第43話 少女と原物
俺たちは置き去りにされた少女に近づくが、少女は未だに蹴られたところが痛いのかうずくまったままだ。
もし、俺がこの子に巡り合わなければ、こんな痛い目には。運が悪いんだから見逃せば。などと自分を責める文言が何度も頭によぎる。
俺たちよりも早くついた原物が少女に手を当てて「リペア。」と言う。
その瞬間少女から薄い光が発生し、うずくまる力が徐々に弱くなり、最終的には座りながらお腹をぺたぺたと触っている。
「痛くない……。」
「やっと起きたか。」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
少女は蜘蛛のように後ろに後退し、はぁ。はぁ。と息切れをしている。
子供が原物の顔を下から見ればその威圧感で誰でもああなるだろ。
肝心の原物は腹を抱えながらケラケラ笑っていた。
その笑いに戸惑いを隠せず、キョロキョロしながら「えっ。えっ。」と言っている。
「で、お前らはこいつに用事があるみたいだが、なにがあったんだ? 」
「あっ。そうだった!! お金!! 俺から金取ったでしょ!!」
「いや、取ってないよ……。」
だが、少女は下を向きながらボソッと返答する。
「じゃあ、なんで顔みただけで逃げたの? なにか俺と会うと厄介なことがあるから逃げたんじゃない?」
「それは、追ってきたから逃げた。それは誰でもとる行動だよ」
「何故追ってきてるとわかった? 俺たちと目が合った瞬間走り出したから、追ってるかどうか判断が着く前だっただろ?」
「……。」
「おいおい。金ぐらい盗まれるなよ。領主も復活して、やっと経済が回り出すって時になにやってるんだお前は!!」
「……。俺?!」
俺と少女の間に立ち、「はぁ。」と溜息をつきながらじっと見てくる原物……。
ちらっと少女のことが見えたのだが、少し顔を上げて片方だけ口元を上げて嫌な顔をする。
絶対犯人こいつだな!!
それにしても、なんで俺に責任があるんだよ。どう考えたって盗んだこいつが悪いでしょ!!
こいつのせいでとんだ災難にも見舞われたし、絶対こいつが。。。
「原物それはちょっと違うと思うー。でも、今回は武蔵の事だから特別に許してあげるー。武蔵はやっぱり私に奢られる存在だからねー。それが今回ではっきりしたってことで万事解決ー!!」
「どこが!!」
「おい、武蔵。あいつらを追っ払ったのは俺だよな。じゃあ、この金は俺のもんでいいよな。それなら、少女にあげな。お前はその内手に入るだろ。それにムイに色々買って貰え!!」
「原物さん……。」
「そういうことだ、さっさとギルドに行くぞ!!」
「はい……」
ということで、俺の金は戻ってこなかった。
とりあえず、少女をギルドに移動させるか。と原物が声をかけ行こう。と言うと少女は大声を張り上げた。
「絶対に行かない!! あそこに行ったところで、あいつらは絶対にやってくる……。それで、私もお母さんみたいに……。……。」
「おいおい、どういうことだ? 何がこの街で起こってだ? お前のこと少し聞かせろ。なんで盗みなんかした? あいつらは何もんなんだ!!」
「……。わかった」
そうして少女は話し出したが、俺が全く想像したものではなかった。
シングルマザーで母親が唯一の頼りだった少女は、ある日あいつらに連れ去られたらしい。
母親は娘を解放するために一生懸命働いたが、途中で体を壊してしまった。
働けないものの世話なんてできない。と言われそのまま、無抵抗のまま、魔法を放ちあっけなく殺された。
お前も母親のようになりたくないのなら、働け。と言う暗示があり、なんでも仕事をこなすようになったらしい……。
そして、あいつらの素性は詳しくは知らないと言っていた。
少女は話ながら体を震わせ、泣きそうな声で途中何度も唇を噛んでいた。
「そうか……。お前俺と来い。あいつとは真剣に戦ってみたいが、ただ俺がいてもやってこない。それなら、お前がいればいい。それに、お前は俺という安心材料があるだろ。どうだ? どうせここに留まる理由もないだろ」
その言葉を聞いた瞬間胸の引っかかりが取れたような感じがした。
だけど、あの原物と一緒か……。これは苦労するな。
「でも……。」
「俺はS級冒険者だ。そこら辺の奴よりも頼りになるだろ!! それに、子供は子供の仕事をすればいい。大人ぶるな。わかったら着いてこい!!」
「はい……。」
「ってことだ。お前たちもギルドに報告するなよ。色々めんどくせぇからな!! まずお前は俺の飯を食べて元気になれ。じゃあな!!」
そう言って原物は少女を抱えその場から去っていった。
いつものように威圧感ではなく、何故か優しく包み込んでくれれるような感じがした……。
まっ。気のせいか。
今の俺の心情は原因だったお金など考えていない。
あの子と原物がどのように過ごしていくのか。
そして、どんな成長を遂げるのかが気になってしょうがなかった。
ほんと、あの子には幸せになって欲しいな。
俺の肩に急に重みを感じたので振り返るとムイが手を置いていた。
「事件解決ー。さっきの喫茶店に戻ろー。お腹すいたよー。」
いつも通りのムイ。
一瞬呆れるが、その後はクスッと笑いそうになった。
なんやかんやいってムイには救われるな。
「はぁ。そうだな!! ムイの奢りだろ!! いっぱい食べてやるからな!!」
「いいねー!! その意気だよ!!」
元気を取り戻した俺は顔を上げ、そのままみんなで喫茶店に行った。
ムイの奢りということで遠慮なく食べその後、部屋で天井を見上げながらゆっくりした。
金貨の方のお金はとりあえず俺が、しっかり収納魔法にしまっとく。という形になったので責任重大だ。
ということなので、実質パーティーを組んだ。という状態になった。
はぁ。とりあえず、この街からさりたいな……。
火木土更新予定




