表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/44

11月29 日(木 )。噂話の真相


 悠李が頭痛で倒れた翌日、彼女は登校してこなかった。事前にFCUが切れたため、魔法省に行ってくる、と言うメールが入っていた。彼女も難儀だ……。


 しかし、気になるのが昨日、悠李は高崎花奈と何を話していたのか、だ。花奈は学校に来ているが、問い詰めるのはかわいそうなような気がする。つまり、悠李が登校してくるのを待つしかなかった。




 そんなわけでさらに翌日、悠李が登校してきた。何だがぐったりして見えたので聞いてみると、「FCUが一つ追加された」と言われた。っていうかこの子、もともと5つのFCUをつけてなかったか? 全部で6個になったってこと?


 そう思ったが、恭子は精神安定のために聞かなかったことにした。


 悠李が花奈と何を話していたかは気になるが、それともう一つ、気になることがある。現在、このミネルヴァ魔法学院高等部にじわじわと広がりつつある噂だ。


 いわく、碧が悠李のことを好きである、と。


 いや、事実だ。事実なのだ。碧は悠李のことが好きである。氏家も悠李のことが好きらしく、三つ巴の攻防戦を見るのは、恭子の楽しみだった。紗耶加には『趣味が悪い』と言われたが。

 しかし、どうしてこんな噂が広まっているのだろうか。噂が出だしたのはこの2・3日の事だろう。と、言うことは、碧が悠李をお姫様抱っこしているのが目撃されたのだろうか。いや、やっぱりそれでもおかしい。


 こちらは考えてもわからないので、目の前のわかることから片づけていこう。





「それで、おとといは花奈さんと何を話していたのですか?」

 昼休みに悠李を捕まえた恭子はにぎわう食堂で小声で尋ねた。周りが騒がしいからだれも聞いていないとは思うけど、念のため。


「……うーん。まず、これは花奈ちゃんの能力が起因しているんだと思うけど、どうやら、4回目のループの時に僕が殺された現場を見ていたようでね」

「見ていた?」

「それ、どういうこと?」


 碧と紗耶加に問われ、悠李は「ああ」と苦笑した。


「直接現場を見たわけではないよ。夢の中で、僕の殺害犯の目線で僕を見ていたそうだ。たぶん、花奈ちゃんは僕と似たような能力を持ってるんじゃないかな」


 悠李はさらりとそう言ったが、恭子は顔をしかめて碧と目を見合わせた。悠李の能力、つまり『ドリームメーカー』はかなり特殊な能力である。予知能力なども特殊能力の一つに数えられるが、ある意味、悠李の能力はそれよりも希少だ。

 『夢』はその人の深層心理だ。干渉することは難しい。だからこそ、悠李の能力は第一級使用制限魔法に指定されているのである。


「……話を聞く限り、花奈さんの能力は透視能力に近い気がするけど」

「そうだねぇ。僕の能力っていうより、うちの兄さんの『接触感応能力サイコメトリー』に似ているかなぁ」


 悠李はそう言って頬杖をついた。普通のコップからお茶を飲むがそれが妙に様になっている。美形は何をしても決まるのだろうか……。

「犯人はわかったのか?」

「わからないよ。言い争いはしていたみたいだけど、僕は殺された時に抵抗していなかったらしいから、顔見知りかもしれないね」

 敬の当然と言えば当然の問いに、悠李はやはりさらりと答える。


「あ、そう言えば。僕が倒れた後に白い薔薇が降ってきたって言ってたね」

「白い薔薇、ですか」


 そう言った会話は以前にもした気がする。やはり、薔薇は悠李が具現化したわけではないようだ。

 白薔薇の花言葉である『私はあなたにふさわしい』を思い出し、まさか碧が犯人か、と思わないでもなかったが、碧が犯人なら剣で斬るのではなく銃で撃つはずだ。

 となれば、花言葉としては『深い尊敬』かなぁ。恭子はちょっと場違いなことを考えていた。


「それで、悠李が倒れた理由は? ドクター香坂に見てもらったんでしょ」


 今度は晃一郎である。悠李は首を傾ける。

「ああ、それがねぇ。僕のFCUは特殊なんだけど」

 うん。それは知ってる。なんだかすでにオチが見えた。

「一定の魔法出力を越えると電流が流れる仕組みになってるんだけど、どうやら一時的にその魔法出力限界を越えたみたいで微弱な電流が流れてその影響が脳に……」

「さらっと怖いこと言わないでよ! っていうか、言ってることの意味わかんない!」

 紗耶加がいまいちよくわからないことを言った。いや、恭子も理解が追い付いていないが。

「それ、脳への影響は大丈夫なのか?」

「それはよくわからないけど。大丈夫だから大丈夫なんじゃないかな」

 悠李は敬に向かって根拠のないことを言いだす。とはいえ、説明されてもわからない気はする。恭子は自分の中で悠李がマッドサイエンティストに分類されつつあることに気が付いた。たぶん、悠李とドクター香坂の顔が似ているからだと思うけど……。






 午後の授業を受けたあと、悠李が3‐Aの教室に顔を見せた。

「ユウ、どうしたのですか?」

「ん、いや……なんか3‐Fの教室で男子たちが会議を始めたんだけど」

「え、悠李は参加しないの?」

「紗耶加、さすがに怒るよ」

 そう言いながらも悠李は苦笑気味だ。いくら悠李がハンサムでも、彼女は彼女である。

「もしかして、碧が問い詰められているんですか?」

 恭子が首をかしげた。

「何故だい?」

 悠李も首をかしげる。


「ああ、あれでしょ。成原君は悠李のことが好きだっていう話でしょ」

「あら、レイチェル」

「解説ありがとう。でも、いきなり飛びつかないでくれるとうれしいな」

「これは失礼」


 悠李に背後から抱き着いていたレイチェルは彼女から離れた。それでも悠李がレイチェルをしっかり受け止めている辺り、彼女はハンサムである。だからモテるんだろうな……。

「それで、成原君は悠李のことが好きなの?」

「いくら僕でもそれはわからないよ」

 強力な精神感応魔法を持つ悠李だが、テレパシー的な能力はないそうだ。むしろ、レイチェルの方がわかるのではないだろうか。


「じゃあ、あんたは成原のこと好きなの?」


 尋ねてきたのは斎藤美香だった。隣のクラスのはずだけど。3‐Fが男子の会議場なら、3‐Aは女子の会議場になっている。

「……まあ、好きか嫌いかで答えるなら好きだけど」

「はっきりしないわねぇ。これだから日本人は」

「いや、美香も日本人だよね」

 たいてい、美香とのやり取りはこんな感じである。美香の言葉は少しとげがあるのだ。

「まあ、悠李と成原君が付き合えば、さまざまな諸問題は解決するわよね~」

 レイチェルも暢気に言った。諸問題ってなんだろう。


「悠李」


 おお、そこに件の碧だ。しかも、悠李名指しである。しかし、悠李はうん? といつも通りに首をかしげただけだ。

「どうかしたかい?」

「お前、電話出ろよ」

「あ、ごめん、かけてたのかい? サイレントマナーモードのままだったよ」

 悠李が携帯端末を確認して謝った。校内で携帯端末の電源を切るか、マナーモードにセットするのは当然のことである。

「……まあいい。話がある。帰るぞ」

「話? まあいいけど……じゃあ、また明日ね」

「うん。ファイト」

 レイチェルが茶目っ気たっぷりにウインクする。悠李は苦笑し、鞄を手に取って碧と一緒に教室を出ていった。その瞬間、教室内がざわっとする。


「これはっ」

「噂は本当ってこと!?」

「そこんとこどうなの、鷺ノ宮さん」


 話をふられた恭子は首をかしげて微笑む。


「どうなんでしょうか。碧はユウのことが好きだとは思いますが、ユウの方はちょっとわかりませんね」


 これは本当だ。押しに弱いものの、強力な精神魔法を持つ悠李の本心をのぞくのは難しい。


「では、わたくしはこれから医者に行かなければならないので、お先に失礼しますわ」


 嘘である。しかし、これ以上ここにいると問い詰められる気がした。恭子と悠李と碧が幼馴染であることは、たいていの生徒が知っている。

 寮生であり逃げられない紗耶加と美香に恨みがましく睨まれたが、恭子はそのままぺこりと頭を下げて逃亡……もとい、帰宅した。


 教室内では悠李たちを尾行してみようなどと言う話をしていたが、不可能だろう。あの2人を尾行して成功したなら、ぜひ教えてくれ。


 ちなみに、この時、碧は悠李に愛を告白したわけではないらしい。翌日になってから悠李に聞いたのである。たぶん、嘘ではないと思う。



 では、いったい何の話をしていたのだろうか?





ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


今回の噂の出所はもちろん花奈です。花奈ちゃんがぽつっと絢音に言ったことが学院中に広がりました。悠李と碧は気安い仲で、会話もポンポン進むようにしていますが、付き合ってません(←ここ重要)


次は9月18日、木曜日です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ