第98話 作法
「マナ。こいつらどうすればいいんだ?」
「どうするも何も……倒せばよいだけなのじゃ。」
「………マナが?」
「か弱き嫁を守るのは主人の務め……主どのが倒せばよいのじゃ。///」
か弱きて……。
国を一つ数時間で滅ぼした神獣がそれ言います?
スライムダンジョンに入りすぐに髑髏兵、所謂スケルトン5体に襲われてしまった。
しかしそんな事より……
「倒すにしても…………触りたくないなぁ。」
「………………。」
マナは呆れた表情で俺を見ている……見ている!!
そんなにジッと見られても嫌なものは嫌なのじゃ……。
それに俺……まだ素手なんだよね。
武闘家って職業、なり手は少ないわな。
素手で戦うんだもん。
死体に直接手を触れるなんて……なんか病気移されそうだし……。
魔獣だってもしかしたら病原菌的なウィルスやらエキノコックスやら狂犬病ウィルスとか保菌してたりするかもしれないし……。
……やっぱ無理!
街に帰ったら適当な武器買おう……。
衛生面、精神衛生上的にも必要だな。
そして適当に魔石とか付けて魔法を付与すれば遠目から攻撃出来るぞ!
……ってそれならソフィちゃんみたいに魔法使いで登録すればいいのか……。
職種の再登録とか出来るかな?
いやしかし、やむを得なく接近戦になった時はやはり近接戦闘が出来る職種の方がいいなぁ……。
遠近両用のオールマイティに戦えても不審がられない職種がないか、後でギルドに詳しいカロリーさんに聞いてみるか……。
そのカロリーさんはっと……
ブチッ……ブチッ……ブチ血ッ………
プリンちゃんは敢え無く捕獲、抑え込まれてまだ残っていた残り少ない鬣をカロリーさんに毟られていた。
可哀想なプリンちゃん(笑)
「ほれ、主よ。さっさとこの骨人形どもを片付けてくれぬか?我は怖くて怖くて寿命が縮みそうなのじゃ……。」
そう言いながらヨヨヨと俺の足にしがみ付き見え見えの棒演技をする幼女姿のマナ。
怖くて寿命が縮みそうって……。
こいつらスケルトンと交戦状態になった時にも眉一つ動かさずに汚物を見るような視線を投げかけて微動だにしなかった癖に……。
それに寿命が縮むって、2000年の寿命がどれだけ縮んだんですかねぇ……。
しかしこの可愛らしい容姿も相まり、俺に寄りかかり潤んだ上目遣いで見上げてくるその威力たるや絶大だ。
庇護欲を掻きたれる感情がパネェ!これも神獣の力なのか!?(※関係ありません)
「はぁー。気持ち悪いけどやるしかないか……。」
直接攻撃がてっとり早いが、触れるのは御免なので火葬して成仏して頂こう。
目の前で剣を単調に振り続ける5体のスケルトンに片手を翳して骨まで焼き尽くすイメージを思い浮かべながら魔法を発動させる。
「成仏して下さいよぉぉ!南無さん!!」
ボォォオオオオボボボボ……ジュっ!!
俺の翳した掌に魔法陣が浮かび上がり、そこから炎が噴き出しスケルトンへ放射され炎に包まれると、スケルトン5体は装備品ともども瞬時に蒸発した。
一瞬で骨と装備品が蒸発するって……もう少し威力を抑えた方が良さそうだな……装備品は売れるかもしれないし。
蒸発した後には、パチンコ玉程度の小さなキラキラとする石が残っていた。
見知らぬ仏さん達だったが……成仏してください……。
「南無南無……ナンミョーホ?レンゲーキョー……ナンタラカンタラー……えーと……ジョウブツシテタモレー」
「主どの。何をしておるのじゃ?」
俺がしゃがみこみ、手を合わせて仏教スタイルの供養(適当)をしていると後ろにいたマナが話しかけてくる。
「一応、仏さんを供養しておこうと思ってさ。何か呪われそうじゃない?マナもやっといた方がいいぞ?」
「あの様に操られている骨人形に供養など必要ないと思うがの。」
「操られている?」
「あの骨人形は、『踊呪師』が骸に魔石を埋め込み魔力を込め、簡単な命令と動作を与えておるだけで魂など宿っておらぬ。まぁ魔素の影響で屍が動き出す事もあるが……先ほどのスケルトンどもは魔石が埋め込んであったので前者であろうな。ほれ、そこに石っころが転がっておるじゃろぅ?」
マナはそう言うと、転がっている先ほどのキラキラしている石を指し示す。
あれも魔石だったのか。
最初に見たのがブラッドボアのでかい魔導石だったのであのサイズで記憶していた。
こんな小粒サイズでも魔石としての役割は果たせるのか。
そう言えば、魔石はギルドで売れると言っていたし回収しておくか。
「マナ。所で『踊呪師』て何だ?」
「『踊呪師』は魔石や魔道石を使い仮初の命……物質を操れる者どもじゃな。」
「物質?それは何でも操れるのか?」
「うむ。術者の魔力にもよるらしいが基本的には生き物以外なら操れるらしいのぉ。」
魔石は魔法を付与するだけではなく、動力源的な効果も付与する事が出来るんだな。
………。
と言う事は、ガン●ム、ト●ンス●ォーマーも作れる……って事か!?
おいおい、地球の科学技術を超えてない!?
ロボット的な事が可能って事じゃないか!
やりたい事が増えて行くなぁ!異世界サイコー!!!
とは言え、マナが言う『踊呪師』は、あの人骨をどこから持って来たんだ?
「マナ。あの『骨』事態は実在した人間?の物なのか?」
「うむ。そうじゃな。適当な場所に落ちている骨を拾って来るだけじゃな。骨などどこにでも落ちておるしな。」
「どこにでも落ちてるのか?骨って……。」
「何者かに襲われてそのまま命を落とし、見つかる事もない遺体など幾らでもあるじゃろう。」
「………。」
異世界サイコーとは言ったものの、確かにこの世界は村や街へ移動する際も馬車や徒歩での移動が普通だし、その道中の街道にも魔獣がウヨウヨしているし、野盗に襲われる事すらある。
襲われて亡くなった遺体は供養もされずにその場に放置が普通の事なのだろう。
俺も最初、メリッサ村からルク・スエルの街に移動する際の道中に野盗に襲われたなぁ……。
アイルとソフィちゃんの連携攻撃で撃退したので舌を巻いたもんだ。
あの野盗の皆さん、生きてるかなぁ。
お決まりの捨て台詞『覚えてろよぉぉおっ!』って言ってたから大丈夫かな?
とは言え、やはり全く関係ないのに死んだ後までも利用されるのは気分が良くない。
まぁ今後も襲われたらぶっ壊すけども。
「やっぱりマナも供養してた方がいいぞ。」
「供養と言ってものぉ……。その様な作法は我は知らぬぞ?」
「………!なら俺が教えてやるから言われた通りにやるんだぞ?」
「うむ。主が言うならば……仕方がないのぉ。」
マナは渋々と言う感じで従う。
「いいか?まずは両方の手を目の前で合わせるんだ。」
「うむ。これでよいのか?」
マナは俺に言うがままに合掌する。
うむ……こ、これは……パネェ!
そして軽い供養の方法の打ち合わせを行った。
「よし!じゃぁ、本番行くぞ!」
「わかったのじゃ!」
そして供養の本番へ………。
「マナ……行くぞ?」
「う、うむ。」
「せーの……お手てのしわとしわを合わせて幸せぇ……。なーむー。Ω\ζ°)チーン………。」
………
………………。
幼女のマナがするとCMの再現率パネェな!!カワ(・∀・)イイ!!
「主どの。」
「何?」
「練習の時から疑問に思っておったのじゃが……これで本当に成仏するのか?魔力や魔法を使うでもなくただ手を合わせるだけで……。」
………
………………。
「いや、俺もCMで観ただけだけど、しないよりかはマシだろう。多分。」
「しーえむ?……と言うのは何かしらんが、やった方がよいのじゃな?主が言うなら従おう。」
何か幼女を騙しているイケない大人な気分がしてくるのは何故だろう。
ま、宗教的儀式や供養の儀式なんて結局は残された人間が自分自身の区切りをつける為に行うもんだしな。
ある意味自分自身を騙しているのと変わらないし……良しとしよう……と自分自身に言い聞かせ区切りをつける。
しかし……
「マナはあのスケルトンを操っている奴がいるかもしれないと言っていたけど、間違いないのか?」
「まぁ、そうじゃな。このダンジョンの入口に隠蔽魔法も施されておったしの。何者かが絡んでいるのは間違いないじゃろう。」
うーむ……これから先は用心した方がいいかもしれないな。
ちなみに、マナが連れていた狼さん達はダンジョンの入口で待機及び外からこのダンジョンに近づくモノが入れば、伝話で連絡する手筈だ。
正直、俺のマップがあれば必要ないとは思うのだが、何せスライムのダンジョンだ。
もしかしたら俺のマップに反応しない何かしらの魔獣がいるかもしれない。
「しかし……主どの。魔法の威力も桁違いじゃな。我を倒した時は素手で殴りつけられたので、てっきりそちらが得意で奴等薙ぎ払うと思ったのじゃが……。」
そう言いながら俺が殴りつけた頭を擦り痛がる素振りをするマナ。
約5mもある狼にいきなり襲われたら反撃せずにはいられないでしょ?ね?
「あの時はゴメンよ。でも仕方がないじゃないか。いきなり襲って来たのはマナ達だろ?それにさっきは、アンデットに触れたくないから魔法で倒してまでだよ。街に帰ったら適当な武器を手に入れよう。」
「街か………主との新たな生活が始まるのじゃな。楽しみじゃ////」
幼女が顔を赤らめながら服の裾を握りもたれかかってくる。
妙齢の女性にされればタマランチ会長がご降臨されるのだが……。
いや、可愛いんだけどね。
「ああああぁぁぁぁー!!!!」
「「ビクッ!!」」
俺がそんな事を思っていると、ダンジョン内に大声が響き渡り、俺とマナは驚いてビクリと身体を震わせる。
「ズルーい!!マナちゃんは私の伴侶になるんだぞー!!!」
プリンちゃんへのお仕置きに飽きたのか、こちらにダッシュでやってくるカロリーさん。
そしてマナを抱きしめると愛で始めた。
一方、お仕置きをされた側のプリンちゃんと言えば、あの立派でサラサラヘアーだった鬣は一本も残っておらず、白目を剥いてぐったりしている。
見事な雌ライオンに性転換する事が出来た様だ。よかったよかった。
グリフォンだけどな。
それにしても、俺がスケルトンを討伐してる間も遊んで(お仕置き)たのかよ。
「パンツ君!相変わらず凄かったねぇ!」
「え?見てたんですか?」
「そりゃあれだけの魔力が集まれば無視は出来ないよ!こっちが攻撃されるかとちょっと身構えちゃったし。」
お仕置きタイム中でも、一応こちらを気にかけてはいたみたいね。
「それでカロリーさん。プリンちゃん…………生きてるんですか?」
「んー……どうだろ?」
するとマナが纏わりついているカロリーさんからスルリと抜け出し、一人でテクテクとプリンちゃんの方へ歩いて行く。
そして白目を剥いているプリンちゃんの傍らに立ち暫く見下ろす。
………
………………。
「………しわとしわを合わせて幸せぇ?……。なーむー……チ…」
「死んでないわよぉぉおおおおおおんんん!!!!」
あ、生きてた。




