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【26】マジですか。どうしよ。

イノシシ狩りからさらに一週間以上が経った。そろそろ9月も半ばである。時の経過って早いね。私はフェリックスさまの騎士団の人たちとお酒を飲んでいた。帰り際に誘われたのである。飲みすぎないように、と例のことがあってから言われるようになった。はいもちろん。というか前回も飲みすぎてないし、酔ってなかったけどね。私はザルです。


フェリックスさま、今日は機嫌がよさそうだ。いいことあったのかな? 聞いてみると、彼はつまみを食べながら言う。狂病が治ったかもしれないと。……あー。


本当ですか? と微笑んで聞きながらも、内心汗をかいている。すみませんフェリックスさま。それは一回分、狂病の認識ができていないだけ。たぶん治ってない。そして再発の原因もいまだわからず仕舞いである。どうしよ。


「最後に発症してから3か月が経過している。今までは2か月くらいで再発していたのだが、今回はまだ何ともない」


「それは、良かったですね!」


「もちろん、まだ油断はできない。再発はあるかもしれない。だが、頻度が落ちているということは、いずれなくなる可能性があるということだ」


うわわ……。近くで話を聞いていたエミルさまが勢いよく同意した。もう起きませんよ! と力強く断言している。一方、ルドルフさまは縋るように私を見ている。すみません。何もわかっていなくて。


くそう。これでもフェリックスさまのことは真剣に考えている。私が殺した人数は随分数を増やし、50人を超えそうだ。最近ちょっと頻度が多めで一気に数が増えた。そしてやっぱり、再発者はフェリックスさまだけだ。これには必ず、何か理由があるはずだ。例外には例外たる原因がある。サラエルさまの言葉を思い返す。何かヒントはないか? 


……サラエルさまは、ナイフで刺せばたちまち病が治ると言っていた。この言葉を真とする。つまり、刺した段階で完治しているはずだ。フェリックスさまも刺す度に完治していると考えるのが普通。つまり、これは再発ではない? 完治してからもう一回かかり直しているということ?


いやでも、魔界ゲートはもう破壊されたよね。魔界産の魔物も全部滅ぼされたはず。つまり、外的に黒い霧を浴びる要因がないはずだ。それに加え、フェリックスさまの発症は2か月程度という一定の周期を保っている。うーん。ううう。


「サシャ? どうした? 気分が悪くなったのか?」


「は!」


うんうん考え込んでいたら、フェリックスさまに心配された。何でもないです、とにこにこする。あまり無理するな、と労わるようにそっと手を握られた。ん? 私が手の方を見ると、フェリックスさまはすぐに手を引っ込める。……ん? 思わずフェリックスさまの顔を見た。あれ、緊張している。


「体調が悪いなら、これ以上酒を飲むのは止めた方がいい」


「はあ」


いや別に元気です。ちょっとぼうっとしてただけ。そう伝えておいた。それなら、とフェリックスさま。


「明日会えないか。クロの森の件について話がある」


了承しつつフェリックスさまの様子を窺う。先ほど引っ込めた手はもう彼の太腿の上に置かれている。拳を握っていた。こちらを見る目に、微かに熱が籠っている。きっと酒のせいだけではない。……え、まさか。私はそっとルドルフさまを見た。ルドルフさまが私の視線に気づいて、口をもごもごさせた。マジですか。どうしよ。

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