【41】必要以上に同情してはいけない。
ルドルフさまと会話してから五日後。フェリックスさまに飲みに誘われた。騎士団の飲み会みたい。せっかく誘ってくれたので参加することにした。フェリックスさまとは喫茶店の件以来だ。思えば、連絡はいつもあっちからしてきたからね。向こうは忙しい身だし、そもそも平民の私が個人的にフェリックスさまに連絡をとるものじゃない。
告白をお断りしてから初めて会う。ちょっと気まずいけど、疎遠になりたいわけじゃない。そもそも前回の急進行を考えるなら、会えるときに会っておくべきだ。指定された場所に行くと、既に飲み会は始まっていた。私は挨拶してフェリックスさまの近くに座る。フェリックスさまも少し微笑んで応対してくれた。
「今回の討伐は大丈夫でしたか? 急遽だったとか。大変だったでしょう?」
「突発的なものだったが、幸い何事もなかった。人的被害も出ずに済んだ」
「それは良かったです」
とりあえずメニューを見てお酒を頼む。私はエミルさまに会釈した。向こうもちょっと眉を下げつつ会釈を返してくれる。御使いの件ありがとうございますね、と言葉はなく伝えた。乾杯してから飲みだした。友人として気安く色々喋る。変に会話が途切れることはない。いつものペースで楽しく喋る。
あー、と納得する。フェリックスさま、やっぱりアピールしていたときは露骨に示していたわけね。つまり隠すの下手なわけじゃなかったと。今の態度は、気安い友人に対するものだ。私が好意を自覚していなければ、この態度ならまあばれないだろう。
……告白を聞いたからこそ気付ける範囲。ほんの僅かに表情に痛ましいものがある。ただの友人に見えるよう努力している痕跡がある。そして私はそれに気づかないふりをするのだ。必要以上に同情してはいけない。余計相手を苦しめるだけ。私はひそひそ声を出す。
「今のところ、黒い霧はまったく出ていませんからね。もちろん、定期的に確認は必要ですが、とりあえず安心してください」
「それは助かった。明日はまた大会前の模擬試合がある。同僚に迷惑はかけなくてよさそうだな」
「以前エミルさまに聞いたんですけど、団長副団長クラスの模擬試合はすごいらしいですね。普段からマナ使うんですか?」
「致命傷を与えない程度に使う。治療のための神官もいるしな。ただ、大技は控えるのが普通だ。普通の者はマナの回復に時間がかかる。後の業務に影響する」
あー。フェリックスさまは自動回復体質だっけ。マナ使っても疲れにくいとか、本当に騎士が天職だよね。
「……大会中の試合は短い休憩時間は置くが、ある程度連続で行われる。普通はマナの出力調整をする必要がある」
「最初にマナ使い切っちゃったら、後の試合に響くんですね」
「その通りだ。だから俺の体質をずるいと言う者もいる。俺はあまり出力を気にしなくていいからな」
毎回全力で試合できる感じか。いやしかしだよ? ずるいはおかしくない?
「ずるいは暴論だと思います。だって生まれ持ったもの使ってるだけでしょう? フェリックスさまの体質は禁止されていないんですよね?」
「されてはいない」
「じゃあ好きに使っても文句言われる筋合いはないはずです」
「その通りだ。俺もいちいちそんなことは聞いていられない。毎回全力で闘うのみだ」
おお、流石だフェリックスさま。人の言うことは気にしないのが一番ですよね。自分は自分。そんな感じで、気まずさもなく飲み会は終わった。次回に会う日も決めた。うん、これならこれからも交流を続けられそうだ。よかった。




