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第55話 父、娘に負ける

 「さすがに真剣だと、色々とめんどくさいから木刀でいいだろう。ここで試合する者も皆そうしてるんだから、この場的のルールに従わないとな。」


 「……。」


 「試合の合図は、受付嬢。頼む。好きなタイミングで始めてくれ!!」


 「えっ。ちょっと待ってください!! もうはじめるんですか?! 距離だってまだとってないじゃないですか!! 木刀を取ったばかりなので相当近いですのよ!!」


 俺とムイのお父さんは木刀を取ったばかりなので30cmあるからないかぐらいしか距離がない。

 こんな所で決闘になったら考える前にすぐ負けて終わりだ。


 だが、ムイのお父さんは頭をポリポリと書きながらめんどくさそうにいった


 「なんだ、お前はもしも盗賊が近くに現れたら距離をとるから待ってくれ。とでも言うのか? いつどこで襲われるか分からない世の中だろ。それで自分自身、そしてムイを守れると思うのか?」


 「それは……。」


 「では、文句はないな。では、好きなタイミングで頼む!!」


 俺はその言葉を聞いて、ムイのお父さんと真逆の方向に走り出すが……。


 「はっ始め!!」


 「えっ!!」


 俺は後ろを向いて走ってるさなか、開始された試合。

 絶望の他ない。


 ドン!!

 痛い、痛い、痛い、痛い……。


 何が起こった?

 何も反応出来なかった。


 右側から何か来たと思ったその時、すぐに地面にひれ伏せていた。

 しかも、動くことができないし、なにか重いものでも載せられてるような感覚……。


 「ダメだな。全くなってない。反応速度、魔力の練り、何にしてもダメダメだな。お前の実力はこんなもんか?」


 「お父様、魔法も使ってるー。それはズルー。」


 「ムイ、魔法が禁止って話してないからセーフだよ。セーフ。初めに言わないこいつが悪いんだよ。」


 「違う。武蔵は頑張って強くなろうとしてる。それなのに……。お父様嫌い」


 「えっ……。」


 その声と共に俺にかけられていた魔法が一瞬にして消え起き上がることができた。


 だが、父親はその場で足を地面につき相当悲しそうな顔をしている。


 もはや、この世の終わりではないか。と思うほどの顔だ。


 「武蔵、行こうー。お父様なんて知らないし、手紙も出さないから。」


 「ちょっと待って……。それだけは……。」


 「知らないー。」


 「ムイいいの? 本当に?」


 「いいの、いいの。お父様が悪いんだから。行くよー。せっかくの楽しいデートが台無しでしょ。」


 「うっうん……。」


 「でっでっでっでっデート!!!!!! ……。」


 パタン!!


 チラッとムイのお父さんを見たがその場で倒れ込んでいた。


 それほどムイからのダメージが。愛娘からのダメージが大きいのだろう……。


 「失礼します……。」


 俺達は来た道をそのまま戻ると、冒険者たちが集まっている場所まで戻ることができた。

 しかも、俺たちが戻ってきたら冒険者達は一斉にこっちを見てソワソワしている……。


 小声でなにか話してる感じはあるが、きこえないし、ムイはそんなことを気にもせずそのままギルドを後にした。



 だが、おれの心はモヤモヤしている。

 本当にこのままでいいのかな……。


 この異世界にやってきて、死ぬかもって何度も思った。

 そんな死と隣にある世界だからこそ、家族を大切にしないといけないと思う。


 あの頃の俺は分からなかったが、あのあたりまえだった日常に戻りたい。と思ってしまう時もある。

 でも、俺はあの世界で死んだので戻ることはできない。


 でも、ムイは違う。

 冒険者になったとはいえ、両親もいるし、別に仲が日頃から悪いって感じも無さそう。


 しょっちゅう会えないので、今しっかりと仲直りすべきなのではないのかな……。


 「もう、武蔵さっきからブツブツ言って、全く話聞いてくれないー。」


 「あっ。ごめん、ごめん。ちょっと気になっちゃって……。もう1回ギルドに戻らない?」


 「絶対にヤダー。お父様の顔見たくもないー。しばらくはいいかなー。」


 「でも!!」


 「武蔵もしつこいー。いいったらいいのー。こんなにも武蔵は頑張ってるのに、それを知らずに自分自分なんだから、本当に知らないよ……。」


 「ムイ……。」


 「そんなことは置いといて、楽しい時間過ごすよー。」


 「うっうん。」


 ムイは俺に笑顔を見せてくれたが、いつもと違う作られた笑顔だった……。


 無表情がベースなムイが笑顔になると小さくふふっと笑うが、今はほっぺがあがり違和感が半端ない……。


 でも、ムイがああいうからな……。


 そこからしばらく歩いてお店などを見ているのだが、いつもと比べ元気がない気がする。


 なんて言うか、声のトーンがいつもよりも落ちてるし、笑顔が少ないような……。


 「ムイ、お父様になにかしてしまったのかしら?」


 「そうなのー?」


 「?」


 後ろを振り向くと、そこには金髪でThe貴族。と言う感じのドレス姿の女性がたっていた。

 周りには執事?みたいな人々が何人もいる。


 最近、黒スーツみたいな格好の方によく会うが、どれも原物に攻撃を入れたあいつみたいに俺から見ていい生地ではない。


 異世界なら素晴らしい生地だと思うが、あいつのは別格。

 日本でも高級と言えるもの……。


 だが、この執事?達も圧倒的なオーラを漂っていて近寄りずらい。


 っていうか、今気づいたが周りには俺たちしかいない……。


 「それで、どうなのかしら?」


 扇子を広げ口元を隠す女性。

 一体何者なのか?

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