【31】「武術大会、絶対に見てくださいね!」
外乗の三日後、私は道中で偶然エミルさまに会った。挨拶だけのつもりだったけど、食事に誘われた。珍しいな。別に嫌ではなかったので了承する。適当な店に入って食事する。まだお昼なので、酒は飲まない。
最初は雑談をしたり、改めてクロの森の件の感謝を述べたりした。フェリックスさまが森に同行する方法を提案したのはエミルさまだからね。あれは私たち猟師に人的被害が出るかどうかの大きな分岐点だった。ルドルフさまによるとフェリックスさまの心境変化の分岐点でもあったらしいけど。エミルさまは苦笑いしつつ、色々大変ですよね、と返事する。やっぱりエミルさまもかつて何かあったのかな? 雰囲気からして融通利かせてくれそうだもんね。
「そうだ、サシャさん。武術大会の開催はご存じですか?」
「はい。この間フェリックスさまに開催日を教えていただきました」
あと1か月後くらい先に開催だっけ。騎士さまの中でも有望な方が闘う大会だ。三回優勝すると殿堂入りになって白銀勲章がもらえるんだよね。滅多にもらえる人いないらしいけど。なお、去年は大厄災の件があったから開催しなかった。魔界ゲート討伐は去年の夏頃には完了していたけど、後始末や犠牲者の弔いなど。そういうので行事を去年は控えていたのだ。
今年はフェリックスさまも参加するらしい。フェリックスさまは予選突破間違いなしとのこと。試合内容は中央広場に設置されている巨大な映像板で上映され、一般の者も見られるようになっている。すごい人混みだから、ずっと見るのは大変だ。
ただなあ、ちょっと気になることがある。この大会の参加者って、魔界ゲート討伐者の参加比率が高い。当たり前だよね。参加者は有望な騎士さまだから。……大丈夫かな。大会中に狂病発症する人いない? フェリックスさまにも言えることだけど、これについてはちょっと覚悟を決めている部分がある。……流石に、五回目を隠すことはできない。私はそう考えている。ルドルフさまと話をしないと。
「俺ら騎士たちは、普段からよく鍛錬試合をするんですけどね。武術大会本番は気合の入りようが違いますよ!」
「普段の鍛錬試合って、騎士団の中でやるものです?」
「いえいえ。同じ人とばかり試合すると、相手の癖とか覚えますしね。別の騎士団の人と合同が多いです。相手の騎士団も都度変わりますし」
「へー」
「団長や副団長クラスの鍛錬試合は、毎回すごく見ごたえありますよ!」
確かにすごそう。普段からマナとか飛び交っているのかな……。前回の武術大会はチラ見した程度だけど、本当に人間同士の闘いなのか疑問に思ったものだ。なんか爆発したり光の波動が出たりしていたような。
「武術大会、絶対に見てくださいね! 団長を応援してあげてください!」
「はい、それはもちろん」
勝っても負けても、怪我だけは気を付けてほしい。無事をサラエルさまにお祈りしないとね。そんな思いを馳せていたらである。
「あの、サシャさん」
「はい?」
「団長は本当に素晴らしい方なんです」
「……はい、存じています」
「サシャさんは、正直言って団長をどう思っていますか?」




