第26話 誰の仕業?
「……!?ギ……『ギガントパイソン』!?ば、バカな!!そんな化け物がルク・スエルの付近に居たってのかよ!!」
エチルさんがそう推察すると、ジンが信じられないと頭を振る。
「……何?『ギガントパイソン』て?蛇っぽいのは見た目と名前で分かるけど……。」
俺はそうアイルに尋ねてみるとアイルの表情も青ざめている。
「……『ギガントパイソン』はランクBに分類されるモンスターよ……。こんな街の近くにいるモンスターじゃない筈なのに……。」
「ランクBって事は、やっぱりヤバいモンスターなのか?」
「簡単に言うと、牙による攻撃は勿論、毒での攻撃もあるしその毒を使った魔法、広範囲の毒息を使って来るからこのサイズの『ギガントパイソン』なら村や小さな街を覆い尽くす程の毒を捲く事が出来る筈。
その毒で村や街一つが全滅する程の脅威度になるかな。鱗も硬いし並みの攻撃じゃ歯が立たないモンスターよ。」
「!?」
村や街が一つ全滅!?滅茶苦茶やべぇ……。
どうやら俺が適当に『ファイアソール』を放った先に、偶々この不幸な蛇さんがいたらしい。
しかしそんなヤバいモンスターを倒せたなら幸いだったな。
蛇さん、安らかに南無南無……。
わざとじゃないから許して『ギガントパイソン』さん。名前長いな……。
略して『ギガパイ』さんにしよう。
巨大なおっぱいみたいな感じだけど、まぁ覚えやすいからいいか。
俺は無言で手を合わせる。
しかしデカすぎる。正にモンスターと言うに相応しい程の巨大な蛇だ。
大抵の生き物は丸のみ間違いなしだろうな。頭なくなっちゃてるけど。
ファイアソールで焼き尽くされたのか残っているのは胴体の一部と尻尾と思われる箇所だけだ。
「もしかして、この『ギガントパイソン』を倒す為に『ドラゴン』がブレスを放った……とは考えられないかな?」
エチルさんが再び推測を口にする。
「その可能性は高いかもな。『ギガントパイソン』が『ドラゴン』にちょっかいだして逆鱗に触れたのかもしれない……。あくまで推測だが。」
シェールが同意を示すが………。
ごめんなさい。ギガパイさんをやったのは後ろに控えているわたくしです。
「取りあえず証拠品としてまだ焼け残っている鱗と肉片を持っていくか。」
シェールはそう言うと、その黒焦げの『ギガントパイソン』と思われる死体から鱗と肉片を剥ぎ取る作業に入る。
「しかし綺麗な鱗だな。こりゃ高く売れるぜ!」
ジンはニコニコ顔で鱗を剥がしている。
1枚の鱗のサイズが成人の手の平ぐらいの大きさだ。
「そうだな。なんせランクBのモンスターだ。労せずして稼がせて貰えるなんて『ドラゴン』さまさまだな。」
シェールもジンと同様に笑顔で答える。
エチルさんとカバールさんは周辺を警戒している。
どうやらシェール達の中では既に『ドラゴン』が『ギガントパイソン』を倒した事になっている様だ。
「だが頭が残ってりゃもっと稼げたんだけどな!!」
ジンが鱗を剥ぎ取りながら口惜しそうに吐き捨てる。
「確かに。ギガントパイソンの牙や毒袋もあれば1年は働かなくていいぐらいの稼ぎになったかもな。ま、何もしてないのに鱗と肉が手に入っただけでも儲けもんだよ。さて、全部は持ち帰る事は出来ないし、これぐらいで街に戻るか。」
証拠品の一部である鱗を肉を剥ぎ取り終わったシェールはそう言うと、一向はそのままルク・スエルに向かい歩き始める。
すると直ぐにルク・スエルの外壁が見え始めたが、街道沿いに人がたむろしているのが見えた。
しかしギガパイさんに死骸の場所からこんな近い位置だったのか。
ギガパイさんがルク・スエルを襲っていてもおかしくない距離だ。
「お?何だ?すげぇ人だかりが出来てんな。」
ジンが右手を額にあてて遠くを見る仕草をする。
俺達はそのひとだかりに近づいていくと、そこはエライ事になっていた。
ルク・スエルの外壁の一部が溶けて今にも崩れ落ちそうになっていたのだ。
「……!?な、何だ!こりゃぁあ!!」
シェール一同はほぼ同時にそう叫んでいた。
ルク・スエルの耐魔法防御が施されている筈の外壁が所々融解し崩れかかっているのが見えた。
そこには、街の関係者やギルド職員、騎士団の一員が現場検証をしているらしく、その周りに野次馬が集まっている状態だ。
「これって…ドラゴンブレスの影響……?」
「………しかねぇだろ。」
エチルさんとジンはお互いの顔を見合わせてそう話す。
いえ、犯人はわたくしです。
俺達が遠巻きにその現場を見ていると、筋肉バカダルマ……ギルマスのレトと副ギルドのリッターさんがこちらに気付き近づいて来た。
「ギルマス……これは一体?」
シェールがギルマスに話しかける。
「あぁ……これな。昨夜の夜更けに突然轟音がしたと思ったらこのザマさ。
見張りの連中が言うには、森の奥から真っ赤な炎?と思われるモノ?現象?が一直線にこの外壁まで到達したらしい。信じがたい事なんだが。」
「俺達もその炎の発射源と思われる所から今しがた街に帰って来た所ですよ。」
「何!?本当か!!詳しく聞かせろ!!」
「俺達が野営している場所からこの外壁まで一直線に焼き焦げた痕跡がありました。そしてその先には……恐らくですが、『ギガントパイソン』がいた可能性があります。」
シェールは袋から鱗を取り出してギルマスに手渡す。
「『ギガントパイソン』!?がいたのか!?」
「ああ。ここから少し行った辺りに。もう街道の目と鼻の先にそいつの黒焦げの死骸らしいモノが転がってたぜ。」
ジンがそう呟く。
「信じられん……。その死体の場所まで案内してくれるか?」
「構わないですが、その前に宿の手配をしたいので一度街に入っていいですか?」
「出来れば今すぐに確認したい。その『ギガントパイソン』の死体を目当てに他のモンスターが寄って来てしまうからな。」
カバールさんが宿の手配を心配している。
そうか。このパーティの雑務全般はカバールさんが担当しているんだったな。
宿取りもカバールさんの担当って事らしい。
お疲れ様です。
宿って確かステフのおっさんの所に泊まるとか言ってたな。
この場から早く立ち去りたい俺は話しかける。
「カバールさん?宿の手配なら俺達がしておきましょうか?帝国のお酒が飲みたい宿、俺達と一緒の宿で良かったんですよね?」
「ん?何だ。お前たちも居たのか。何でおまえ達まで一緒にいるんだ?」
ギルマスのレトは俺達に気付いてなかったみたいだ。
「いや、まぁ……その、色々ありましてね‥…。昨夜一緒に野営したんですよ。」
シェールはバツの悪そうな顔をしながらそう答える。
キラーアントに追いかけまわされたあげく全滅を覚悟した所を銀級と貝殻級の俺達助けられたなんて言いにくいだろうし黙っておいてやるか。そしてリーダー(仮)になってしまった事も。
「宿を取って頂けるなら助かります!」
「大丈夫だよな?アイル?」
「ええ。大丈夫よ。まだ空き室はありそうだったし。」
「ではすみませんが、宜しくお願いします。」
カバールさんは仕事が一つ減った事で安堵の表情をしている。
アイルが宿の名前と場所をカバールさんに教えている。
宿の場所をアイル(方向音痴)が教える事に不安を覚えたが、何度も行き慣れているからなのか、教え方に問題はなさそうだった。
どうやら初見の場所や目印のない所に行くと方向音痴が発揮されてしまうらしいな。
「じゃぁ、取りあえずここで一旦お別れって事でいいか。」
「はい。」
シェール達はギルマスとリッターさんを連れてまた森の奥に消えていく。
俺達は街へ戻る事にした。
しかし……外壁、もうぼろぼろじゃないか……
何て他人事の様に思っているとアイルが話しかけてくる。
「パンツ、これホントにあんたがやったんだよね?」
「………う~ん違うかもよ?もしかしたら本当ドラゴンさんがいたのかも?(笑)」
「実際、目の前で見たけど、あれ夢じゃなかったかのかと思ったりするわ……。」
「そう!夢だったんだよきっと!それに俺がアイルのシャツに頭を突っ込んでしまったのも夢だったんだよ!!だからそれも忘れよう?」
「忘れるかぁ!!」
ボコッ!!
俺達は1日ぶりにルク・スエルに帰って来た。
ホントなら昨日の昼に帰って来れた筈なのに!!
ボコッ!!
パンツさん、殴られ過ぎて耐性ついてきてます。




