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【7】一仕事(殺)の後だとまた格別。

ハツを山盛り食べた数日後。近隣の魔物討伐(魔界ゲート産じゃない野生の奴)をして戻ってきたフェリックスさま達と出会った。私はちょうどグサリと一人殺したところで、これから帰ろうとしていた。一緒に食事でも、と誘われたのでついていく。前回、ハツを食べるためとはいえ野暮用と言って断ったのでね。埋め合わせの気持ちもある。


エリート騎士さま達の後ろにくっつく芋女は注目を集めていた。これがご令嬢さまとかすごい美人だったら花になっていたかも。今更だが、私の容姿は平凡だ。体格は女性にしてはいい方。猟師は細けりゃやっていられないので、身体も筋肉質である。年が近い猟師仲間には、お前は女というより仲間としてしかみれんと言われた。へへへ、と喜ぶと呆れていた。


行った酒場は洒落ていた。客層が穏やかで、私はむしろ落ち着かない。いやまあ酒場だから賑やかではあるけどね? 私が行く酒場は喧嘩が起きたりジョッキが飛んだり、突然服を脱ぐ酔っ払いが出現するので。そういう人は流石にいないわけ。お酒だけは自分で選び、あとは騎士さま達が注文した食べ物の盛り合わせをちょいちょいもらうかたちで飲み進める。おいしー。一仕事(殺)の後だとまた格別。


今日の魔物討伐について、フェリックスさまが話をしてくれた。今の時期は繁殖期だから魔物の被害も出やすいらしい。魔物はただの武器ではなかなか殺せない。マナをのせないと、攻撃が通りにくいのだ。ちなみに私もちょっぴりマナがある。弱い魔物なら殺したこともある。でもせいぜい1、2匹が限界だ。マナってすぐになくなるし、回復にも時間がかかる。


「そんなにたくさんの魔物を倒すなんて、騎士さま達はやはりすごいですね」


「今回の魔物討伐は団長一人でやったので、実質単独討伐ですよ。俺達は、周辺住民の避難誘導をしたくらいです」


横から明るい声が割り込んでくる。彼は平民相手の私にも敬語口調だ。誰に対してもそうらしい。懐っこく愛嬌のある赤毛の彼は、エミルさまという。男爵家出身の騎士さまだっけ。フェリックスさまの騎士団の中では、新人の立ち位置のようだ。年も私と同じくらいかな。他の騎士さま達によく可愛がられている。ごついけど。ええ、と私は思わず驚きの声をあげる。


「たった一人で討伐を?」


「団長はすごい人ですからね!」


「魔物ってマナを使わないと殺しにくいですよね? マナ使うとすごく疲れるのに、大丈夫なんですか?」


狂病を発症するくらいだからフェリックスさまのマナ量が多いのは理解できる。そうは言っても話に聞いた規模の魔物を一人で殺したとなると、ここでお酒飲むより回復に努めるべきでは? でも本人ピンピンしているな。


「俺がすごいというより体質の問題だな」


「体質?」


「ほら、前話したじゃないですか。団長の家系の祖先には精霊がいるって」


ああ、はいはい。そんな話聞いた気がします。それと何か関係が? と促す。曰く、精霊というのは意志を持った自然そのものらしい。で、これを祖先に持つフェリックスさまの一族は、自然との調和力を持つそうだ。難しい話に首を傾げていると、フェリックスさまが要約してくれる。


「簡単に言うと、身体が周囲の自然からマナを吸収する。だから、マナの回復速度が速い」


「へー。自動回復みたいな感じですか」


「団長の祖先は風の精霊と契ったらしいですよ! だから、風のある場所ならマナ回復がとにかく早いんです! 天恵ですよ!」


酔いが回ってきたのか、エミルさまのテンションが上がってきた。団長はすごいんですよ! と繰り返している。流石に気恥ずかしくなったのか。フェリックスさまがエミルさまを外に連れて行った。酔い覚ましさせるためだろう。


最近、何となくフェリックスさまの感情が読めるようになってきた。前より鉄仮面がマシになったとも言う。あと、部下の人と飲んでいるときは結構表情が和らいでいるね。仲のいい騎士団のようだ。


「あれ?」


酔いがまわったかな? いやまさか。私お酒強いし。なんか一瞬、フェリックスさまが黒く滲んで見えた? 目を擦って見直すと、そんなことはなかった。目がぼやけただけかな。フェリックスさま黒髪だしね。残像的な。この後、私の隣の席には副団長さまが座ってきた。ルドルフさまだ。フェリックスさまとは幼馴染でもあるらしい。長めの金髪を一つ結びにしている、青目の男前だ。ほんとこの一団は顔がいい。


ルドルフさまは、雰囲気は柔和だけど侮れない。この人は私がフェリックスさまを殺した現場を二回見ている。互いに和やかに会話したが、時々ルドルフさまが探るような目をしていた。私はそれを思わず睨み返さないよう、努力した。そうこうしているうちに、美味しい飲み会はぐだぐだと解散となった。また飲もう、とフェリックスさまが去り際に言ってくれる。ご馳走になりました。


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