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【お相手視点連載中】心臓を、抉る。  作者: kanon
武術大会と危機
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【48】うそでしょ。何で?

本日は武術大会三日目。つまり本選だ。昨日の予選は非公開だから見ていない。だがエミルさまが顔を出し、フェリックスさまが本選に出ることになったと教えてくれた。流石ですね、フェリックスさま。ルドルフさまは敗退だって。残念だ。なお、私は昨日狩猟の仕事で忙しかった。罠を見たところ、うさぎが掛かっていた。でも真っ白ではなくブチ模様。うーん。


この日、狩猟の仕事を終えてから中央広場に行く。ちょっと遅刻してしまった。フェリックスさまの試合が……。映像板前は人々でごった返していた。ひええ、押される、押される。何とか良さような位置に陣取り、映像板を見上げた。今は違う人の試合だった。


私は周りの人に状況を聞いた。それによると、フェリックスさまは危なげなく二回戦まで突破したようだ。音声はないけど、試合は大迫力だったよう。風の刃がどうのと言っていた。マナ攻撃かな? そういえばフェリックスさまって風の精霊が祖先にいるんだよね。うわあ。試合見たかった……。でもロビンの鶏小屋の近くに大きな鷹が出るというからそっちの対応に回ったのだ。せっかく買い直したばかりの鶏だ。食べられたら大変。


ぐいぐい押されながらも踏ん張っていると、フェリックスさまの三回戦の番がやってきた。まずは相手が入場だ。わあ、相手の人は重騎士さまかな。がっちり着込んでいる。見るからに強そう。さあ次はフェリックスさまだ。今度こそ、フェリックスさまの試合を見るのだ。さっき聞いた風の刃はどんな攻撃だろう?


「…………え?」


うそでしょ。何で? 入場してきたフェリックスさまが、黒い霧を発生させている。表情や動きを見る限りまだ発症していない。しかしもう直前段階だ。そんな。だってつい三日前に殺したばかりだ。それに一昨日はそんな前兆なかったはず。私が唖然としている間に試合が始まる。ど、どうしよう。私はすぐに通信石を起動した。ルドルフさま! 早く出て!


混乱しながらも試合の動向を必死に眺める。重騎士さまは見た目を裏切り動きが速い。マナで身体強化している様子だ。それに加え、剣に常時マナをのせる攻撃スタイルと見える。とにかく一撃が重そうだ。ここまで上がってきたし、精鋭だろう。


フェリックスさまも応戦している。息もつかせぬ剣戟から抜け出すと、一瞬で剣にマナを溜めた。傍目から見てもわかる。凄まじいマナ量だ。刀身が高濃度のマナの輝きで煌びやかに輝きだす。相手は思わずと言った様子で距離を取り、盾を構えて防御集中の姿勢。フェリックスさまが一撃を放つ。


す、すごい! マナで形作られた風の刃が次々相手に襲い掛かる。砂塵が舞い上がり、地面をひっくり返す勢いだ。闘技エリアには余波が周りに届かないよう、エリア周囲に結界が張られる。その結界に罅が入るほどだ。相手は防戦状態から抜け出せない。あんな超威力のマナを使ってもマナ枯れしないと? 通信石が応答する。周りに人がいるからだろう。ルドルフさまが私の名前を出さずに応対してくれる。


<突然通信してきてどうしたの?>


「!! ルドルフさま、大変です! 今、フェリックスさまの試合を見て……」


……え。


<? あいつがどうしたって?>


黒い霧が、集まっている。フェリックスさまが発生させているものだけじゃない。周りから漂った黒い霧が、フェリックスさまに集まっていく。どこ? あの霧はどこから来ている? 目を凝らす。映像の角度が悪くてなかなか見えなかったが、タイミングよく上からの映像に切り替わる。


「!」


観覧席!? 本選参加者だけではないだろう。騎士さま達がたくさんいた。そこから少しずつ黒い霧が流れ、濃度を増し、フェリックスさまにどんどん取り込まれていく。『吸収』されていく。その事実を認識した途端、理解した。フェリックスさまがなぜ何度も狂病を発症させるのか。


「ルドルフさま! 今すぐ試合を中止してください!! フェリックスさまが」


次の瞬間。フェリックスさまが真っ黒な霧に覆われる。一瞬姿が見えなくなる。次に黒い霧の隙間から姿が見えたフェリックスさまは、もう……。彼は口元に歪んだ笑みを浮かべながら、相手に大振りに剣を振るっているところだった。横凪ぎの攻撃の動きがかろうじて見えた。そして、音もなく映像板が突然プツンと切れた。

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