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「殿下、彼女をどうするのですか」
王宮の廊下を歩いている最中、僕の従者であるニール・ミレットが眉をひそめながら、そう聞いた。
ニールは僕が幼少期からずっと僕の傍で仕えている忠誠心の強い従者だ。
赤い短髪に、鍛え上げられた大きな体格、初対面だと恐ろしい印象を抱いてしまう強面。僕よりも三つ年上の二十五歳。清潔感があり、几帳面で真面目だ。
「牢から出す」
ニールは僕の返答に顔を顰めた。
彼はルナ・マキリスの僕に対する態度が気に入らないらしい。僕らが地下牢を去ってすぐに、彼女は敬語を使わなかった、とニールは文句を言っていた。
「ルナ・マキリスは、黒竜殺しの容疑者です」
「彼女曰く、殺したのは聖女だろう?」
「ですが、そんな証拠は」
「なら、ルナ・マキリスが殺した証拠もない」
ニールの言葉に被せるように僕は言葉を発した。彼は口を閉ざす。
黒竜殺しが公になってしまった今、容疑者であるルナ・マキリスを釈放するのはかなり危険だ。国民たちの反感を買う可能性が大いにある。ニールはそれを心配してくれているのだろう。
「黒竜を殺したのが本当に聖女だったとしても、お前は聖女を守り続けるか?」
「……俺は殿下の指示に従うだけです」
「今、俺はお前の意思を聞いている」
少し圧を込めてそう発すると、ニールは「すみません」と静かに頭を下げて、一拍置いて答えた。
「聖女に対しての嫌悪感を俺も前から抱いています。我が国で敬愛され続けてきた黒竜を本当に聖女が殺したのであれば、俺は喜んで聖女の敵になります」
しっかりと答えるニールに「良い返答だ」と僕は小さく笑みを浮かべた。
聖女を自由にさせすぎていた。そろそろ本気で聖女に対しての対策を打たねばならない。闇の神によって世界が滅びるより前に、この国が滅びかねない。
「ルナ・マキリスを何としても守るぞ」
「御意」
黒竜の遺体から、聖女が殺した証拠を必ず掴んでやる。




