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8月20日(月)。課外研修旅行1日目

修学旅行に着ました。

私の妄想が大いに含まれているので、事実と違うので、ご注意を。

 そんなわけで、課外研修旅行の日になった。めでたくドクター香坂から外泊許可の下りた恭子は、悠李と碧をお供に研修旅行に乗り出していた。紗耶加と敬も一緒だが、晃一郎は来なかった。彼は現在北海道に家族旅行中らしい。


 ほかにもレイチェルや氏家、千尋、亮祐など、2、3年生がほとんどを占めている。1年生は5人しかおらず、そのうち3人は高崎絢音・花奈の従姉妹コンビと村川章平だ。この3人は仲が良くなったらしい。


 今年の旅行先は京都だ。観光地で夏休みだから人は多いだろうが、楽しみである。恭子は体が弱かったため、こういったイベントに参加するのは初めてなのだ。


 京都に着いたのは午前10時ごろだった。まずホテルに行って荷物を置いてくる。恭子は悠李と相部屋だ。

「まず、清水寺だったね」

「そうですわ。楽しみです」

 テンションの高い恭子についていけなかったのか、悠李は迷った挙句に苦笑気味に「そうだね」とだけ言った。

「その後は三十三間堂に行って、今日は終わりです」

「本当に楽しみだったんだね、恭子……」

 しっかりスケジュールを把握している恭子に、悠李はやはり苦笑気味。ベッドで寝ていることが多かった恭子が、こうして旅行する機会はあまりなかった。今回は友達も一緒とあって楽しみで仕方がないのである。


 荷物を部屋に置いてからロビーに集合し、再びバスに乗って清水寺に向かう。当たり前だが、観光地である京都は人が多く、清水寺も長い列ができていた。

「……長いね」

「1時間待ちくらいじゃないか?」

 唖然としてつぶやいた紗耶加に、遠くまで見通した碧が答えた。紗耶加が「ひえ」と声を上げる。

「そんなに列、長いの!?」

「ああ。暑いから、気をつけろよ」

 碧が恭子に向かって言った。恭子は麦わら帽子をかぶり、ペットボトルの水を持ち、熱中症対策は万全だ。


「姉貴。見えてるのか?」

「レンズ越しだけど、ばっちり見えているね」

 香坂姉弟の会話である。突然だが、悠李は「見える」人なのである。かなり霊的感応力の強い悠李は、こういった古くからの歴史が積もりに積もった地では、霊子遮断眼鏡をかけなければ街中を歩けない。

とはいえ、悠李がかけている眼鏡は、どちらかというと青いレンズの入った偏光グラスである。ちなみに、弟の千尋はあまり見えないらしい。恭子も見えない。紗耶加や碧、敬は見えると言っていたから、もしかしたら霊感は精神魔法にかかわりがあるのかもしれない。


 本当に1時間待ちで清水寺の舞台に登れた。有名な、『清水の舞台から飛び降りる』という言葉があるが……。

「……飛び降りても、死にはしなさそうですわね」

 恭子は思わずつぶやいた。すると、紗耶加が博識ぶりを発揮した。

「江戸時代に流行った民間信仰らしいよ。清水の舞台から飛び降りれば、願い事がかなうって」

「……どこから出た信仰だろうな、それ」

 敬が若干呆れ気味に言った。観光客が多いので、さっさと舞台から降り、清水寺の前で集合写真を撮った。


 ここで気になるのが、

「心霊写真になってない?」

 ということだ。付き添いの仁科先生が「大丈夫だ。俺には霊感がないからな」と言った。それは関係があるのだろうか。


 続いて三十三間堂だ。菓子供養の日が近いが、その日は観光客が多すぎて拝観はできないだろう。

 それはともかく、三十三間堂は圧倒された。ちなみに、撮影禁止だ。っていうか、この中に仏教徒が何人いるのだろうか。いや、日本ではそう言う境目はあいまいだが。


 三十三間堂を出て、ホテルに戻ると、午後5時を回っていた。これだけ歩き回ったのは初めてで、疲れた。恭子が部屋のベッドに倒れこむと、「六時から夕食だよ」と悠李から指摘が飛んだ。眠いが、おなかもすいた。


 恭子は起き上がると、髪を整えた。今日は暑かったから、明日からは髪を結ぼうか。悠李に手伝ってもらって三つ編みにするのもいいかもしれない。

「……悠李は髪が短くて、涼しそうですわね」

 思わずそう言うと、悠李は苦笑した。

「そうでもないんだな、これが。最近、髪が伸びてきたから長さが半端でね。結べなくて逆に暑い」

「なるほど」

 結んだ方が涼しい場合もあるのか。やはり、明日からは髪を結ぼう。


 午後6時になる前に、集合場所であるホテルのレストランに向かった。すでに来ているメンバーは適当に座っていた。当たり前だが、学年ごとに固まっている。恭子と悠李も先に来ていた紗耶加とレイチェルの隣に座った。


 食事が始まると、楽しくおしゃべりタイムだ。特に、明日は自由行動のため、どこに行くか相談している。大体決めてきた。

「映画村に行ってみたいのです」

「……またマニアックね」

 レイチェルが反応に困ったようにそう言った。大体計画を立ててきている者は多いと思うが、ここでほかの友達を誘っている人もいる。絢音に聞いた話では、1年生5人は5人で自由行動をするらしい。慣れない土地だし、それがいいだろう。


 ちなみに、この研修旅行の参加者は37人。大体一クラス分くらいだ。付き添いの先生は仁科先生を含めて3人。計40人だ。内、5人は1年生、18人が2年生、残り14人が3年生となる。

「あたしは二条城に行ってみたいかな。ここから近いし」

「いいね、二条城」

 紗耶加がぱん、と手をたたいて言った。敬が、「水瀬も入れて、みんなで二条城行ってから映画村行くか?」と言った。

「というか、鷺ノ宮さんはどうして映画村に行きたいの? 時代劇好き?」

 氏家に尋ねられ、恭子は「まあ、大河も好きですが」と言葉を続ける。

「仮装をしてみたいのです」

「……」

 あ、何人かに引かれた。いいじゃないか、ちょっと……羽目を外したいんだよ、たまには! 研修旅行だし! 

 ほら、あるじゃないか。映画村には、昔の人になりきれる貸衣装屋が。雑誌で見てから、着てみたかったのだ。いいじゃないか、それくらい。


「……まあ、いいんじゃないかな。やりたいと思うことは大事だよ。やらなくて後悔するより、やって後悔した方がいいともいうし。ああほら、恭子。お茶はいるかい?」

「……いただきます」

 思いっきり悠李に話をそらされた気がしたが、恭子はカップを悠李の方に寄せた。ピッチャーからお茶を注いでもらう。お茶を注ぐ悠李の方へ、恭子の向かい側に座っていた碧が悠李の方にカップを差し出した。悠李はそちらにもお茶を注ぐ。


 最後に自分のカップにもお茶を注いで、悠李は尋ねた。

「たしかに、どうして仮装がしたいんだい? 着物ならよく着ているだろう?」

「着物ではありません。十二単を着てみたいのです」

「……いや、でも、あれ、総重量10キロあるらしいよ」

 恭子の願望をあっさり打ち砕いたのは歴史に強い紗耶加だ。にしても10キロ……。

「貸衣装で10キロだったら、だれも着なくない? どこの甲冑なのよ」

 レイチェルが冷静なツッコミをした。紗耶加が「それもそうだね」とうなずく。ほっとする恭子だが、重ね着をするので重いのは確かなようだ。

「悠李なら10キロでも着れそうよね」

 レイチェルが言ったが、悠李は首を左右に振った。

「いや、僕は見た目よりも力がないからね。10キロの服を着たら歩けない自信がある」

 どんな自信だ。しかし、悠李が見た目よりも力がないのは事実だ。以前、クラスの運動魔法を得意とする女子生徒と腕相撲をして負けたことがあるらしい。これは敬からの情報だが。


 そこから、何故か女子の間で昔の衣装の話が盛り上がる。結局、女子たちの間で映画村は行こう、ということになった。恭子が行けば悠李と碧は絶対についてくるし、敬もついてくるだろう。氏家もついてくるようだ。確かに、碧と敬だけでは収集がつかない可能性は否定できない。


「恭子、先にシャワーを浴びるかい?」

「すみません。お先に失礼します……」

 部屋に戻ると恭子はぐったりした。食事のときはテンションが上がっていて気付かなかったが、かなり疲れていたのを忘れていた。

 シャワーを浴びた後に髪を乾かしていると、眠くなった。本当は悠李が上がってくるまで待っていようと思っていたのだが、ちょっと無理そうだ。恭子は長い髪を、散らばらないように束ねると、ベッドにもぐりこんだ。


「……おやすみなさい」


 一応、浴室の方に向かってそう言った。眼を閉じるとすぐに眠りについた。どうやら、本当に疲れていたようだった。





ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


ミネルヴァ魔法学院では、修学旅行は応募制。行きたい人だけ行く、という風になっています。設定上、魔術師は長距離移動が難しいからです。


次は8月14日、木曜日です。

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