↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/64

【1】「いや突然刺したら捕まりますが?」

私の話をしよう。私は平民だ。しがない猟師の家に生まれた茶髪赤目女である。女ながら父に猟師として教え込まれた身。今は独立して王都外れにある森近くの小屋で暮らしている。獲物を狩っては腹を満たし、肉や毛皮の少々を金に換えて細々生活している。そんな私がなぜナイフで人をグサリと刺すようになったのかというと、これが摩訶不思議な話。寒さ厳しい2月のある日、神の宣旨とやらが降ってきた。経緯は以下のとおりである。


『猟師のサシャ。貴女に御使いとしての使命を授けます』


「突然なに? 誰ですか?」


『我が名はサラエル』


「え。この世界の神さま?」


ちなみに私、信仰心はそんなにない。困ったときにはサラエルさまに祈ることもあるが、基本は適当だ。それなのに突然のご指名? と首を傾げる。


『貴女は大厄災を知っていますね?』


「あ、はい。号外がいっぱい出ましたから」


今から1年ほど前か。この王国から少し離れたところに突如として、魔界ゲートなるものが出現。そこから黒い霧をまとう魔物がぞろぞろ湧き出て、大変な人害を齎した。これを大厄災という。


国王陛下はこの危機に怖気づくことはなかった。魔界ゲート破壊を目的とした実働騎士団を編成。実働騎士団は皆若いが、実力者揃いだった。彼らは剣と魔法を駆使して勇敢に立ち向かい、ついに魔界ゲートを破壊。ここらは再び平和になったわけである。めでたし、めでたし。なお私はしがない猟師なので、この件は噂や号外で知るのみ。大厄災のときも今と変わらず鹿やうさぎ、リスを狩る日々であった。


『当時、大厄災討伐に参加した多くの騎士が、魔物の出す黒い霧を浴びました』


サラエルさま曰く、黒い霧は魔界から湧き出た瘴気だとか。体内のマナと結合し、人格を狂暴なものに変えてしまうらしい。凡庸な騎士さまはこれを浴びても特に害はない。体内のマナが、病気を発症するほどないからだ。そのうち霧が自然に抜けるという。一方、名が知れた者や特別な才のある者は大体がマナの多い者。こういう人達が通称「狂病者」としてこれから発症し出すとか。末期にまで至ると、なりふり構わない殺戮人格になるという。こわ。というか、これからなのか。予言? 潜伏期間長いね。


『貴女には、その病にかかった騎士を治してほしいのです』


「なぜ私? 信仰心とかほとんどないですよ」


『貴女なら、それを使えるでしょう』


ふと気づくと、両手がナイフを持っていた。どこにでもありそうな実用ナイフ。刃渡りは20cmほど。特徴があるとすれば、刀身が驚くほど真っ白なこと。


『そのナイフで、狂病者の心臓を突き刺すのです』


「いや突然刺したら捕まりますが?」


『その聖物は人の身を傷つけません。刺せば赤い煙が噴き出して、たちまち病が治るでしょう』


「そうは言ってもですね……」


『ちなみにそのナイフは処女しか使えません。使命を完遂するまでは処女を捨てないように』


「ちょっと!」


なんてこというんだ。いやだから、何で私!?


『貴女は人を刺すことに躊躇いをもたない人間です。むしろ、人を刺してみたいと思っている。獲物のように心臓を抉ってみたいと思っている』


「……」


『貴女の目に、黒い霧が見える力を与えます。発症者は救いを求め、因果の導きにより貴女と出会うでしょう。さあ、この世界を魔の手から救うのです』


「超展開すぎる」


とそこで目が覚めた。なんだ夢かと思ったら、両手で例のナイフを握っていたわけ、はは。知らない知らない、とナイフを布で包み、棚の奥に入れた。それから日常を開始した。一日を過ごし、就寝。夢を見た。サラエルさまが出てきた。


『言うことを聞きなさい。本当に大変なことになりますよ』


目が覚めた。戸棚の奥に封印したナイフが手元に戻っていた。呪いか? 以上、回想終わり。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。