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第82話 仲間の死

 「アバトはそうですね……。順位をつけるとするならば4位でしょうか。あなた様が1位。イミが2位。日輪が3位。アバトが4位。あなた様を抜かした順位が私の部下の強さランキンクにもなっております。私の予想ではいちばんの寵愛を受けているあなた様が武力でも1位になる予定なのですけど、聞いてますか?」


 「……。」


 「やっ。やっぱり力では私が1位だったんですね。えへへ。ありがとうこざいます!!」


 「褒めてはないんですけど……。」


 嬉しそうにするイミに対して呆れているキリだが、今はそんなことはどうでもいい。

 俺の頭はアバトが3位という事実を認めたくなかった。


 そもそも原物さんと戦った時、アバトは本気ではなかった上に、余裕を持って攻撃をしていた。

 そのアバトよりも強い人物が2人いるということが受け入れられない。


 仮にこの図書館なりでキリの弱点を見つけ、将来的に殺せたと考えてもそんな化け物が残っていればこの世界は崩壊へと近づいていく。

 てか、キリがいるからこそ暴走しないでいてくれてる可能性すらもある。


 神々も手出しをできないらしいし、このままほっとくことが一番の平和なのでは?

 だけど……。


 全く考えがまとまらないでいるので、キリの言葉をふりかえっていると、余計怖いことを思い出してしまう。


 「1位がイミ、」


 ってことは、今現在キリといちばん強い部下に俺は囲まれていることになる。

 キリのことだから俺を殺す事はしないと思うが、言動が未だ不明なイミがいる。

 俺が殺されることはないものの、みんなに何かしらの被害があるかもしれない……。


 俺は今まで以上に緊張し、唾を飲んことさえも忘れていた……。

 

 「あなた様、そんなに落ち込まないでください。どうしても落ち着かないというのでしたら私が抱きしめてあげます。抱きしめると幸せホルモンが分泌され、リラックス効果がありますよ。では、」


 「ちょっ。ちょっと待って。きっ。キリ様ずるいです……。」


 「武蔵様は私のものですのでしょうがないでしょ? それに、スキル的にはあなたと結ばれたらあなたが死んでしまうわ。」


 「そっ。それでもいいから、結ばれたいです!!」


 「こんなことになるのなら別のところで任務を任せるべきでしたね……。」


 キリはその場で頭を抱えているのだが、俺がキリにあってからこんなに困っているのは初め見る。

 そもそも、アバトは忠犬みたいな感じだが、イミは自分の感情が結構出ている。


 だからこそ、何をしでかすのか分からないのだ……。

 大丈夫だよね……。


 そんな不安からイミを見るのだが、イミは俺のことをキラキラとした目で見る上に少しだけヨダレが……。

 もっ。もしかして……。


 「いっ。イミは吸血鬼とか人を食べたりする種族じゃないよね……。」


 恐る恐る聞く俺に対し、イミは怒ったようにほっぺを膨らまし、その後腰に手を当てる。


 「そっ。そんな低俗な種族ではありません!! 私は元天使です。輪っかは消えてしまいましたが、キリ様同様その時の力は使えます!! 出そうと思えば羽ぐらいは出せますよ?」


 「天使……。」


 「そっ。それも、第一天使です。そうですね。かっ。簡単に言えば最高位の天使。最も神に近い存在といえば、ご理解頂けますか?」


 「そんな存在が……。」


 天使さえもキリの味方……。

 もしかすると日輪という者もそのような種族だとするのなら……。

 俺らの希望は本格的におわりだ。勝てる可能性なんて0。

 0.1すらも残っていない……。


 仮に魔王を殺せるぐらい強くなったところで、神、そして最高位の天使を殺せるまで強くなるとは思えない。

 俺たちはキリなどが描いてる世界で生きるしかない……。


 そう思った瞬間体の力が抜けその場で膝を着いてしまう。

 キリはイミから離れそんな俺に抱きつきながら背中を譲ってくれるが、俺の心は晴れることは無い。


 もう無理だ……。

 もう……。


 その絶望からか、静かな図書館でありながら近づいてくる足音さえも聞こえなかった……。


 「またサボってる。原物の目を盗んでやってきたかいが……。」


 背後から聞こえたいつものように俺のことをからかってくるベガの声。

 だが、その声最後まで言うことなく途切れてしまう。


 この途切れたことにどこか胸騒ぎがする……。

 俺は抱きしめられながら辺りを見るとイミがいなくなっていることに今気づいた。

 後ろを向けば多分ベガがいた痕跡はある。

 だが、だが、見てしまえば終わってしまうような気がしてなかなか目を向けられない。


 「きっ。キリ様、ゴミ処理完了です。」


 「?!」


 イミのその声が聞こえると、俺はキリを跳ね除けて後ろを向くがそこにベガの姿は無い。

 あるのは今までに存在しなかったなにかの残骸。そしてイミだけだ。

 俺はその残骸を見た瞬間とある、いや、最低なシナリオを描いてしまう……。


 もっ。もしかしてベガがあの残骸ならば……。

 そう感じると、肉片に見えるしよく見るも布のようなものも見える。

 いちばんうえに少し白い布……。

 あれはベガが今日来ていたワンピースじゃないか?


 おい、嘘だろ……。

 嘘だと言ってくれよ!!


 徐々に視界がぼやけてきて、目を擦ると涙が出ていた。

 拭いても拭いても拭うことができない。


 ベガ……。


 「イミ。冷静さを失うなと天界の時から散々言ってますよね!!」


 「じっ。実際に邪魔なものが目の前に現れたら殺したくなりますよ。むっ。武蔵さんのことを好きなゴミもそうですが、からかっているのはもっと許せません。」


 「でも、武蔵様のお顔見てください。どんな顔をしていますか? 悲しい顔をしてる上に涙が止まらない様子。これがあなたが望んでいたことですか? 私は武蔵様のことを考えあえて殺していないのです。あなたはそんなことも分からないのですか!!」


 「もっ。申し訳ございません!! そっ。そこまで気が付きませんでした!! きっ。キリ様……。治してくれませんか? 今回は特別に!! なんでもします。なんでも!!」


 「イミ。とりあえず、後で話し合いしましょう。ここでの仕事は終了。去りなさい!!」


 「はっ!!」


 そしてイミはいなくなったのだが、そんなことに一切意識が行かず、ベガのことしか考えられなかった……。


 俺のせいで……。

 俺がいたから……。


 原物さんのことを巻き込まなかったら、今頃楽しい時間を……。


 涙の出過ぎで前があまり見えなくなり、そのまま気づくと体さえも起こすことができなくなった。

 傍から見れば土下座でもしてるように見えるかも知らないが、俺はただただ泣いていた……。


 「あなた様、今回は本当に申し訳ございません。禁忌ではありますが、生き返させていただきます。」


 キリは聞いた事のない詠唱を始める。

 俺はその間ただただ泣いていた。

 詠唱後魔法が放たれるのだが温かな風がベガだったあのろうものから流れてくる。

 いや、ただ温かい風じゃない。なんだか母性に包まれているかのような安心するような……。


 そのおかげかどうかは分からないが俺の涙も気づくと止まっており、顔をあげるとそこには今朝みた白いワンピースを着たベガの姿が……。

 温かな光を放っているが、俺はベガが生きてる嬉しさでそんなものは見えていない。


 「ベガ!!」


 俺は力の入らない足を引きずって立っているベガまで何とか近づきそのまま抱きついた。

 良かった。本当に良かった……。


 温かな光が消えると同時にベガはその場で座り込んでしまったので、俺の顔に膝蹴りが食らうことになったが、そんなことはどうでもいい。


 「良かった。本当に良かった!!」


 俺は顔を上げて崩れかけているベガの顔を見るのだが、ベガは酷く恐れていて、真っ青な顔に震える体。

 そして、声にならない「ヒュー」という音を出していた……。


 「あなた様、今回は帰らせていただきます。ベガさん。申し訳ございません。お詫びということでスキルを贈呈致しました。私の下僕が本当に申し訳ございません。」


 そういった直後後ろからの視線がなくなり、振り向くとそこには今まで通り何もない空間になっていた……。


 キリがいなくなると少しだけベガの震えるは落ち着いたが、未だに震えがすごい。

 俺は1度立ち上がるとベガはその場で全身の力が抜けたように倒れてまう。

 俺はそんなベガを抱きしめた。


 「大丈夫。大丈夫だから。」


 「うっ、うん……。うん……。」


 泣きながらそう答えるベガ……。

 そこに運がいいのか悪いのか原物さんがやってくる。


 「なっ。何があった!! 何があったんだ!!」


 「げっ。原物……。」


 原物さんが手を伸ばしたのがわかったので俺は抱きつくのを辞めると、原物さんはそのままベガに抱きついた。


 「大丈夫だ、大丈夫。安心しろ。」


 「うっ。ううううぅぅぅぅぅ。」


 その後、俺たちは1度集められ本日は中止になり宿屋に戻った。

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