【43】「……何としても優勝してみせる」
家でフェリックスさまを殺した一週間後。今日もフェリックスさま達騎士団の飲み会に混ざらせてもらった。告白を断ってから、フェリックスさまは二人きりで会わないように気を遣ってくれている。友人対応をしてくれているのだ。だから作業場とかには来なくなった。今日はもう間もなく、一週間後に迫る武術大会のことが話題である。
武術大会は実質三日間執り行われる。一日目は所謂開会の儀。これはすぐに終わるもので、宣誓後すぐ解散するそうだ。翌日のための休養時間を作るためだとか。王都勤めではなく、王都外の騎士さまもいるらしいからね。二日目が予選。これは一般人には非公開だ。予選参加者は人数が多く、開催時間も長い。映像板って結構マナ使うらしいからね。予選は見せないのだ。三日目が本選。予選を勝ち抜いた精鋭が、トーナメント方式で闘う。一般人が見られるのはこの三日目だけだ。
「実は通信石で指示が来ました。私は個人的に一日目の開会の儀の映像を見ることになりそうです」
「どういうことだ?」
なんか近衛騎士さまから連絡が入ったのだ。これは国王陛下のご命令らしい。狂病者は今も一定数が発生し続けている。国王陛下は、今回の大会中に発病者が出ないか憂慮しているそうだ。それは当然の気にかけだよね。私も大丈夫か心配だったし。
「前、発症前に殺した騎士さまがいまして。そこから、御使いは発症直前でも狂病者の見分けがつくことが伝わったそうです」
「……なるほど。開会の儀では参加騎士達が勢揃いする」
「で、その時の映像を見れば、発症直前者がわかるかもと」
まあ明言できないけど。今までは直視だからね。映像越しでも黒い霧が見えるかは不明だ。ただ、試す価値はある。一応、映像越しに見えるかわからない旨は伝えた。その点は了承してくれた。映像越しに黒い霧の発生がゼロだった場合は、私を大会会場まで連れていく場合もあるそうだ。一般人は本来進入禁止なので、映像越しで済むならそっちの方がいいらしい。
というかこれ、私が一般人だってばれているよね。多分知らないとこで調査とかされていて、上の方の人は私のこと知っていそう。殺しをするために移動ゲートとか使っているしね。でも何も言われないってことは知らないふりしてくれているわけだ。約束守ってくれて助かる。
「フェリックスさまは念のため、開催直前に殺しますね。開催の儀の前日でいいでしょうか?」
「何とか時間を作ってみる」
「いざとなったら僕が事前準備とかは全部担当するから」
ルドルフさまが会話に入ってきていた。なお、ルドルフさまも大会には参加するらしい。大丈夫かな、激務になってそう。まあ僕は予選敗退かな、とルドルフさまは言っていた。弱気だなあ。
「弱気じゃないよ。本選行くのはまず団長クラスだ。あとは若い近衛騎士とか、地方の監督騎士とか。とにかく強い奴ね」
この大会は年齢制限があるらしく、基本的に実働団の若い騎士さまが対象だ。ある程度年齢重ねたら、指導側に立つらしい。次代につなぐってことか。
「ちなみにフェリックスは一昨年も出たんだ」
「え。全然記憶にないです。チラ見くらいはしたのですが」
「二回戦敗退だったな」
そんな。フェリックスさまが敗退するレベルってこと? 精鋭って本当にすごいんだなあ。まあ二年前は大厄災前だったし、とルドルフさま。
「あのときの経験で相当実力伸びた部分あるよ。今回はいけるって」
「……何としても優勝してみせる」
「相性の悪い奴と当たらないといいよね」
とにかく怪我だけは気を付けてほしい。鎧とか着たとしても、急所に当たったら大変だ。実際、過去に大怪我した人もいるらしいしね。結構容赦なく攻撃し合うのだろう。今年も爆発したり光の波動が出たりを見ることになるのか……。なお神官さまが待機しているので、治療はすぐにされるらしい。ちょっとほっとした。と、そこで通信石が光る。応対。ごにょごにょ話して、通信を切った。
「すみません。お仕事(殺)が入りました。ここで抜けます」
「サシャさんも大変だね……」
「いえいえ。もう慣れました。それじゃあおやすみなさい」
「……夜道は気を付けるように。次会うときの時間帯はまた連絡する」
「はい」
というわけで解散した。はあ。武術大会、大丈夫かな。




