↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/65

【4】今一番言いたいことは、帰っていいですか? だ。

フェリックスさまとこれからも話す約束をしたのは4月半ば。今は5月末。1か月半ほどが経過した。さて私たちはどんな感じかと言うと、最近になってようやくまともな喋り友達、という具合。いやだって最初の頃は、ね? うーん、とある日を回想する。フェリックスさまと知り合ったばかりのことだ。


遠距離にいる人が連絡を取る手段として常套なのは通信石だ。離れていても会話ができるすごいもの。しかしこれはお高い。個人で持つのは貴族さまとか大金持ちくらいだろう。通信石は公共の場やギルド、あとは各施設に配置されている。共用で使うのが普通だ。私は1つ持っているけど、殺しの仕事用に借りたやつなので。フェリックスさまが連絡をする場合、クロの森近くの狩猟施設に通信がくる。


喋り友達になろうという提案の二週間後。4月末。私たちは喫茶店で向かい合っていた。お話するためにね。正体ばれないかな、と緊張していた。しかしである。


(気まずい)


相手は先ほどから手元の飲み物を見つめるだけだ。え、会話は? 話をするために待ち合わせたんだよね? 話題は? ……相変わらず堅物そうな顔だ。表情もまったく動かない。ど、どうしよ。あれですか、こっちから振れと? 何話そう。天気? 家族のこと? それとも仕事のこと? 駄目だ、どれも微妙。今一番言いたいことは、帰っていいですか? だ。失礼すぎる。あ、失礼と言えば。


「あの、私の口調は不快じゃないですか?」


「……どういうことだ?」


私の質問にフェリックスさまは顔をあげた。きょとんとしている。お。少し張りつめた空気が軽くなったような。


「敬語がおかしくないかなって。失礼に聞こえていないか気になりました」


貴族出身のような教養はないからね。目上の相手には丁寧な口調を心がけている。しかし、お上品ではないだろう。そこが気になっていた。相手の返事は別に失礼とは思わない、とのこと。ほっと息を吐き出す。目の前の彼が少し身じろぎした。一つ咳払いする。


「すまない」


「え?」


「俺が呼んだのに話題も振らず。先ほどから緊張しているだろう?」


いやほんとその通りです。と全力で頷きたいがそうもいかない。曖昧に笑って場を繋いだ。あー、あれか。この人も緊張していたと? あまりにも表情変わらなくてわからなかった……。そうだ、と思いつく。


「あの、次はこういう落ち着いた場ではなく、酒場のような賑やかなところはどうでしょう? お酒が入ればもう少し気も楽になるかと」


喫茶店に行くのはもっとこう、親しくなってからの方が良くないかな? ここ半個室だし、落ち着かない。沈黙が来ても周りが賑やかなら間も持つしね。というか、貴方酒場で声かけてきたときは割と自然でしたよ。ああいう場の方が話せるでしょ? ということを遠回しに伝える。無言。……。あ、考えているのか。


「君がいいなら、そちらの方が助かる。正直、俺もこういう場は慣れていない」


「えっと。ではどうして今日はここに?」


「女性はこういう場所の方が好きなのかと。行きたいと言われるのは、大体こういう場所だ」


はいはい。無意識の発言でしょうが、相当モテると。そりゃそうだろうね。男前な人だもの。しかも騎士さまだしね。ご令嬢さまとの出会いは入れ食いだろう。でも自分からは滅多に誘わないタイプか。見た目通りだな。結局次は酒場で会うことになった。また時間があるときに向こうが連絡してくることになる。何だったんだ、この時間……。やっぱりもう話すのはいいって言ってくれないかな。疲れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。