【24】どうか私に知恵をお貸しください。
サラエルさま、何か知っているなら教えてください。フェリックスさまの再発はどういうことですかね? と思いながら日々眠りにつく。だが、サラエルさまは夢に出てくることはない。駄目か。自分で考えろってこと? そんな薄情な。
なお、四回目の殺し(暗殺)の翌日、フェリックスさまと会った。案の定落ち込んでいる。飲みすぎのせいか顔色も悪いし……。酔い潰れて醜態を見せたことを憔悴しながら謝罪してきた。うっ、滅多に働かない私の罪悪感が刺激される。あれはどう考えても飲ませすぎた私が悪い。というかやったこと犯罪だしね。
「私こそ、酔いに任せて無理に勧めてしまって申し訳ありません……。一緒に飲むのが楽しくて、羽目を外しすぎました。もう絶対こんなことしないようにします」
しおしおとしょぼくれて謝った。割と本気である。緊急事態だったとはいえ、悪いことをした。お互いにお酒は気を付けて飲もうという教訓を確認し合い、この件はこれ以上掘り返さないことにした。……どうやら、殺されたことに全く気付いていないようだ。上手くいったなあ。
ということがあってから早くも二週間が経過。その間、3人を殺した。はいはい、いつもの。今日殺した人は女性の神官さまだった。普段は教会に所属する神官さまだが、魔界ゲート討伐の際は精鋭が王国騎士さまの立ち位置で配置されたのだ。今は教会に配属が戻っている。
というわけで行き先は教会だった。黒い霧を噴き出す小柄な女性が、口を塞がれて身体を持ち上げられていた。じたばた暴れている。取り押さえているのは知的そうな雰囲気の長身の男性だ。この人も格好からして神官さまだ。
私が来たのを見ると、取り押さえている神官さまが会釈してきた。あ、どうも。私も会釈する。さてと、とナイフを取り出した。どうやら刺しやすいように準備してくれたようで、女性の神官服の薄い重ね着衣装は引っぺがされている。助かる。位置がずれると無駄に苦しめるかもなので。私は殺しをするけど、苦しめたいわけではない。
いざ、と思った瞬間。男性の神官さまが呻いて肩を跳ねさせた。あ、手を嚙まれたのか。一歩下がる。安全確保。女性の神官さまが金切り声で叫ぶ。
「汚らわしい手でよくも私に触れたわね! 気持ち悪い! 離しなさいよ! 絶対許さない! 貴方なんかね……っううう!」
「御使いさま、お願いします」
今一度女性の口が塞がれた。ああ、今回は罵倒系ね。魔法とか打ってくるタイプじゃなくてよかった。口を塞いでいたから詠唱防止かと。暴れているけど上半身はしっかり固められている。これなら問題ない。グサリと一刺し。真っ赤な煙が噴き出した。終わりました、と伝える。
いつもはさっさと帰るが、今日はちょっと足が止まった。十字架を見る。サラエルさま、どうか私に知恵をお貸しください。フェリックスさまが五回目の狂病を起こす前に、何か天啓をください。
泣き声がする。女性の神官さまは正気付いたようだ。違うの、違うの、と取り乱している。先ほどまで無表情に女性を取り押さえていた男性神官さまは、彼女の身体をしっかり抱き寄せ、背中を撫でていた。あまり見るものではない。私は無言で教会を後にした。




