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9月14日(金)。体育祭、一般競技

今回は体育祭です。

 9月10日に後期授業が開始され、すぐに体育祭が行われた。生徒会の年度切り替えは10月なのに、どうして後期授業が9月からなのか不明だが、とりあえず、今それはどうでもいい。体育祭はドクターストップがかかってしまったので、恭子は出られない。本部テントで運営係だ。


「恭子ちゃん。1年生の短距離走の出場メンバー、わかる?」

 晃一郎に声をかけられ、恭子はあわてて資料を探した。今は3年生の徒競走で、次は2年生、その次に1年生の短距離走だ。

「はい、これです。お願いします。ユウは?」

「走ってるよ」

 と、晃一郎は今まさに走り出した一団を指さした。3年生女子の短距離走で、悠李はぶっちぎりの1位だった。ここまで来るとあほらしくなる。ちなみに、男子は氏家がぶっちぎっていた。


「晃一郎は出ないんでしたっけ?」

「俺、そんなに足速くないからね。長距離走には出るよ」

「そうでしたね……。あとでユウを呼んできてくれませんか?」

「了解」

 晃一郎は名簿をもらって走って行った。遠くで一年生を整列させているのが見える。


 この学校の体育祭は、2日間に分けて行われる。1日目は一般競技、2日目は魔法競技だ。クラス対抗ではなく、1年、2年、3年で団を作り、争う。ちなみに、団の構成クラスはくじ引きで決められる。恭子の所属する3‐Aは、1‐Eと2‐Bと同じ団だ。つまり、2‐Bの亮祐は同じ団になる。そして、団は色で分けられている。恭子たちは赤団。


 生徒会は体育祭の実行委員だ。恭子はずっと本部にいるが、ほかのメンバーは出入りしている。ちなみに、先ほど名簿を取りに来た晃一郎はお手伝いだ。風紀委員のメンバーが手伝ってくれているのである。


「呼ばれたよ」

 悠李がやってきた。どうやら、短距離走終了後の列を抜け出してきてくれたらしい。彼女は黄団なので、黄色のハチマキをしていた。

「ユウ、お疲れ様です。1年生の短距離走のあと、騎馬戦と玉入れで午前中の競技は終わりなのですが」

「あー。僕は騎馬戦担当だからね。大丈夫だよ、忘れてないよ。何か問題でも起こった?」

 悠李は矢継ぎ早に尋ねた。2年生の短距離走が始まっているため、騎馬戦まで時間がない。


「実は、もう1人の騎馬戦担当の津田さんが熱中症で倒れてしまったのです」

「……マジか」

 彼女らしくない口調で悠李はつぶやいた。3年女子風紀委員の津田と、悠李と、今短距離走の列整理に出ている志穂が騎馬戦担当なのだが、津田がダウンしてしまったため、悠李と志穂で回すことになる。


 騎馬戦は男子全員、玉入れは女子全員の競技だ。つまり、騎馬戦は女子が担当になる。玉入れは男子が担当する。

「紗耶加は?」

「紗耶加は今、見回りです。たぶん、騎馬戦までに帰ってきますけど、彼女に騎馬戦の勝敗の判断は難しいかと。わたくしもできません」

「……じゃあ、仕方がないから志穂と2人でやろうかな」

 少々押し問答はあったが、悠李はそう言ってため息をついた。1年生の短距離走が始まっている。

「っと。僕はもう行くよ。恭子、本部をよろしく」

「わかりました。お願いしますね」

「了解」

 悠李はチェックボードを持つと、そのまま走って行った。遠目に志穂と何かを話しているのが見えた。


 騎馬戦は1年生から3年生までの男子生徒が参加する。女子たちの黄色い悲鳴が一番上がるのはこの競技だ。


 審判が1人減って、どうなることかと思ったが、少々手間取ってはいたものの、特に問題は起こらず、青団の勝利に終わった。ちなみに、3‐Cの氏家は青団である。


 続いて玉入れだ。あまり動かないこの玉入れにも、ドクターストップがかかっている恭子は出られない。実行委員の男子たちが準備をしているのを見ながら、恭子はため息をついた。

「何か問題でもあったか?」

「あら、碧」

 マイクの前に座っていた恭子は、かかった声に振り返った。思った通り、碧がいた。その姿をまじまじと見て、恭子は言った。

「碧……びっくりするくらい、桃色が似合いませんね」

「うるさい。わかっている」

 碧はすねたように顔をそむけた。碧の3‐Fは桃団なので、ハチマキの色は桃色なのだが、クール系の碧にはいまいち似合っていない。


 碧は玉入れの担当だ。碧と、亮祐と、千尋が担当している。他にも補佐に何人かついている。

 恭子は本部から悠李や紗耶加、レイチェルなどを見ていたが、下手な人はかなり下手だった。悠李は器用な部類に入るはずだが、下から投げる、という行為になれないのか、いまいち玉が入っていない。6回目のくせにうまくならないな。


 玉入れは桃団の勝利に終わり、午前中の全競技が終了した。実行委員はのんびり昼食をとっている暇はなく、本部テントでおにぎりを食べつつ作戦会議だ。

「津田は明日も出られなさそうか?」

「無理だな。今日は暑いからな……」

 敬が首を左右に振った。明日は魔法競技なので、余計に忙しくなる予定なのだが、一人減ってしまうようだ。

「……まあ、欠員が出たところはみんなでカバーしよう。午後の競技は問題なさそう?」

 紗耶加が恭子に話を振った。体育祭では、競技に出られない恭子を中心に仕事が回っている。つまり、責任者は恭子になる、ということだ。

「今のところ、問題ありません。長距離走、借り物競争、団対抗リレーですよね。問題が起きそうなのは借り物競争くらいですし、何とかなるでしょう」

 過去のループでもっと深刻な問題が生じたことがあるが、その時も何とかなったので、今回も何とかなる……はず。




 午後一番の競技は長距離走。晃一郎と千尋が参加していた。長距離と言っても、1キロだ。みんな遅くても5分程度で走り終える。勝ったのは黄団だ。


 続いて、借り物競争。借り物の内容は生徒会で決定したのだが、あたりの白紙もあれば、どこで借りれるんだ、これ! という内容のものもある。ふざけ過ぎただろうか。

 借り物競争に参加していた敬は、その『はずれ』を引いてしまった様子。


「誰だよ! 広辞苑なんて書いたやつ! 持ってる奴はいるのか!?」


 結局、広辞苑を持っている人間を発見できずに失格となった敬が半泣きで言った。同じ団の悠李が「仕方ないよ」と彼の背を叩いているが、確か広辞苑を書いたのは悠李だった気がする。


 そんな悠李だが、彼女は最終競技、団対抗リレーに参加していた。まあ、魔術がなくても悠李は足が速いからね。でも、本当に驚くべきなのは、彼女の反射神経だと恭子は思っている。


 悠李のほかに、千尋や碧、氏家もリレーのメンバーだ。悠李がほかの団の走者を引き離すと「お姉様ーっ!」という黄色い悲鳴が上がり、碧と氏家が同時に走りだし、接戦になると女子が熱狂したり、見ている分には面白いのだが、これは本人たち的にはどうなのだろうか。




 体育祭1日目は、桃団優勢で終了した。最下位は紫団しだんで、おそらくここからの逆転劇は期待できないであろう点差が開いていた。

 1日目の後片付けを簡単に行いながら、明日の確認をする。津田が抜け大概は特に問題はないだろう。準備は入念に行ってきたし。


 となると、途中から雑談になるのは仕方がないことだと思う。

「明日は恭子も出場するのか?」

 敬が尋ねてきた。クラスが違い、しかも方や生徒会、方や風紀委員なので詳しいことを知らないのである。

「はい。魔法障壁耐久競争に出場する予定です」

 むしろ、それにしか出ない。敬は何に出るのか、と尋ねると、彼は「魔法陣形成競技と魔法操作競技」と答えた。ちなみに、紗耶加も全く同じ競技に出場する。


 明日の魔法競技には、1人につきに競技まで、という出場制限がかかっている。しかも、成績優秀者は特に得意な魔法を使う競技には出場できない。碧は魔法射撃競技に、悠李は魔法剣術競技に出ることができない、と言うことだ。


 じゃあ、何に出場するのかと尋ねてみる。

「俺は魔法障害物競走と魔法剣術だな」

「ああ、そうなんだ。僕も魔法障害物競走には出るよ。あと、魔法射撃」

 碧と悠李はそう言って顔を見合わせた。本来なら悠李の方が魔法剣術に向いているし、碧の方が魔法射撃に向いている。


 過去5回、同じ体育祭を経験している。その時によって、出場競技は確かにまちまちだ。恭子は魔法障壁耐久競技に出場することが多かったが、碧や悠李、恭一郎などはその時によって出場競技が違うことが多かった。それでも、悠李が魔法射撃競技に出るのは初めてのはずだ。なぜなら、悠李はこの魔法に向いていないからである。

 射撃魔法というからには、放出系魔法の才能が必要なのだ。悠李にはまったくと言っていいほどその才能がない。魔法傾向が精神魔法に傾きすぎているせいだと思われる。


「……それ、大丈夫なんですか?」

 恭子が思わず尋ねると、悠李は「一応、撃てることは撃てるよ」と言う。

「魔法道具の補助があるだろう? だから、できなくはないよ。向いてはいないけど」

 にっこり笑って彼女はそう言った。向いてないのに、やってもいいのだろうか。


 後片付けが終わり、明日の準備があらかた終わると、すでに日が暮れてしまった。恭子は迎えが来ていた。


「悠李ー! 帰ろうぜ!」

 校門で待っていたらしい千尋が大きく手を振っていた。仲がいいな、この兄弟。

「じゃあ、また明日」

「ええ。また明日」

 恭子も手を振り、その日は別れた。






ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


翌日は魔法競技。っていうか、魔法競技を考えるの、大変でした……。


次は8月28日、木曜日です。

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