【5】前回の二の舞はごめん。
気まずい喫茶店の出来事から一週間後。5月の上旬。フェリックスさまが仕事終わりに食事に誘ってきた。私もこの日は予定がなかった。私たちは酒場で会うことにする。
場所の指定は私がした。あまりお高いところに連れていかれると気が張ってしまう。前回の二の舞はごめん。お酒とつまみが美味しいお店を選んだ。大衆寄りなので、運が悪いと全裸になろうとする奴がいるのが玉に瑕だけど。
乾杯してからぽつぽつ喋る。相変わらず表情変化は乏しめだが、前回よりは遥かにマシだ。しかし、やはり盛り上がりに欠ける。ここは私が会話をリードしなければ、また気まずいだけの時間になってしまう。
そう思い、まずは私の仕事のことを話してみた。狩猟のことだ。自分の好きなことなら口もよく回る。2か月前に捕まえたうさぎが驚くほどに真っ白だったことは、何度でも自慢したい。
この話題は成功だった。相槌を打ってくれるし、案外専門的なことも質問してくる。聞き返すと、狩りの経験は少しあるらしい。あー、あれかな。嗜み的な。貴族出身の方はシロの森で狩り大会をすることもあるらしいから。私は小動物を罠で、中型や大きめを狩るときは弓を使う。フェリックスさまは銃を使うらしい。
「銃ってどんなものですか? 聞いたことはあるけど見たことはないです。弓の仲間ですか?」
これがきっかけに話題が大分繋がった。フェリックスさまは私の知識不足を馬鹿にする様子もなく、銃について教えてくれた。弓と同じ飛び道具らしいけど、弦を引いたりはしないそうだ。なんか魔法の玉を込めるらしい。で、指先に力を入れると玉が発射されて、獲物を仕留めると。ふーん? いまいち形が想像つかない。基本的に狩り以外で使うことは禁じられている道具のようだ。
「一時は魔物の討伐用として開発しようという動きもあったが、否決された」
「それはどうしてです? 指先にぐっと力を入れるだけで楽に魔物を仕留められれば、言うことなしでは?」
「流通すれば、戦争の道具になりかねないからだ。今の銃はあえて威力を落とし、数を少なくして確実に管理している。同盟国との共同締結でもある」
へー。あいにく歴史だの同盟だのはあまり私は詳しくない。そもそも私は王都生まれでもない。もっと田舎の方の出身だ。猟師として独立したときにここに来たからね。けれど、知らない話だからこそ興味深い部分はある。フェリックスさまは無知を馬鹿にする感じではないし。拙いながらも意見を言うと、律儀に返してくれた。そんな感じで、やっと喋り友達みたいになってきたわけである。
以上、長かったけど回想終わり。話は現代軸に戻る。




