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【2】助かるけど、もっと早く対応してくれ。

で、まあとりあえずやることやっているわけである。騎士さまの心臓にグサリとしている。え? 普通の人はそう簡単に人を刺さない? それはそう。サラエルさまが言ったことは図星だ。私は人を罪悪感なく刺せる。そういう人間である。それをやればただの殺人鬼と理解しているため、私欲でやらないだけ。私はこの行為を殺しと定義している。実際殺すわけではないが、やっている感覚はほぼ同じだろう。閑話休題。


最初はそりゃ大変だった。いやだって、突然騎士さまをグサリとしたらただじゃすまない。まだ私のことが知れる前はグサリとしたら即逃亡、という流れだ。完全に通り魔。足は相当速いのでね。死ぬ気で走れば撒ける。


一人でいる場合はいいんだけど、狂病者はだいたいがある程度偉い人だ。団長か副団長クラス。だから部下が一緒にいることが多い。目撃者がいる前で心臓グサリは、捕まれば最後牢屋コースだ。神様が言う通りにしただけと言っても最初のうちならキチガイ認定必須だったろう。


そういうわけで、まずはひたすら実績をつくった。狂病者を見つける→心臓グサリ→狂病者が治る。この流れを認知してもらう必要があった。馬鹿なりに考え、逃げる際に筆跡を誤魔化した紙に『私は御使い。病を殺した』という旨も書き捨てた。これは十分な説得力を持っていた。どんなに元が清廉な騎士さまでも、狂病が発症するとたちまちクズ野郎かクソ野郎になるのだ。


例として私が最初に見つけた狂病者は、黒い霧をまき散らしながら女性の腕を掴んで下品な言葉で罵っていた。戸惑う部下に対し、輪姦を提案していた。許せん。というか、普通はこんな場面に遭遇しない。これが因果の導きってやつ? グサッと刺して抉ったら、真っ赤な煙が噴き出した。さっと逃げた。本当に殺してはないよね? と変装を解きこっそり様子を窺うと、さっきの騎士さまは深く頭を下げて女性に謝罪しているところだった。大丈夫だった。


そうこうしているうちに、騎士さま側から私に接触しようとする動きが出だした。狂病という存在とその治療法が、騎士さま内で徐々に認知されてきたのである。なんかサラエルさまが信託も下したらしい。助かるけど、もっと早く対応してくれ。そうすれば私の通り魔の経歴いらなかったでしょ……。


この使命をやり遂げるに際して、私という存在を開示する気はない。過去に神の宣旨を受けた者は、救世主として祀り上げられたそうだ。存在を公にされたら、今の生活ができなくなる可能性がある。無理。やめてほしい。私は猟師なのだ。お金持ちでも偉くもないけど、この生き方に誇りがある。だから私は主張した。


「狂病は治します。その代わり、決して私の正体を探らないでほしいです。それが守れないなら、私は御使いとしての使命を放棄します」


騎士さま側はこれを呑んだ。今は、自分で狂病者を探す必要がなくなった。狂病疑いのある騎士さまの部下が、通信石を通して私に相談するようになったのである。ちなみに狂病者は自覚症状がないようだ。ある日突然人が変わるらしい。厄介だ。こうして、私は殺しの御使いとして使命を果たしているわけである。特別に王都内の移動ゲートを使う許可ももらったため、最近は移動短縮もできて良きである。仕事は迅速かつ、正確に。

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