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【39】そういうタイミングだった?

「ルドルフも狂病だったということか?」


「えっと。じ、実はそうです。でも発症前でした。正体がばれた当初に、念のためで殺したんです。その時、ぐったりしていたので」


「……はあ。まあ、俺には当然黙っているか。君の正体にも繋がることだしな」


ひええ。本当に隠し事多くてごめんなさいの気持ち。結局、フェリックスさまは意識ある状態で殺すことになった。大丈夫かな? 一応、きつく感じたら言ってほしいと伝えておいた。頻度が増えれば、精神的に参ってもおかしくない。


殺す頻度だが、二週間に一度ということにした。この頻度なら、まず発症まで至らないはず。赤い煙がどれだけ出るかも要観察だ。ただなあ、気になることがある。数日前、フェリックスさまに会ったときは前兆がなかったのだ。それなのに五回目の狂病が起きた。急進行した原因は何? 私はフェリックスさまにそのことを情報共有した。


「フェリックスさま。この数日で何かありませんでした?」


「……特にないはずだ」


「誰かから食べ物などをもらったりは? あるいは常用している薬があるとか」


摂取させられている説の確認である。ない、とのこと。うーん。


「最近変わったことといえば、武術大会の予定があるから、少し忙しいくらいだ」


「疲れで進行するとか?」


「それは違うと思う。体力的には遠征に出ている方が消耗は激しい」


だよね。因果の関係で私が傍にいないと発症しないとはいえ、遠征直後に発症したことはなかったはず。つまり体力的な部分は関係ないとみていい。……だめだ、わからない。


「でもこれからは定期治療ですからね! 赤い煙の量とその間の行動を照らし合わせれば、いずれ原因がわかるはずです」


「俺としても、どういった行動を取ったかは逐一気にするようにする」


「お願いします。頑張りましょうね」


何はともあれ、フェリックスさまが前向きな姿勢を見せてくれてよかった。修復不可能な状態になったらどうしようかと。心の中で胸を撫でおろす。サシャ、とフェリックスさまが声をかけてくる。はい、何ですか?


「君を異性として見ている。君が好きだ」


「…………」


「俺に望みはないのだろうか?」


なぜ、今。そういうタイミングだった? 恋愛経験ないからわからない。フェリックスさまが答えを待っている。私はそっと飲み物に視線を落とした。数秒の時間稼ぎ。その間、思考を素早く行う。色々な物事を天秤にかけた。答えは出た。フェリックスさまと目を合わす。


「申し訳ありません。フェリックスさま」


「理由を聞いても?」


「私はフェリックスさまに恋愛感情がありません。身分差に加えて温度差もある関係は、幸せになれないと思います」


「……わかった。突然すまなかったな」


本当に突然でしたね。という内心の心境はたぶん顔に出ていた。


「ただ、言っておきたかったのだ。君なら断るだろう。それもわかっていた」


「フェリックスさまは友人として、素晴らしい方だと思っています」


私には、彼と同じ情熱はない。それを相手は察している。それなのに遠回しに返事するのは失礼に値する。相手が答えを求めたなら、正直に返すしかない。それが誠実だ。


「まだ諦めきれない。気持ちを持ち続けるのは許してほしい」


「それは、もちろん……」


「恋愛を示唆する行動は控えるようにする」


フェリックスさまの心は彼だけのものだ。それが行き過ぎた行動をとらないなら、私に言うことはない。それからは先ほどの告白など幻のように、これからについて話し合った。フェリックスさまの想いには、答えられない。でも彼の幸せを望んでいるのは間違いない。せめて、彼の狂病は完治させたい。その思いが胸に強くある。

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