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第99話 それぞれの役割


「まったく!失礼しちゃうわぁぁん!!勝手に死んだ事にしないでくれるぅぅうん!?」



ライオン……いや、正確には雌ライオンに性転換ジョブチェンジを果たしたプリンちゃんがぷりぷり怒っている。

全く……俺より早くスイッチジョブ(転職)するんじゃないよ……主人公だよ?一応。

まだタイトル通りに転職出来てないのに……ブツブツ……。

っと、愚痴はこのくらいにして、一応、慰めの言葉をかけておこう。



「でも良かったじゃないですか。たてがみも無くなってこれで晴れて雌ライオンですよ?…………雌グリフォン?」

「良くないわよぉぉおおんん!!んもぉぉおおぉぉおん!!!私の鬣みぃぃぃいい!!!!」



プリンちゃんは顔を覆ってワンワンと泣き出してしまった。

猫科なのにワンワンとはこれいかに(笑)

あ、猫科じゃなくてグリフォンか。グリフォンだから鳥類?

しかし、えらいショックを受けてるけど……大丈夫かな……。



「カロリーさん……今回は流石にやり過ぎたんじゃないですか?」



俺はお仕置きを施したカロリーさんに話しかける。



「大丈夫だよ。こいつは見た目はただのライオンだけど………」

「だけど?」

「実は………」

「実は?」






「……………グリフォンなんだあぁぁっ!!!」

「知ってます。」



頭がライオンだから毎回忘れそうになるけどさ。

グリフォンだから何なの?



「こいつのグリフォンって種族は、身体全体の羽毛が定期的に生え変わるんだ。こいつの場合、そろそろ生え変わる時期だったから丁度良かっただろうよ。」



犬猫は季節によって毛が生え変わる『換毛期』があるのは知っているが……グリフォンもそうだったのか……。

元いた世界(地球)の実家で飼っていた猫も長毛種だったから、その時期になると家じゅう毛だらけだったっ毛。


ガキの頃、ふざけて『ダディのチ●毛がごっそりぬけたぁー!!(笑)』と抜け毛を下腹部に当てながら母ちゃんに報告したらぶん殴られたっけなぁ。

今のご時世なら虐待で通報もんだろ。昭和の時代ってワイルドな時代だったなぁ。(遠い目)

そう言えば、鳥にも羽が生え変わる『換羽期』と言う時期があるらしい。



「だから毛を抜いたとしてもそんなに痛みはなかった筈さ。そうだろ?」

「もぉぉおおん!!来週お手入れしに行く予定だったのぉにぃぃん!!ばかあぁぁぁぁぁあん!!」

「はぁ……おまえまだ諦めてねぇのかよ。」

「諦める?何の事ですか?」

「あぁ、こいつの行き付けの美容室があるらしいんだけど、そこにイケメンの美容師がいるらしくてな。そいつを狙ってるんだよ。こいつ。」

「悪い!?好きな人に大事な毛を触れる事を委ねるのよぉん?ゆっくり丁寧にねっとりトリトリトリミングしながらお話する予定だったのにぃぃいい!!ワァァァン!もぉぉおおお嫁に行けないぁぁぁいいい!!!」

「おまえは雄なんだから嫁には行けないだろ。」



にべも無く半ば呆れ気味にツッコむカロリーさん。



「それにそこに通い始めてどんだけ経つんだよ。」

「5年よ!」



ながっ



「そんなに通ってアプローチしても脈無いんだから無理だって。諦めろよ。男を堕とすプロとして忠告だぜ。」

「やだぁぁぁあん!!」



何これ?

プリンちゃんの恋のお悩み相談になって来たぞ。

カロリーさんは王都ギルドでスパイ活動もやっているらしいから脈の有無が分かるんだろう。

と言うか、5年もアプローチして脈無しなら素人でも諦めそうだけどなぁ……。



「しかし、5年も通い続けるって、プリンちゃんて一途なんですね。」

「一途?こいつが?ハハッ!冗談だろ(笑)」

「もうこうなったら……パンツちゃゃぁぁぁあぁん!!!私をお嫁に貰ってぇぇぇええん!!!」



あ、前言撤回。


ボゴォ!!!

パンツに飛び掛かったプリンが壁面に叩きつけられる。



「主は我とつがいとなるのだ。これ以上ちょっかい出すなら……『ナム』してやろうか。」



まるで北○の拳の主人公の如く、拳をポキポキ鳴らしながらそんな事を仰られるマナさん。

『ナム』してやるって………『南無』って事?

『あの世に送る』の隠語みたいに使っちゃダメですよ?マナさん?

あと、拳をポキポキ鳴らすのは指が太くなっちゃうからしちゃだめよ?


二人ともプリンちゃんへの扱いが酷すぎる(笑)

人の忠告を無視して好き放題して突っ走るプリンちゃんにも問題があるので自業自得ではあるのだが……。

しかしあれだけカロリーさんとマナにお仕置きされても自分を曲げないのは逆に尊敬するわ。



「マナちゃぁぁあぁあん!!ひどぉぉおいいぃいわぁぁぁぁあん!!!」



マナの一撃を食らってさらりと立ち上がるプリンちゃん……



「思ったんですけど、プリンちゃんて頑丈ですよね。」

「そうだな。あいつは前衛職ストライカーとしては一流だよ。」

前衛職ストライカー?」

「戦闘の際に前面で攻撃を仕掛ける連中の事さ。例外もいるけど、一般的には魔法職ではない連中の事を指すんだよ。パンツ君も武闘家だろ?パンツ君も前衛職ストライカーって事だね。」



ゲームで言えば、直接戦闘を得意とする戦士とか武闘家などの職種の事か。

俺も前衛職ストライカーなのか……既にそれを辞めたいと思っています……。



「あいつは攻撃力も防御力も素早さあって更に風魔法も使えるから、前衛職ストライカーでも後衛職ジョインターでも役立つ奴だったなぁ。」



そう呟くカロリーさんの横顔は何故か寂しげにも見えた。

昔の事を思い出しているのかな?

しかし『後衛職ジョインター』とはなんだ?

カロリー解説委員に問うと、関節攻撃や補助・回復を主に担う職種、所謂、バフ・デバフを行ったりする職種との事。

一般的には魔法職の事で、魔法以外の弓を使うアーチャーにも使用されるらしい。

要は後方からチクチク攻撃を行い、直接触れる事なく攻撃する職種だな。

……これこそ俺が目指すべき職種じゃないか!?



「そう言えば、何でプリンちゃんはカロリーさん達のパーティを抜けたんですか?カロリーさんがイジリ過ぎて辞めたなんて事ないですよね?」

「あいつがそんな理由で辞める玉かよ(笑)理由は私も知らないんだ。ビックリしたぜ。いきなりパーティを抜けて、冒険者も辞めるって言い始めたからな。あれだけの力があれば、まだ上を目指せた筈なのに……。」

「それで、何故、辞める理由を聞かなかったんですか?」

「冒険者を辞める時は理由を聞かないのが暗黙の了解なんだよ。大体、冒険者が辞める時は、自分の力の限界が見えた時か、衰えだったり、他にいい仕事が見つかったとかかな。あいつの場合、まさか運送業に転職するとは思わなかったけどさ。」



カロリーさんは苦笑いしながらそう話す。

そう言えば、冒険者の中には騎士に引き立てられる事もあるって言ってたな。

プリンちゃん達、ライオン……じゃなくて、グリフォン便なら陸路や海路などよりも早く届ける事が出来る。

多少割高でも、早く届けられるのは強みだしな。

冒険者の方が稼げそうだが、もしかしてそっちの方が稼げたりするのかな?何故転職したのか本当の理由はプリンちゃんの心の中って事か。



「さてと、仕事しようぜ。おら!オカマ!!行くぞ!!王都に戻ったらいい男紹介してやっからよ!」

「え!?ほんとぉぉおおん!!!絶対よぉぉおおん!!絶対に絶対よぉぉおおおん!!!」



俺たちはカロリーさんに促されてやっとスライムダンジョンの奥へ進み始めた。

仕事しようぜって……遅れてる原因はほぼあなた達、一人と一カマのせいなんですけどね……。



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