第48話 ムイのお話……
「よーし。出発ー。」
ムイは何事も無かったかのように言う。
だが、驚いた俺たちは一斉にムイの方を向くが、ムイは俺たちの顔を見て不思議そうな顔をしている……。
「えっ。えっ。ちょっちょっとだけ待って……。ちょっと理解できないから、少しだけ待って!!」
いつも冷静沈着なシアが早口口調で目をキョロキョロさせながら言う。
俺はその異様さから直ぐに現実に戻されるが、未だに頭は追いつかない。
「えっ、ムイが王族で、私たちのパーティーで……。待って、私も頭が追いつかない!!」
「でも、お金が振り込まれるって言ってた。そういう怪しいこと多かった。それの秘密が王族だとは。」
「ムイ……。」
「?」
ムイはいつも通りの平常運転だが、俺たちはどうしていいのか一切分からないでいる。
しかも、頭の中には先程の王女とムイの会話が何度も思い出され、その度に現実なのだろう。と若干の疑いとともにそう思ってしまう。
でも、あの金の装飾に強い護衛、あの迫力……。
やっぱり本物の王女様だよね……。
ああああああ!!
考えれば考えるほど分からねぇ!!
「そういえば、私が王族って言ってなかったっけー? まぁ、直系じゃないから関係ないー。関係ないー。お父様も少しの間冒険者だったし、私のところはゆるゆるー。」
そんなこと言われても、王族は王族だろ!!
いや、待てよ。
さっきのが王女だとして、お姉様扱いということは結構近い間柄なのでは……。
「ちょっと待って。直系じゃないにしても、国の重要人物なんじゃない?」
いつもムイに話す時とは違い、恐る恐るそして若干声が震えながら俺は言う。
「そうだねー。お父様のお兄様が国王ー。昔何回か遊んでもらったことあるし、怖そうな顔しながら案外優しいんだよー。そうだー。今度みんなにも紹介してあげるー。」
「「それだけはやめて!!」」
「?」
俺たちの声がハモって返答したのだが、ムイの頭の上には?がいくつも並ぶ。
国王に挨拶とか冗談じゃない。
いくらムイの親戚だとしても俺の事だ。
絶対に粗相を犯し最悪牢屋行きに決まってるはず。
商人の街でさえ、牢屋行きだったんだから!!
そうじゃなくても、これまでの御無礼が知れれば打首も……。
とりあえず、進もう。
それは後で考えよう……。
今は全く頭がまわらねぇ。
「とりあえず、進もうか……。」
「「うっ。うん……。」」
「よし、行くよー。」
そうして俺たちの旅は再開したのであったのだが、やっぱりムイのことを考えてしまう。
てか、ムイが王族なら敬語使った方がいいよね……。
それと、今まで奢ってもらった分返すつもりだったけど、早めに追加して渡したり……。
いや、それだけじゃ足りないか。なにか高価なプレゼントでも……。
そうだな。
今回みたいに野宿の時に使えるなにか便利なものでもいいかも……。
ちょっと待てよ……
王族を野宿……。
許されるはずがない!!
娘に何してるんだ。と言われながら殺されるとか勘弁だぞ……。
俺は気づくと拳を握っていたのだが、そこには手汗がびっちゃりと隠れていた。
ほんと、どうしよう。どうしよう。
そんな時たまたまシアと目があって、俺は急いでシアの隣に行ってコソッと話しかける。
「シア!! 野宿の件なんだけど、どうにかならない? 今までもしてきたけど、これがもしもムイのお父様にでも知られたら……。」
「!! それに、今回は今までと違って私たち女性だけじゃなくて男性の武蔵のいる。そうなると余計ことが悪化するよね……。でも、距離的に野宿しないといけない距離だし……。馬車は無理だし……。むっ武蔵、なんかいい提案とかいいスキルない? もう、武蔵が希望だよ!!」
「そんなこと言われたって……。以前野宿した時、ムイはどんな感じだった?」
「何も気にするような感じじゃなかったと思うけど。そういえば、初めて野宿した時ソワソワしてたような……。緊張してるのかな? とでも思ってたけど、もしかしてそういうことだよね……。」
「今でも野宿は楽しいよー。」
「「むっムイ!!」」
コソコソ話をしていたら、ムイが俺たちの後ろから話しかけてきた。
驚きのあまり肩あがり、少し避けて振り返るとそこにはムイがいた。
ムイはいつも通り何を考えているのか分からない顔をしている。
だが、聞かないと分からないこともあるって言うし、少しだけなら……。
「むっムイさん……。俺たちは今まで通りに接しても大丈夫なの……でしょうか? それに、今回野宿があるけど色んなところから怒られたりは……。」
恐る恐る聞く俺だが、俺の言葉を聞いた無いは眉間にしわを寄せ、少し怒り口調で言った。
「その、ムイさんとか敬語絶対にダメ。そもそも、王族とか、そんな小さいこと気にしないー。私はムイ。1人の人間。ただそれだけー。みんなと一緒ってことー。だから、絶対にそんな悲しい呼び方はしないことー。いいー?そんな」
「うっうん。ムイがそれでいいなら……。」
「うんー。それでこそ武蔵!! やっぱり私の事分かってくれるー。シアも今まで通りでよろしくねー。よし、みんな頑張るよー!!」
なにかいつも以上に元気に見えたムイは張り切ってジャンプをした。
そうだよな、俺たちが今まで通り接してきたムイなんだもんな。
たとえ、王族だろうが、なんだろうが、ムイはムイ。
そういう肝心なこと忘れないようにしないとな……。




