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【14】これは私たちの問題だ。

「……何? 捨てた?」


「フェリックスさまは魔物をペットとして飼う人がいることはご存じで?」


ここまで言えば察するだろう。彼は息を呑んだ。そう、たぶんそれが正解。お金を持て余したどこかの誰かさんが魔物をペットとして飼うことはまあまあある。それ自体は別に否定する気はない。ちゃんと管理さえしてくれればね?


色々な理由が考えられる。大きくなったら可愛くなくなった。思いのほか餌代がかかる。躾に失敗した。こういう理由でいらなくなった魔物のペットを、処分場よろしくクロの森に捨てるのだ。なお、これは初めてではない。今までにもあった。ここまで推定体長が大きいのは初めてだが……。フェリックスさまが声に怒りを滲ませる。


「それが本当ならとんでもないことだ。今までにもあったと? なぜ通報しなかったのだ?」


「通報の意味がなかったからです」


「は?」


「森に魔物を捨てるのは、違法に手に入れたパターンがほとんど。飼育魔物の管理番号なんてありません。あっても焼き鏝で消されている」


つまり、証拠がない。外から入ってきたと言われて終わりだ。私たちだってかつてはできる努力はしてきた。森に魔物が出たと訴えた。見間違いだと言われた。その目で確認してくれと言った。別部署に頼めとたらい回し。殺した魔物の死骸を突き出し、私たちなりの考えを述べた。今さっきフェリックスさまにした話を。


だが向こうは調査すると言ってそれきりだ。あるいは、ペット放棄を禁止する張り紙をする程度。そもそもこれは単独犯ではない。複数人がやっている。その大体が貴族さまか大金持ちさんだ。


「俺がこの件について上官に意見しよう」


「その上官が捨てていたらどうします?」


「な……!? そんなわけ」


「わかりませんよ。そして大事にしすぎれば、私たち猟師は居場所を失うかもしれません。結論として、私たちが自分で何とかするしかないのです」


人は大別すれば二種に分類される。いい人か悪い人かだ。その境界は人によって線引きが違うだろう。ただ言えるのは、この二種はどの立場の人間にも等しくある概念だということ。私にとってフェリックスさまは、いい騎士さまだ。


一方、同じ貴族さまや騎士さまに悪い人がいることも事実。一目だけではそのどちらか区別することはできない。運悪く悪い人に目をつけられれば大変だ。私たちは明日にでも魔物の討伐隊を組みます、と宣言する。フェリックスさまが私を見る。言いたいことはわかるので答えた。


「もちろん、私も討伐に参加します」


「危険だ!」


「わかっています。ですがこのままだと、クロの森がどんどん食い荒らされてしまう。私たちの生活の場がなくなるのです」


「俺が同行しよう。君の言う大きさの魔物くらい、あっという間に討伐できる」


「駄目です。フェリックスさまが業務中に魔物を倒すと、報告しないといけませんよね?」


「……」


だってこの人、自分の狂病もいちいち律儀に報告する堅物だ。騎士業として活動した場合、その内容を報告するだろう。今回のことを内密にこっそり処理、という融通を利かせてくれるとは思えない。もしできるならお願いしたかったんだけどね……。でもそれは彼の清廉な騎士生活に泥を塗ることになりかねない。これは私たちの問題だ。人様を巻き込んではいけない。


「大丈夫です。討伐は大人数で行いますから、私が怪我する可能性はあまりないかと。今までも二回ほど参加しましたが、私はほとんど活躍の場がありませんでした」


「俺に何か、できることはないだろうか……」


「無事に魔物を狩れたら報告します。その時にご飯奢ってください。武勇伝を語りますよ」


フェリックスさまが深刻な表情で黙ってしまった。うーん。話さない方がよかったかな。だってフェリックスさまにできることないし。こんな話聞かされるだけなんて気分悪いよね。でも私も物言いたい気分だったのだ。これをやった犯人に対する怒りの感情は隠せない。それをフェリックスさまにぶつけてしまったようなものだ。反省。愚痴言っちゃって申し訳ありません、と締めくくった。だめだ。狂病再発の話題以上に表情が暗かった。あちゃー。

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