表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/150

第74話 魔王と湖デートしてたら、そのままクリスマス計画が始まりました

本当に、心地いい雰囲気だった。


このまま外で――

そう、屋外で。


今の私は、もう日差しを浴びられる。


だったら――

こうして外で、ゆっくり過ごせるんじゃないかしら。


彼と一緒に、こうして穏やかな時間を過ごせる。


そんなことを考える。


……けれど。


私の思考は、そこで終わった。


ビュンッ!


ドカン!


「きゃははは!」

「きゃは!」


弾丸みたいな勢いで飛んできた双子が、魔王にぶつかった。


……ちょっと待って。

今の、絶対すごい勢いだったわよね!?


「大丈夫ですか?」


私の前にいた魔王が、勢いよく弾き飛ばされた。


けれど彼は、すぐに手を振りながら立ち上がった。


「問題ない」


そして双子を見る。


「お前たちは大丈夫なのか?」


双子は――


ぴんぴんしていた。


体がやたら頑丈だ。

……いや、頭が頑丈なのかしら?


この子たち、本当にすごい。


魔王を吹き飛ばしても、まったく平気だ。


「君たち!」


エリンが駆け寄ってきた。


本当は、父上に見つからないように魔王城へ戻る予定だった。


けれど双子は、父上の魔力を感じた瞬間――

さっきの約束を全部忘れて、ここへ飛んできた。


「僕は双子を連れて城へ戻ります。母上と父上は、ここでゆっくり休んでください」


エリンがそう言った。


けれど私は首を振った。


「いいえ。ここでみんな一緒にいましょう」


魔王と、もう少しロマンチックな時間を過ごせなかったのは残念だったけれど。


せっかく家族がそろったのだから。


暖かな日差しが降りそそぐ湖で、みんなでゆっくり休む。


◆◆◆


風が吹いた。


この場所の冬は、日本の冬とは違って寒くない。


しかも今は、正午を少し過ぎた時間。

一日の中でも、一番暖かい頃だった。


双子は湖の水が珍しいのか、水辺を横切るように飛び回っている。


シュバァァッ!


水しぶきが上がる。


まるでジェットスキーみたいだ。


すごい。面白い。


楽しそうに見ている私とは違い、エリンは心配そうな顔で双子を見守っていた。


……こほん。


私も、一応は心配している顔をしておいた。


「双子は僕がちゃんと見ています。母上と父上は、あちらで休んでいてください」


つまり――

二人で話してきてください、という意味だった。


エリンが作ってくれた機会だ。


私はそれをありがたく使うことにした。


魔王と並んで湖を眺めながら、昼の穏やかな時間を楽しんだ。


「本当にいい天気ですね」


私は、魔王がはめてくれた指輪を見ながら、ふと気になって尋ねた。


「創造魔術って、正確にはどんな魔法なんですか?」


こんなふうに宝石を作れるなら、あっという間に大金持ちになれそうじゃない?


そんな考えが自然と浮かぶ。


(きっと何か制約があるのよね。だから簡単には使わないんだわ)


この前、血液パックを作ろうとした時も、結局マハトラを通してライカン・スロープ村に頼む必要があった。


つまり、万能ではないということだ。


「それは……」


魔王は少し考えるような表情を見せた。


「もし王家の秘術なら、無理に教えてくれなくても大丈夫ですよ」


私は慌てて話題を変えた。


家系魔法は、その一族だけが共有する秘密。


つまり、最高機密みたいなものだから。


けれど魔王は、私に説明してくれた。


「この世界の五つの元素を用いて創り出す魔術だ」


「先祖がある存在と契約を結び、使えるようになったと言われている」


「ただし宝石や貴金属には制約がある」


「それ以外でも、私が具現化できぬものも同じだ」


聞いてみると、どちらかといえば錬金術に近い。


完全に無から有を生み出すわけではない。


生活用品などは比較的簡単に作れる。


だがダイヤモンドや黄金などの貴金属は、先祖の契約によって無制限生成が制限されているらしい。


(これ、ゲームの設定っぽいわね)


ゲームを作る時は、いろんな設定案を作るものだ。


その中の一つが、魔王家の力として形になったのかもしれない。


「そういえば、この指輪からあなたの魔力を感じます」


ほんのわずかだけれど。


確かに魔王の魔力が流れていた。


その瞬間――

私はいいことを思いついた。


すぐに、炎の魔人へ質問する。


答えは――


〈可能〉


だった。


確認した私は、魔王にお願いした。


「この指輪に、もう少し魔力を込めてもらえますか? そのあとで、魔力が外へ漏れないよう封印します」


「なぜだ?」


「もし外へ出る必要がある時、この封印を解きます。そうすれば、私の魔力が感じられなくても、この指輪の魔力で私の位置が分かるでしょう?」


魔王は頷いた。


「悪くない考えだ」


魔力は、いつか消える。


けれど、その時はまた補充すればいい。


「だが……」


魔王が聞いた。


「どうやって、あれほど完全に魔力を隠したのだ?」


「地下迷宮の魔人を使い魔にしました。その助けです」


まるで簡単なことみたいな顔で、私は答えた。


「……なんだと?」


魔王が勢いよく立ち上がった。


怒っている。


私はすぐに手を伸ばし、彼の首に腕を回した。


怒った理由は分かっている。


危険なことをしたからだ。


だから落ち着かせないと。


「安全だと確認してから行ったんです。心配させてしまったならごめんなさい」


「それに約束します」


「これからは必ずあなたに相談してから行きます」


そう言うと、魔王の怒りはようやく収まったようだった。


「それと、魔人の力で体内時計を変えて、体にシールドも張りました」


私が説明できる範囲だけ話す。


「興味深い」


魔王が言った。


「これは、あなたの魔法でそうなったことにしておきましょうか?」


魔王の名で発表すれば、余計な詮索も防げる。


「あなたの望む通りに」


即答だった。


ありがたい。


「それじゃあ、次はクリスマスツリーを探しに行きましょう!」


「それが次の予定です!」


せっかくの機会。


魔王を簡単に解放するつもりはなかった。


今日は日が沈むまで、デートするつもりだ。


◆◆◆


「エリン! 双子!」


私は子どもたちを呼んだ。


子どもたちはすぐに駆け寄ってくる。


「クリスマスの準備をするわよ」


説明すると、エリンと双子は元気よく頷いた。


そして――


私たちは家族みんなで、クリスマスツリーを探し始めた。


「これです!」


完璧だった。


まるで、


「私はクリスマスのために生まれました」


そう言っているような木だ。


「木を運ぶ部署ってありましたよね?」


以前、魔王城の部署を確認した時、造園部があった。


そこに頼めばいい。


でもツリーだけでは足りない。


(ジングルベルも必要よね)


蓄音機。


私の記憶をもとに、炎の魔人に再構成させれば作れるはずだ。


それを作って、魔王城に音を流せる仕組みを用意する。


魔力を電気の代わりにすればいい。


そうしたら、この大陸にも――

誰もが楽しめるクリスマス文化を広められる。


私の頭の中に、クリスマス計画がどんどん積み上がる。


「私に時間を使うって、約束しましたよね?」


私は魔王を見て言った。


クリスマス当日は予定を空けてほしい、という意味だ。


「私たち家族みんな、サンタクロースになるんです」


……と思ったけれど。


双子はトナカイになりたがるかもしれない。


いや、それは危険だ。


どこへそりを引いて行くか分からない。


結局、私も魔王も、エリンも双子も――

みんなサンタクロースになることにした。


そしてハンスを呼んで、ツリーの前で最初のクリスマス記念絵を描いてもらう。


屈強な魔王サンタ。

黒髪黒目で赤いサンタ服のエリン。

可愛い双子サンタ。

そして、私も。


その日が来るのが、今から楽しみだ。


◆◆◆


エリンは双子を連れて、魔王城へ戻った。


母上を父上のところへ押し出したことも。


勝手に城の外へ出たことも。


幸い叱られなかった。


父と母の雰囲気が、とても良かったからだ。


父は執務室へ。


母は自室へ。


双子はエリンが授乳室へ連れて行った。


「きゃあああ!」

「きゃはは!」


双子が踊る。


今日すごく楽しかった!


そんな意味だ。


「もう赤ちゃんかごに入りなさい」


「うううう!」

「うああ!」


双子が嫌がる。


けれどエリンに捕まった。


そのまま、かごへ。


カチッ。


自動でベルトが締まる。


「うだだだだ!」

「かあああ!」


必死にベルトを外そうとする。


けれど外れるはずがない。


「今日の遊びはここまでです」


双子は首をぶんぶん振る。


もっと遊びたい。


「これ以上騒ぐなら、明日は遊びません」


その言葉に――


双子の目が輝いた。


明日も遊ぶの?


じゃあ静かにする!


ようやく大人しくなった。


エリンはほっとした顔で、ベビーカーを押す。


「こお……」

「こお……」


いつの間にか双子は寝ていた。


本当は、かなり疲れていたのだ。


「双子をお願いします」


「はい、エリン様」


乳母たちに双子を預けた。


ようやくエリンは、心から安堵した表情になった。


エリンにとっても、今日はとても大変な一日だった。


本当なら、このまま部屋へ戻って休みたかった。


……だが。


どうしても確認しなければならないことがある。


エリンの目が鋭くなった。


なぜ――


人間の侍女の中に、巧妙に正体を隠した魔族が紛れていたのか。


母を探している途中だったから、そこまで詳しくは追えなかった。


だが、あれは見間違いじゃない。


どう考えても――


おかしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ