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第63話 封印の奥にいた炎の魔人は、想像以上に妙な存在でした

「コオオ……」

「コオオオ……」


双子は互いの翼を包むようにして、すやすやと眠っていた。


(今日はずいぶん疲れてたみたいね)


いつもより早く寝てしまった。

乳母たちの夜のミルクを飲んだ瞬間、ころんと寝落ちしたのだ。


どうやらエリンと、かなり元気に遊んでいたらしい。


楽しい夢でも見ているのか、

時々、翼がぶるっと震える。


昼間たくさん動かすと、夜もよく眠るみたいだ。


もしかして――


私が話してあげた「クリスマス」の夢でも見ているのかな。


子どもたちは、かなり楽しみにしていた。


ただし、まだ十二月の初め。


クリスマスまでは少し時間がある。


細かい内容は、

決まってから話すつもりだった。


……というか。


正直に言うと、クリスマスの話は思いつきだった。


イベント内容なんて、まだ何も決まっていない。


でも。


どうせやるなら――


派手にやりたい。


この世界でクリスマスを流行らせるなら、

最初のイベントがすべてだ。


「おやすみ」


私は双子の額にキスをして、部屋へ戻った。


明日から本格的に準備を始めよう。


……その前に。


一つだけ、やることがあった。


私を心配してくれている魔王には悪いけれど、

もう一度、封印区域に行く必要がある。


(うーん……また見つかったら、今度こそ怒られるかも)


少し悩んだ。


でも、どうしても確認したい。


それに――


今回の騒ぎの原因も、もう分かっている。


同じ失敗はしない。


(あの時、ちゃんと扉を閉めてなかったんだ)


魔王の執務室で報告書を見た瞬間、

心の中で「あっ」と声が出た。


ミッションをクリアしたのが嬉しくて、


最初に入った扉を

きちんと閉めたか確認せずに帰ってしまったのだ。


その後、地下を巡回していた魔族が


扉が開いたままなのを発見。


警報。

大騒ぎ。


……全部、私のせいだった。


(つまり、ちゃんと閉めれば大丈夫)


(余計な騒ぎにはならない)


よし。


今度こそ、ちゃんと閉めよう。


私は魔族たちに見つからないよう、

こっそり例の通路へ向かった。


(もう……ギルガオンのやつ)


(幽霊なんて言うから)


まだちょっと怖い。


もし天井から幽霊が出てきたらどうしよう。


私は足早に通路を進んだ。


今回は風の音も聞こえない。


……よし。


怖くない。


「無事到着」


前に見た石板と獅子像があった。


コンコンコン。


私は獅子像の頭を叩きながら叫ぶ。


「開けゴマ!」


……。


いや、特に意味はない。


一度言ってみたかっただけだ。


ゴゴゴゴ……


「おお」


やっぱり開いた。


前とまったく同じ光景だ。


まるでコピーしたみたい。


なら――


私はゆっくり中へ入った。


その瞬間、前と同じように台座の上から炎が吹き上がった。


「この場所に魔族が来るのは久しぶり……」


「こんにちは」


私は手を振った。


「……」


炎の魔人が沈黙した。


「えっと、炎の魔人さん?」


できるだけ笑顔で声をかける。


「……」


あれ?


固まった?


フリーズ?


ちょっと困るんだけど。


もう一度聞いた。


「炎の魔人さんですよね?」


「人違いですね」


「どうぞお帰りください」


「え?」


炎がスーッと消えかけた。


……逃げる気だ。


私は慌てて、炎の上がる台座へ駆け寄った。


「炎の魔人ですよね!」


帰すわけにはいかない。


確認したいことがある。


「あなた、自我ありますよね?」


「それに、この世界の仕組みも理解している」


彼もまた、


この世界がゲームだと知っている存在。


「さっきの口調」


「この世界の住人なら、そんな言い方はしません」


私が言うと、炎の魔人が言った。


「あなた……魔族ではないのですか?」


「あなたも〈超越者〉?」


「いや……魔族では不可能なはず」


「なぜ?」


炎の魔人はかなり混乱していた。


「やっぱり」


私の予想は当たっていた。


以前、魔王とこの封印を見たとき、


VRみたいなウィンドウが表示された。


そこに書いてあった。


管理者モードカスタマイズ

オートデバッグシステム(期間限定)


当時は意味が分からなかった。


でも今なら分かる。


私は勇者じゃない。


本来のイベント条件を満たしていない。


だからシステムが――


自動修復した。


つまり。


炎の魔人は


この場所のオートデバッグシステムそのものだった。


◆◆◆


炎の魔人が言った。


「あなたは……〈インナー〉のようですね」


「私と同じカスタマイズではない」


「え?」


インナー?


なにそれ。


「だから〈デバッグモード〉が作動してもペナルティが無かった」


「ペナルティ?」


「その情報は削除されました」


……政治家みたいな答えだった。


結局、何も分からない。


「帰ってください」


「私は期間限定イベントです」


「任務が終われば消えます」


「それまで、この場所を守るだけ」


「ええ……」


「ずっとここで?」


「それが私の運命です」


それは、さすがに寂しい。


私は少し考えた。


その時。


あのウィンドウがまた現れた。


私は手を伸ばした。


ビリッ。


電気が走る。


そして――


0と1の数字が視界を流れた。


(私……カスタマイズできる)


完全な管理者じゃない。


でも下位権限はある。


「あなた、消えなくていいです」


「ここで生きてください」


私は彼のコードを書き換えた。


期間限定削除

位置制限解除

義務イベント削除


パチッ。


変更完了。


まるでDNAを書き換えるみたいだった。


炎の魔人が呟いた。


「本当だ……」


「制約が消えた」


「あなたも、この世界で生きているんです」


「消えるのはもったいないでしょう?」


ただし条件。


「魔王城を壊さない」


「魔族を殺さない」


炎の魔人が深く頭を下げた。


「エステル様」


「新しい命をありがとうございます」


「忠誠を誓います」


「そこまでしなくていいです」


私は笑った。


「その代わり、お願いがあります」


ここに来た本当の目的。


「賢者の石のネックレス」


「あと四つください」


欲張っているわけじゃない。


これから必要になる子どもたちの分だけだ。


封印が復活するのを見て、私は気づいた。


つまり――


イベントアイテムは


もう一度もらえる。


要するに――


何度でも手に入るということだった。


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