第49話 怪しげなゴブリン達……
「ふぅ。今日はここまでにしよっか。それで……。ムイ、本当に野宿だけど大丈夫なの?」
「だから、大丈夫、大丈夫ー。もう、今まで通りでいいのにー。ほら、さっさと準備するよー。武蔵早く収納魔法から私たちのバック出してー。」
「はっはい!! いや、うんか……。」
「武蔵……。」
呆れるムイを見ながら俺は収納魔法からみんなのバックを出す。
だが、本当にこんな所で野宿をするのか?
旅を出た時も野原が広がっていたが、未だに抜けられずだだっ広いこの場所。
いつも通りでいいよ。と言ってくれても一応ムイは王族!!
本当に大丈夫なのか……。
地味な緊張感に変な汗が出始めた俺を置いてみんな、何やら薄い布団みたいなものを床に引き4つ角に石を置き始めた。
野宿のイメージ通りといえばイメージ通りだが、ムイは……。
ムイだけ特別高級。ということはなく、みんなと同じような素材ほものを引いていた。
もちろん、俺はこんなことになると思っておらず持ってきていない。
そもそも、知らなかったもんな。野宿にこれが必要とか。
とりあえず、何持ってきたっけ? と思い出していると、不意にムイから話しかけられる。
「武蔵、一緒に薪拾いに行こうー。もしかしたら、落ちてるかもしれないからー。」
「いいけど……。木のひとつも無いここで薪が落ちてるとは思えないけど……。ないですけど……。」
「もう!! 敬語がではじめてるよ!! それは禁止って言ったでしょ!! それよりも、ちょっと見に行くよー。」
「ムイがいいなら……。」
ということで、みんなから少し離れて薪拾いに行くことになった。
俺たちが行く時なんだか、羨ましそうに見ていた人がいたが今回ばかしはしょうがない。
ムイがここら辺ありそう。と言った場所で探してはいるものの、やっぱり見つからない。
それは小さな草しか生えてない野原だからね……。
「武蔵ー。やっぱりダメだねー。生えてる草もこんなんしかないし、これじゃあ消えちゃうよー。どうするー。」
ムイはそういいながら地面に生えてる草を引きちぎり、胸元で上に投げる。
草がヒラヒラと舞い落ちるが、あの小ささ、そして薄さでは全く役に立ちそうにない……。
「さすがに夜は冷え込むよね?」
「うん。薄い布団持ってきてるけど、あれだけじゃ寒い……。」
「ってことは、俺は絶対に薪がないとOUTだな。よし、もう1回探すか!!」
「うんー!!」
張り切り、もう一度探すがやはり無い……。
もうダメじゃん!! と諦めてるところ、救いの手がやってくる。
「しょうがないから、私が持ってきた小枝に火をつけてしよっかー。あんまり持ってないから、少しだけねー。朝方は寒いから気をつけるんだよ」
ムイはそういいながら歯をガタガタと震わせ、両手を抱き寒そうにしている。
そして、無表情。
なんだか癖になってくるな、ムイって。
それに、いつもみたいに接しているとつい王族ということを忘れてしまう。
本当の仲間というか。なんというか。
それに、ムイもこれを望んでるし、少しおかしな所は出てくるかもしれないけど、この調子で行くか!!
「そろそろ、戻ろっか。」
「その前にー。暗くなって分かりずらいけど、ほらあそこ。魔物発見ー!! 武蔵のスキルってこの野原ならどこでも通用するのー? それなら、発動しっぱなしの方が安全だと思うけど……。」
「たっ確かに!! よし、発動するぞ!!」
俺はスキル欄の自宅警備員を手でかざしながら発動。と心の中で唱える。
すると、マップ内に魔物の現在地がピンとして現れ、魔物の名前が分かるようになるがあれはゴブリンだ。
しかも三体だけだ。
あとは……。
近くにはいないから、安心して眠れるね。
「よし、あのゴブリンしか近くにいないから、やっつけるよ!! いいんだよね……?」
「うんー!! 行くよ!!」
そして、俺とムイはそのままゴブリンた立ちに向かって走っていく。
太陽も隠れそうになってきているので、今のうちに仕留めておかないと、トラウマを思い出しちゃうから、本気を出さないとな!!
よし、だいぶ近くまで来て分かったが、ただのゴブリンか。
棍棒のみ持っていて、誰でも倒れるサイズ。
これがゴブリンでも弓を持ってたりするのだったら厄介だからな。
さっさと倒すぞ!!
「ムイは、一体よろしく。俺は真ん中と右の2体受け持つから!!」
俺は自信満々に言う。
だが、ムイは疑心暗鬼と言った感じで返答をする。
「武蔵にできるー?」
「まぁ、見てて!!」
そのまま走りを続けていると、ゴブリンも俺たちに気づいた。
そして、俺たちを1度睨みつけ「キィキィ!!」と鳴き声を発した後にこちらに向かって走ってくる。
今の俺はこの前と違って緊張感もなければ恐怖すらない。
ゴブリンごときさっさとかかってこい!!
「キィキィィィィィ!!」
そう言いながら、一体のゴブリンが俺に向かってジャンプし、棍棒を振りかざそうとしている。
そしてもう一体はと言うと、姿勢を低くし棍棒を横に振りかざしているので、どちらかに気を取られていればダメージを食らう。
だが、今の俺には通用しない!!
俺は腰に掲げてある剣を引きそのままジャンプしているゴブリンに向かって上から一直線上に落とそうとする。
すると、下のゴブリンが「キィキィッ」と笑ったような声が聞こえるが、慌てるな。
お前のこともしっかりわかってるから。
俺は剣を下ろしながら右足で下にいるゴブリンを蹴っ飛ばし、そのまま上にいるゴブリンを一刀両断!!
そのまま飛ばされたゴブリンに向かって走り、落ちた衝撃で痛がっているゴブリンの首を落とす。
だいぶ慣れてきたが、ゴブリンは人と少し似てるから、相変わらず後味が悪い……。
ムイは……。ってさすがに終わってるか。
ムイの近くにはゴブリンが転がっており、俺がムイの方を見ると目と目が合う。
俺もあれぐらい余裕で勝てるようにならないとな……。
「ムイ、そろそろ帰ろっか。」
「……。」
「ムイ?」
「あっ。ごめんー。ちょっとゴブリンが弱すぎて気になっただけ。何もないといいんだけど、何もないとね……。だいぶ暗くもなってきたから、そろそろ帰るよー。それと、ちゃんと敬語じゃ無くなって嬉しかったー。やっぱり武蔵は武蔵だねー!!」
「あっ。ありがとう」
不気味の顔をしていたムイだったが、最後の不意に笑顔でそんなことを言われ俺の心はキュンとした。
って乙女か!!
俺が落とされてどうする!!
とりあえず、収納魔法にゴブリン達を入れ、そのままみんなの元に集合し夕ご飯の準備が本格的に始まった。
シアが卵とパンを買ってきていたので、パンとスプランブルエッグが今日の晩飯。
異世界では、卵はしっかりと火を通さないと危ない。とのことなので結構固めで味付けはないので素朴な味だったが、野宿でわがままも言ってられない。
隣に座ったムイはその卵とパンを一緒に食べ幸せそうな顔をしていた。
そしてその後は各自武器の手入れや、ワイワイ話したりしてあっという間に時間が過ぎていき、寝る時間になったのだが……。
「武蔵、私と一緒に見張りするー。」
「ムイはしっかり寝た方がいい。疲れが溜まってるはず。だから、私と見張り」
「そうじゃなくて、リーダーの私が武蔵と一緒に見張りしてあれこれ教えないとだからね。なんと言っても武蔵は初めての見張りだから、緊張もしちゃうと思うし。」
「それなら、間をとって私かな。ほら、みんな武蔵のこと大好きじゃん。私なら、そんな心配ないでしょ?」
「そう言ってる、リアが1番怪しいー。そういえば、パーティーに誘ったのだってリアが最初でしょー。なにか私たちが知らないことでも、あるんじゃないー。」
「「そっ。そうなの?!」」
「そんなことないから!!」
そういいつつも真っ赤な顔になり、顔をずらした時にちょうど俺と目が合い顔を隠しながら「死にたい……。」と小声で言っていた。
それを聞き逃すはずのない俺は幸せボルテージが上昇し、みんなが俺を取り合っている中ひとりこの状況に浸っていた。
だが、そんな時間はあっけなく終わって、地獄の時間になってしまう……。
「「武蔵は誰がいいの!!」」
その言葉で、俺の手は震え出した。
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