↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/64

【42】「じゃあ殺しますね」

飲み会してから早一週間。最近は少し肌寒さを感じるようになった。もう10月半ばだしね。今日はフェリックスさまを殺す日だ。勤務終了後に家に来てもらうことになった。殺す場所をどうするかだいぶ考えた。外で殺すわけにはいかないし。で、フェリックスさまは普段は騎士宿舎で寝泊まりだ。宿屋という選択肢もあるけど、その場合男女二人では憶測が飛び交う。結局、人目を避けた時間帯に私の家に来てもらうしかなかった。


まあ、フェリックスさまは大分難色を示したけど。私だって、こんな事態じゃなければ家にはいれない。でも仕方ないし……。神と騎士道に誓って何もしないと言っていた。はい、信頼しています。むしろすみません。ここに来るのはフェリックスさまの心境的にきついだろうに。


訪問のノックが聞こえたので、私は扉を開ける。フェリックスさまとエミルさまがいた。用事が済むまで、エミルさまは家の外で待機しているらしい。こうすれば万が一訪問を見られても、男女関係とは思われないからとのこと。お気遣い助かります。お茶を一杯飲んで軽く近状報告した後、すぐに本題に入ることにした。


「証拠が残るといけないので、上の服を脱いでください」


フェリックスさまは頷き、言う通りにしてくれた。わー。いい身体だ。おっと。あまり見ると痴女になる。さてと、とナイフを取り出す。あー。どっちから刺そうかな。前から? 後ろから? 前からだとまともに刺されるところが見える。そっちの方がきつそう。後ろに回って、手だけ前にやって刺すのがいいかな。その旨伝えて、了解してもらった。彼にはミニテーブル前に座ってもらう。私はその後ろに立った。ナイフは左手。ちょっとしゃがむ。


「じゃあ殺しますね」


「ああ、頼む」


会話だけ聞くと色々ひどいな。そう思いつつ、位置を確認して一気にナイフを突き入れる。御使いとしての経験は大分様になっている。今では見ずともどこから入れれば引っ掛かりなく心臓まで到達するかわかるようになってきた。よし、完璧。普段の癖、というより猟師としての自分のやり様か。獲物の最期は必ず見るようにしている。今回は後ろに回っているから、顔は見えないけどね。それでも大体の相手の状態はわかる。


あれ。なんか駄目そう。全身が緊張で硬直している。声は出さないけど、息がおかしい。心臓の鼓動が浅くて速い。頻脈になっている。早く終わらせてあげよう。ちょっと控えめにナイフをねじ回して、心臓を抉る。赤い煙が噴き出す。……また潜伏していたわけだ。


ガタタ! とフェリックスさまの身体が跳ね上がった。蘇生したらしい。目前の身体がぐらつく。ミニテーブルに勢いよくもたれかかりそうになるのを、腕をついて防いでいた。喘鳴が聞こえる。慌ててナイフを引き抜いた。フェリックスさまの顔を窺う。


「フェリックスさま、大丈夫ですか!?」


「……っ。大丈夫だ」


いや全然大丈夫ではないです。顔色真っ青、脂汗が額に浮いている。息もまだぜいぜい鳴っている。どう見ても苦痛そのものの表情だ。ルドルフさまの時よりひどい。ナイフの突き入れも殺すまでの動作も、長引かせたところはなかったけど。やっぱり正気時は意識ある状態での殺しは現実的ではなさそう。無理をしないでほしい旨を伝えた。フェリックスさまは力なく首を振る。


「……一つ頼みがあるのだが」


「はい?」


「次のときは正面からやってくれないか?」


ええ? どういうこと?


「頭ではサシャが刺しているとわかっているのだ。しかし、姿が見えないとどうも……」


「ああ……」


見えない方が怖いタイプか。騎士さまが感覚鈍麻なわけがない。たぶん身体が無意識に侵入物を敵認定してしまうのだろう。さっきのあれは所謂パニックだ。いや、しかしだよ。それだったら睡眠魔法中に殺した方が絶対無難だと思う。一応次回は正面から殺すことにしたが、それでも駄目ならもう魔法使いさまの力を借りるべきだと念押ししておいた。


で、結局今回も赤い煙が発生した。また再発している。うーん。本当にどういうことだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。