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初めて彼女――ルナ・マキリスを見た時、息が止まった。
牢獄の奥で佇む女があまりに美しかった。この国では異質な外見と雰囲気を持っていた。彼女をもっと近くで見てみたいという衝動に駆られる。
誰も寄せつけない冷たさを纏っているのに、目が逸らせなかった。
闇に魅入られた魔女、と噂されているなんて、馬鹿馬鹿しいと思っていたが、実際にあうと納得できた。目を奪われるその容姿は確かに人を惑わせそうな魅力があった。
夜を閉じ込めたような彼女の瞳を見ていると、思わず吸い込まれそうになる。
女性を見て、初めて綺麗だと思った。
これまで多くの女性を見てきたが、彼女ほど本能で惹きつけられる人に出会ったのは初めてだった。
『親愛なる聖女様へ どうか死んでください ルナ・マキリス』
この手紙を読んだ時、俺は自然と口角が上がっていた。
堂々と王宮にこんな手紙を送ってきた度胸に思わず心が跳ねた。この女は俺に刺激を与えてくれる、と直感した。
王宮宛てに届いた手紙は、まず書簡官の手に渡り、整理される。平民から送られてくるほとんどの手紙は確認されることなく捨てられる。しかし、彼女からの手紙は違った。
その手紙は、特別だった。便箋から微かではあるものの、魔力に似た何かを感じた。聖女と王族しか魔力を持たないこの世界でありえない。この異変に、書簡官は独断で処理することを避け、手紙を僕の元へと届けた。
その手紙を受け取った瞬間に何か特別な気配を感じた。魔力とは少し違う。だが、確かに不思議な力が込められていた。
僕はその手紙を預かり、部屋で読むことにした。いざとなったら、魔法でこの手紙を塵にできる。
そして、開けて中身を確認すると、内容はシンプルで強烈だった。間違いなく国民の怒りを買う。しかし、僕も聖女に対する疑念は抱いていた。この差出人に会いたくなった。
ルナ・マキリス。その名に聞き覚えがあった。街でよく噂をされていた女だ。
彼女に会うだけなら、身柄を押さえてしまうのが最も手っ取り早かった。
しかし、理由もなく平民を王宮に連行し、拘束するわけにはいかない。そこで、侮辱罪というもっともらしい口実を用意した。
いざ彼女を牢に入れたはいいが、話を聞くと、とんでもない事実が判明した。
ジャディアス国の象徴であり、守護者と言われている竜の王――黒竜が殺されたという。さらに驚くことに、ルナ・マキリスはその黒竜の娘。
信じられなかったが、初めて会話した日、彼女は嘘をついていなかった。
王族には、言葉の真偽を見定める特殊な魔法が受け継がれていた。この魔法は、聖女は扱えない。
この国の頭脳であるイアンにルナ・マキリスについて探らせたが、どれも真実を語っているように思えるという報告が来た。
ルナ・マキリスの母親は不明で、父は黒竜。この世界で唯一の人間と竜のハーフ。相当怪しい。こんな話を聞いても、誰もが冗談だと捉え、相手にしないだろう。
だが、僕はこの目で見たのだ。彼女の影が竜の輪郭を帯びていたのを……。
思わず、畏怖を覚えた。あれは間違いなく現実だった。
自分の目を信じずして、何を信じるのだ。




