。

俺はチラと横目でアイルとソフィちゃんを見やると二人とも俺と同じくプリンちゃんに視線が釘付けだ。



「それで、要件はなにかしらぁん?」

「え~とですね、今後、利用させて頂く事もあるかもしれないので、料金とか発着先とか教えて頂こうかと思って来ました。」

「あら、そ~ぉ?是非使ってねぇ~ん。詳細はこれに書いているから持っていっていいわよぉん。」



プリンちゃんはごろりと体勢を後ろに向けるとそこから1枚の紙片を取り出し俺に渡してきた。

そこには料金表と発着先が記載されていた。


え~と……ルク・スエルからロマーデンまでは……金貨1枚/1名か。

俺の記憶の世界観で換算すると10万円/1名か。

シェールが言っていたがやっぱり高いな。



「その下にも書いてるけど、利用する日取りが1か月前に分かっていて利用するつもりなら早期割引もあるわよぉ~ん。」



俺は視線を下に移すと『早期予約割引で更にお得!!』とか太字で書いてる。

早期予約割引なら銀貨7枚/名(7万円/名)か。

記憶の中にある航空会社も同じ様な事をしていた様な気がする。早割とかやってたな。



「お兄さんが私とお食事に行ってくれるなら半額でもよくってよぉ~ん。」



プリンちゃんはそう言うと、俺に流し目を送ってくる。

俺はゾゾゾと寒気を感じてアイルに縋りつく。



「パンツ、食事、付き合ってあげれば?安くなるってさ。」

「いやいや、それは……流石に……。」

「だってオスでしょ?このグリフォン。」

「んまぁあ~!!失礼な小娘ね!!『オス』だなんて!!私はそこらの女に負けないぐらい心は『乙女』なのよ!!」

「いやでもオスじゃん。」

「違うわよぉ~!!あんたみたいなガサツな小娘と違って私の心はレディなのよぉん!!」

「でもオスじゃん。」

「ムキィィイイイィイィイ!!!」



オカマグリフォンが机をバンバン叩いて悔しがっている。

やっぱりオカマグリフォンだったんだ。

カマグリ?カマフォン?………………プリンちゃんでいいや。

プリンちゃんは翼をバッサバッサとはためかせてまだ悔しそうだ。



「所長……何やってんスカ?」

「ィィイイイ……あッ!『キュウちゃぁん!』お疲れ様ぁ!配達終わったのぉん?」



『キュウちゃぁん!』と呼ばれたグリフォン、今度こそイメージ通りのグリフォンの顔、鳥の顔が奥の大きな引き戸扉からこちらを覗き込み様子を伺っていた。



「キュウちゃぁぁあん!聞いてよぉおお!!この小娘が私の事を『オス』だとか言うのよぉお!!酷いと思わなぁああい?」



プリンちゃんはアイルを指して喚いている。



「いや所長、どこから見ても立派な『オス』じゃないスカ。」

「まぁ~!なぁ~に言ってんの!キュウちゃん!?私の心は『女』だっていつも言ってるでしょぉ~ん!!」

「でもオスじゃないスカ。それにその立派なたてがみ(笑)」

「んもぉぉおぉおぉお!!やっぱりこのたてがみがいけないの?剃っちゃう?剃っちゃった方がいいわよね!?あなたもそう思うでしょぉん?」



プリンちゃんは俺を見ながら同意を求めてくる。

いや、俺に振られても……。

プリンちゃんは一回り大きい『キュウちゃん』と呼ばれるノーマルグリフォンの胸をバシバシ叩いている。



「そんな事より所長、五日前に王都に向かった『カン』の奴が帰って来ないッス。」

「え?『カンちゃん』が?帰って来るのはいつだったかしらぁん?」

「予定では昨日にはこっちに帰り着いてないとおかしいッス。あいつは『速急便』担当だったッスから、ここから王都まで四日もあれば往復できる筈ッス。」



『速急便』?俺は手元の料金表を見ると裏には荷物専用お届け便として『通常便』と『速急便』の料金表が記載されていた。

『速急便』はどうやら『通常便』より割高だが荷物を早く届けてくれるらしい。

その料金表にはディフォルメされた鳥グリフォンがウィンクして翼で親指を立てている。



「あいつが帰って来なくて荷物が期日通り届けられなくなってるッス。」

「あらぁ、それは困ったわねぇ……。『チョーちゃん』は?」

「『チョー』の奴は今、ロマーデンの通常便担当なんで今朝出発したばかりッス。」

「仕方ないわねぇ……お休み中で申し訳ないけど、『ブーサちゃん』に休出をお願いしないと行けないわねぇ……。」

「その方がいいと思うッス。俺は今から王都へ通常便配達に行って来るッスから、本部の連中に『カン』の奴の事を聞いてみるッス。」

「すまないわねぇん。宜しく頼むわぁん。気を付けてねぇん。」



2人?2匹?2頭?の話が終わると、プリンちゃんはこちらに向き直る。



「ごめんなさいね。ちょっと忙しくなりそうだからまた今度来て貰えるかしらぁん?そっちの小娘は来なくていいわよぉぉん!!」



俺達は料金表を片手に持ち、そそくさとその場を後にした。

アイルとプリンちゃんは帰り際までお互いに『ベー』と舌を出して挑発しあっていた。


俺達はそのまま宿へ戻ろうと道を歩いていると、上空にあのオカマライオンのプリンちゃんがバッサバッサと翼をはためかせ天を駆ける様に飛んで行くのが見えた。


飛べたんだ。あのライオン…………じゃなくてグリフォン。

『さて!『ブーサちゃん』に休出のお願いしに行かなきゃ!!』と帰り際に聞こえたからきっとそれだろう。

所長さんも大変だね。



ブクマ登録、ありがとうございます!!


今後とも誤字・脱字・評価・ブクマ等して下さるととても嬉しいです!

感想など頂ければ作品の方向性の参考にもなりますのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ