第78話 原物の姿
イメージトレーニングをやれと言われたが、イメージ内では何故かチートスキルばかり使え最強。という現実とかけ離れたものばかり考えてしまい全く役に立たなそうだった。
唯一の得は気分がいい。
ただ、それだけだ。
……。
はぁ、いつまでも理想ばかり追いかけても強くならないし、気分転換に外でも行くか……。
どこかで原物さんとあったら、休憩がてら。でもいえばいいし。
そんな考えなしに出かけた俺だが、無意識にキリと原物が戦っていたあの現場に足を運んでいた。
未だ向かってる最中だが、家々の瓦礫が散乱していたり、泣いている大人や子供達が多く見受けられる……。
これも、俺のせい……。
いつしか下を向いてしまった俺だが、そこに聞いたことのある声が聞こえ始めた。
「すみません、俺のせいでこんなことになってしまって……。何かあればすぐに冒険者で原物と言ってもらえれば弁償でもなんでも致します!! みなさんは怪我とかないですか? あれば簡単な治癒で治しますが。」
原物さんは一人一人に頭を下げながら、魔法で家々を元の形に戻していた。
頭を下げる対象は大人だけではなく子供に対しても。
しかも、子供に対してはしゃがみ同じ目線になってから頭を下げる。といった普通の大人でもできないような対応……。
そんな原物さんの対応に肯定的な意見もあるが、もちろん否定的な意見もある。
そもそも、この場所自体原物さんが選んだわけではないのにその否定的な意見も真摯に受け止め謝る姿に俺の心は痛くなる……。
俺がキリと仲良くなったばかりにこんなことに……。
本当なら幸せな家庭を築き上げてる時間なのに。原物さんは、楽しい時間を過ごせたかもしれないのに……。
そんなことを考えると、現実に向き合うのが怖くなり1歩、また1歩と後ろに引いてしまう。
「やっぱり落ち込んでる。原物が言った通りだ。」
声がした方向に振り向くとそこには原物さんといつも一緒にいる少女の姿があった。
「あの時の……。」
「原物から私の名前聞いてないの? 私はベカ。ちゃんと覚えてよね!! それにしても随分落ち込んでるね。まっ。私には関係ないからどうでもいいけど。でも、原物がどうしても言えって言うから伝える言葉がある。えっと。 世界の理を恨んで、憎んで何になる? だって。まっ。鈍感な人には分からないかもしれないけどね!!」
世界の理……。
キリ……。
はぁ。なんでもお見通しなのかもな……。
てか、毎回毎回だがこのガキイライラさせるような言い方あえてやってんのか?
ほんとこいつと俺の相性は最悪。
よく原物さんはこいつと一緒に過ごせるな。と関心するぐらいだ。
「ふふ。やっぱり原物の言うことは正しい。」
「?」
「ストレスを抱えれば、嫌なことは薄れて元気になるって言ってた。あっ。それならお金盗んであげよっか? 原物に怒られるからもちろん内緒にしてもらうけど!!」
「俺はガキと遊ぶほど子供じゃないの。さっさとどこかに行きな。それと、原物さんにはありがとう。って伝えてくれる……。なんか面と向かって言うと恥ずかしいからさ……。」
「嫌だ。お礼は原物に直接いいな。あっ。それと、私の伝言で元気になったんだから宿屋までおくってってね。」
「一人で行けばいいじゃん。」
「原物から1人行動は禁止されてるの。それに、今原物のところに行くと本音が 消えちゃうでしょ。こんな子供を育ててるんだって知ったら……。だから、行くよ!!」
「でも、」
「いいの。一緒に行くよ!! これは原物命令!!」
「はいはい……。」
俺はベカを連れて宿屋に戻ろうとしたのだが、途中美味しそうな屋台に色々買わされ、ムイから念の為にと預かっていたお金を使う始末……。
またもや借金が増えたが、借りがあるからしょうがないか……。
まっ。感謝の気持ちってやつだな。
その後俺たちは宿屋に戻り、俺は原物さんに言われたイメージトレーニングに育んだ。
そんなことをしていたらあっという間に1週間が過ぎ……。
今日は気分転換に買い物でも行くか……。だいぶ自分と向き合えるようになってきたからな……。
と考えながら起床し、窓を開けて太陽を入れた途端ドアが急に開く。
慌てて振り返るとそこには原物さん?!
一体何事?!
もしかして、またキリが?!
「行くぞ!!」
「えっ? もう!! ちょっと待ってください、すぐに準備終わらせますので!!」
「何か間違えてねぇか? 俺が声掛けに来たのは次の街に行くぞってことで来たんだ。お前何と間違えたんだ?」
「それは……。」
「そんなことはどうでもいいか。いいからさっさと準備しろ。お前の仲間も外でもう待ってるぞ!!」
「えっ。はい!!」
ドアが閉められ、俺は慌てて着替え、部屋を出て階段を降りる。
あっ。鍵、鍵!!
忘れずに返さないと!!
そこでとあることに気づいてしまう……。
俺鍵閉めて寝たよね……。
それなのに何故原物さんは当たり前のように入ってこれたのか……。
……。
……。
って、そんな時間ないんだった!!
慌てて階段。降りていたら1段踏み外しそのまま階段を転がり落ちる
ほんと災難だ……。
「大丈夫?」
「だっ。大丈夫です。あっ。これ鍵です。ありがとうございました。」
「それはこっちのセリフよ。ありがとうね。頑張って!!」
「はい!!」
「あっ。ドジしてる。せっかく様子見たらこれだから……。」
「たまたまだからね。」
「嘘っぽい。いっつも注意が足りないから。原物やって来た。早く行くよ。」
「おう。」
ベカは俺の様子を見たらすぐに宿屋の外にいる原物のところまで行ったので俺も慌てて後をついて行く。
そこにはパーティーメンバーに馬車。そして単体の馬が一つ……。
「武蔵遅いよ」
「でも、これこそ武蔵。」
「気にしない、気にしないー。」
「さっ。行くよ!!」
「うん!!」
俺が先頭で馬車に乗り込み、シアとリアが手綱を握り馬に乗っている。
そして荷台には俺、ムイ、ユイ、ベカ。
武蔵は1人用の馬に乗っていた。
「出発!!」
門番で揉めることなくすんなりと外に出ることができた。
目指すはキリアーナ!!




