第111話 救出5
俺は持っていたグリフォン便の料金表をピンクモヒカンスケルトン改め、『ライア』さんへ見せながらグリフォン便について説明する。
「へぇー。グリフォンが宅配便なんてしてるんだぁ!時代も変わったねぇー。私の時代じゃグリフォンは人間を食う魔獣として畏怖され、威厳に満ち溢れた魔獣だったのに。そー言えば“あの子”、積荷がどうたらこうら言ってたよーな。もしかしてぇ……?こっち付いてきて。」」
すると『ライア』さんは、何か見当がついたのか、俺達を更に奥へと案内する。
するとプリンちゃんがふっ飛び、破壊した部屋へ移動すると、そこに土壁で簡易的に区切られた区画が目に入って来たのだが、その土壁も崩壊し、瓦礫の山となっていた。
上下に残る僅かな残骸で、そこが土壁で塞がれていた事を想起させた。
扉もあった様だが、それも破壊されている。
ライアさんが土魔法で区画を作っていたのかな?
「……いきなり何かが飛んできて部屋が壊れちゃったんだけど……あの子はこの先にいる筈……覗いてみて?」
ライアはパンツの後ろに隠れて瓦礫の山は指し示す。
「何で俺の後ろに隠れてるんですか?」
「え!?だって結界張ってたのにそれを突き破って入って来たものが『何』か分からないじゃん!?若しかしたらその何かが魔獣だったりしていきなり襲い掛かって来たりしちゃったら食べられちゃうじゃん!!」
「骨だけで食べられそうな所は無さそうだけど……。」
「えへへ!!そう言えば骨だった!!テヘペロペロ!!」
そもそも吹っ飛んで行ったのは、マナにぶん殴られたプリンちゃんだから襲い掛かって来る事はない……筈。
違う意味で襲われそうではあるけども。
それにしてもこの骨の『ライア』さんは魔獣研究家らしいのに魔獣が怖いのかよ……。
俺は瓦礫の合間から部屋の中を覗き込むと、そこには鋭い嘴、鋭い鉤爪、優雅に羽搏く翼を持つ威厳を振りまいている筈のグリフォン……………が舌を出した状態で気絶していた。
そして気絶しているグリフォンの上に上下逆さまの状態でプリンちゃんも白目を剥き同じく舌を出して気絶していた。
…………
……………………
グリフォンの畏怖と威厳はどこ行った。
白目を剥き、だらしなく舌を出しているグリフォンコンビの姿を呆れ気味に見ている俺の背後から顔を覗かせ、部屋の様子を伺うライア。
「どう?この子の事じゃ…………」
……………………
…………………………………………
……………………………………………………………
「うぅぅううぅぉぉおおおおぁぁぁぁあ!!雌ライオンだぁぁっぁあぁ!!!いつの間にこんな所ににぃぃひぃぃいいいい!!!ウーン…………。」
……………バタッ。
逆さまの状態で大口を開けて気絶していたプリンちゃんの姿を見るや、ライアは驚きそのまま気絶してしまった。
そしてそのままピクリとも動かなくなってしまった。
魔獣研究家だから魔獣には慣れてるんじゃなかったのか?
このライアと言う骨。俺の背中に隠れたり気絶しているプリンちゃんみて気絶したり物凄い臆病な奴だな。
あと訂正するが、あれは雌ライオンではない。雄グリフォンである。
「ライアさ~ん………まさか………死んじゃった?」
「死んだも何も既に死んでおるがな。」
そう呟き倒れ込んだライアを見下ろしながら冷静にツッコむマナさん。
うむ。このダンジョンに入った当初は俺とカロリーさん、プリンちゃんのやり取りを冷ややかな目で見ていたマナもツッコミを覚えた様だな。
うんうん。ここまで育てたかいがあったと言うものじゃ……。
「フォッフォッフォッ……。」
「主よ。何を気味の悪い笑い声をあげておるのじゃ。しかし……何じゃこの骨は。主の周囲には騒がしい者ばかりじゃな。我ぐらいじゃな。御淑やかな淑女は。」
「……………ソ、ソウダネ。」
プリンちゃんが暴走すると問答無用で殴りつけて、この部屋を破壊した張本人のマナも大概だと思う……が口には出さない。
それが大人の対応だ。(殴られそうだから言わない訳じゃないんだからね!)
だが先ほどから騒がしいトリオの一角のカロリーさんの様子がおかしい。
気絶したライアさんをジッと観察しながら考え込んでいるのか静かすぎる。
さっき一緒にマナ親衛隊でも結成するのかと言うぐらい意気投合してたのに……。
「カロリーさん、どうしたんですか?さっきからライアさんを見ながら黙り込んでしまって。らしくないですよ?」
「ブフっ!!パンツ君……真面目な顔でこっちみないで……プププッ!!」
「…………。」
俺のモヒカン姿……そんなに面白いか。ん?おまえもモヒカンにしてやろうか?ん?
恨みがましくカロリーさんを睨みつけると、「めんごめんごーテヘ!…プププッ!!」と謝りながら笑うんじゃない!
「それよりもライアってさ……さっき『復活』とか言って無かった?」
「あー少し前に言ってましたね。復活したばかりだから記憶がなんとか、復活した辺りが草原だったとか何とか……。それがどうかしたんですか?」
「もし『踊呪師』がライアを復活させたのなら、かなり高位な魔法使いが背後にいるかもしれないよ……?」
「え?そうなんですか?」
「普通の魔石に魔力を込めて、スケルトンに『意思』を持たせるなんて普通の魔法使いじゃ出来ない程の魔力と技量が必要だからね。
それにさっきも言ったけど、あの身体中に装備されている魔石だよ。明らかに普通じゃない。」
普通に喋って意思疎通が出来てリアクションもほぼ人間……というより生前の記憶が残っている。
高位な『踊呪師』であれば、ここまで感情豊かな表現まで再現出来るのか?
それに装備されている煌びやかな魔石の数々……。
「昔、私の師匠から聞いた事がある。遥か昔に悪魔と取引し圧倒的な力を手に入れ、一人で『ヴェルンデン・ヘルム・チェスター王国』に『ヴェルデン戦争』を引き起こし最終的には勇者に封印された者がいたと………。」
「勇者が封印!?それがライアさんだって事ですか!?」
「もしそうならあれは普通のスケルトンなんかじゃあない……。魔王『ゴライアラニス』だ。」
「………え?ごらい……あ?……あれがですか?」
俺は気絶してピクリとも動かなくなっている骨を指差す。
「へんじがない。ただのしかばねのようだ。」
「パンツ君、何か言った?」
「あ、いえ、言ってみたかっただけです。」
そのごらいなんちゃら魔王さんの事は知らんけど、このビビりスケルトンが魔王だとは思えないな。
確かにこのライアさんも普通のスケルトンではないっぽいのは確かではあるけども。
「んー………やっぱ違うかな?それに『ヴェルデン戦争』については昔話や口伝で言い伝えられてはいるんだけど、魔王自体が、何処に封印されたのか正確には分からないんだよねー。
一説には、『ヴェルデン王国の周辺に封印された』とか言われてるんだ。あ、今で言う所のメリッサ村近くにあるマゾン草原の辺りね。」
封印された明確な場所は不明だが、マゾン草原辺りが有力との事らしい。
マゾン草原は俺が初めてこの世界に召喚させられた場所だ。
そこでアイルやソフィちゃんと出会ったのだ。
真っ裸で召喚されたのでソフィちゃんは、俺より先にマイサン(股間)とご挨拶する事になってしまったのだが、それも懐かしく感じるなぁ……。
と、そんな事よりも、このライアさんが魔王かどうか定かではないが、もし魔王だとしたら復活させた奴は一体、何を考えて復活なんてさせたんだ……。
とんでもない奴だな……。まさかライアさんを使ってまた戦争でもおっぱじめようとしてるのか?
………。今は本題のグリフォン捜索に戻ろう……と思ったのだが、瓦礫の向こう側から僅かに呻き声が聞こえてきた。
「ん……んぉんん……重いな……なんだこれ……ん?………所長ぉぉ……ぉおおおお?だよね?これ?あれ?でも鬣ないし……あれ?でも翼ある……けど、所長は雌ライオンじゃないし…………飯かな?でも生はちょっと……せめて火を通してくれないと……。あのスケルトン……手抜きしやがって。」
気絶していたグリフォンが目を覚ました様だ。




