【23】私の犯罪歴は増えたけどね。
「やっていることは立派に犯罪ですよね」
「確かに」
という会話をしながら、フェリックスさまを宿屋の一室に放り込んだ。酔いつぶれたフェリックスさまが重くて運べなかったため、ルドルフさまが部屋をとったという体でいく。念のためルドルフさまがフェリックスさまを揺すって反応を見る。……寝ている。声をかける。……起きない。
「大丈夫そうですね。証拠が残るといけないので、服は脱がせないと」
ルドルフさまがフェリックスさまの上の服を脱がせた。うわー。ルドルフさまもいい身体だったけど、フェリックスさまも流石だ。は、あまり見ちゃダメだ。ベッドに寝かせてもらう。さてと、と私はナイフを取り出した。んー。仰向けの相手だからナイフは右手。ぐったりと寝入っている獲物を見下ろす。胸が静かに上下している。私は位置を調整しつつ呟いた。
「明日、二日酔いがひどくないといいですね」
グサリと心臓を突き刺した。寝ているからかな。前よりゆっくりした脈動に感じる。ぐっと心臓を抉る。眠った身体が一瞬、ショックを受けたように跳ね上がった。あ、と本人の意志のない言葉がフェリックスさまの口から零れる。いつもの朗々とした響きがない、ぼやけた声だった。真っ赤な煙が噴き出す。これで四回目。ナイフを引き抜いた。起きる様子はない。寝入っている。よし、計画通り。
「上手くいきました」
「サシャさん、今日はありがとうね」
「いいえ。それより次の発症が起きる前に、何か考えないと」
「また話し合おう」
フェリックスさまの狂病は2か月前後の周期くらいで来ている。次の猶予までに何か原因がわかればいいのだが。それにしても。
「フェリックスさま、これが本当の暗殺だったら死んでますよね。こんな簡単に今回の計画が成功して、大丈夫かな……」
「まあ、流石に知らない人相手にはこんなことにはならないよ」
言いたくないけど、身内にも気を付けてくださいね。いつ寝首をかかれるか。いや寝ている人にグサリとやった私が言うことじゃないか。さきほどまでの獲物を見つめる。何が起きたのかも知らないだろう。深い眠りだ。
とりあえずこれで、フェリックスさまが今すぐ騎士業危機に陥ることはない。ふう、よかった。私の犯罪歴は増えたけどね。お酒は適量を楽しく飲もう。本来、絶対に混ぜ物なんてダメ。いつかこの件がばれて訴えられたらどうしよ。
「じゃあ私は帰ります。フェリックスさまに今度謝らないとですね。調子に乗って飲ませすぎましたって」
「ごめんね、送れなくて」
「いえいえ。それじゃあおやすみなさい」
帰路を通りながら思考する。フェリックスさまのことだ。酔い潰れたと知れば、気落ちするだろう。そして次はこうならないよう気を張るはず。そもそも今日の手は健康面から見ても連発は控えた方がいい。もう同じ手は使えない。うーん、どうしたものかな。




