【27】私の答えは、彼には残酷だ。
なんか衝撃の事実を察した翌日。私はフェリックスさまと喫茶店でクロの森の件について話をした。ちなみにフェリックスさまは非番なので私服だった。
詳細は語らないが、これなら私たちに被害が降りかかることはない印象の提案だった。ただ騎士さまに少し負担があるやり方なので、すぐに議題が吞まれるかという感じの内容だ。私的にはこの提案ならば、魔物の放棄はだいぶ予防できるのではと思っている。とりあえず、今の話を猟師仲間にもして意見を仰ぐこととする。私は深々頭を下げてお礼を伝えた。
「フェリックスさま。この件は持ち帰って仲間たちと相談するつもりですが。私の意見でいえば、とても助かる提案です。本当にありがとうございます」
「頭をあげてくれ。元々、君たちは一方的な被害者だ。それに提案内容をまとめるのに随分かかってしまった。すまない」
いやいや。日々の多忙なお勤めとは別に私たちのことを考えてくれるなんて。本当に感謝しかない。この議題が実際に可決されるまでは時間がかかるかもしれない。それでも今までのことを考えれば、とんでもない前進だ。私たち猟師がクロの森で討伐隊を組むことも、いずれなくなるかもしれない。
お菓子を食べながら、私は心からの微笑みを浮かべた。それを見つめるフェリックスさまの目に優しさが滲んでいる。決して下心は見えない。だが静かな情熱がある。そういえば、以前より距離感が近くなっている。うーん、フェリックスさまらしい正直さだ。隠すのが下手なのか隠す気がないのか。どっちだろ。
私は決して鈍感ではない。男がこのような表情で女を見つめるのに、何もないとは言えない。昨日の接触はさりげないもので、しかも一瞬だった。だけど、普段それをやらない人だからこそ、意図は明確だ。私は自分を勘違い女ではないと思っている。つまり、フェリックスさまは私に多少なりとも恋愛感情を持っている。
いや、なんで? どこで好きになった? 趣味が悪すぎませんかね? 相手は貴方をすでに四回殺していますよ。まあその事実を知らないのだけど。話を終え、喫茶店を出た。
「この後、まだ時間はあるか? 以前見たいと言っていた劇の一団がそろそろ中央広場に来るらしい」
「本当ですか? 是非行きたいです」
「一緒に行こう。原作の本は読んだが、俺も劇は見たことがない」
いいですね、と言いながら連れ添って歩く。そう、何も気づいていないふりをする。気づくということは、フェリックスさまの想いに回答するということだ。私の答えは、彼には残酷だ。それに、私はまだ彼の傍を離れられない。友人としてフェリックスさまの狂病を治したい気持ちは本当だ。一緒にいることでその手掛かりを掴めるかもしれない。




