【12】だって殺している当事者なので。
最近1人殺してわかったことがある。その人は偶然見つけた巡回中の騎士団長さまだった。一団に貴族出身者の飾りはなかった。平民出身の叩き上げらしい。同じ騎士団内で貴族出身者と平民出身者がごちゃまぜだと、騎士団内で格差ができる可能性がある。だから出身ごとに騎士団も区分化されているそうだ。
なお平民出身だろうが騎士団長までいったのなら、その地位は他の騎士団長と同等。当然ながら平の貴族出身者より偉い。そういうとこは結構しっかりしているようだ。それでも色々問題はあるらしいけどね。やっぱり出世が厳しいのかな。これは以前フェリックスさまが教えてくれたことである。
その平民出身の騎士団長さまから薄っすら黒い霧が出ていたのだ。でも見た限り、普通の様子に見えた。部下の人との会話にもおかしいところはない。最近裏路地の方で違法取引があるという噂だから、念のため見回ろうと言っている。うーん、健全な言葉。巡回騎士さまたちの後をつける。彼らが人通りの少ない路地に入ったところで行動を開始。
辺りを窺いつつ、いつも携帯している殺人衣装に身を固めた。認識阻害のフードは顔を隠すだけではない。気配をばれにくくすることもできる。便利だ。完全に視界に入っていると効果ないけどね。騎士団長さまを不意打ちでグサリ。心臓を抉った。たちまち真っ赤な煙が噴き出した。発症者とほぼ変わらない煙の量。これは、発症直前だったとみていい。突然の通り魔出現に怒鳴り声をあげかけた部下たちだが、煙を見て状況を察したらしい。動揺している。
「な……!? まさか団長が狂病者!?」
「だけど、普段と変わらない様子だったぞ……!?」
私は言う。
「発症直前だったようです。これで大丈夫なはずです」
ささっと逃亡。そう、発症後だけではない。発症直前の段階で黒い霧が身体から出るのだ。今までは大体が連絡もらってから行くパターンだったからね。ここに来てようやく、まずい状況の判別もできるとわかったのだ。
つまりフェリックスさまの発症直前に会えれば、発症前に殺すことができるのである。ようするに再発前提の対策だが、発症前に殺せば実質予防だ。わざわざ発症報告しなくてもいいかもしれない。この件はルドルフさまに相談する予定だ。私は食事を終えたフェリックスさまに言う。
「フェリックスさま。きっと病気は治ります」
「うむ……」
「ルドルフさまからちょっと聞きました。色々な噂が流れて大変だそうですね。でも私はそんなこと気にしていません」
だって殺している当事者なので。すみませんね。毎回グサグサと。
「今日は一緒に食事できてよかったです。元気そうな様子で安心しました。これからも良ければ話しかけてください。またお話したいです」
話す頻度が上がれば黒い霧も見つけやすくなるので。私の内心など知らないだろうフェリックスさまは、私のベタな励ましが効いた様子。いつもより口元を綻ばせて頷いてくれた。いやほんと、治せるといいけどな。身分差はあるが友人であるのは間違いない。私は彼の平穏を祈っている。




