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界変のアルテントロピー  作者: 芳蓮蔵
第一章 異能変
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勇者《Ignorance》⑩

 ――2063年12月。


 量子情報学者アルファ・コールマンが「宇宙は、時空間とエネルギーが存在する物理次元と、それらの情報のみが存在する情報次元によって構成される」とする『情報次元論』を提唱。


 ――2068年4月。


 先進国が共同で行っていた次世代型量子コンピュータ開発プロジェクトにより、極めて優れた知性と自我を備える人工知能『ADAM』が誕生。以降ロボット、アンドロイド、ヒューマノイド等はADAMを基に改良され、包括的に『創られた知性(インテレイド)』と呼称されるようになる。


 ――2069年10月。


 情報次元論の研究により、「物体が持つ情報は質量・エネルギーとの等価交換が可能」という『コールマンの法則』が発見される。


 ――2073年1月。


 ある枠組みで捉えた特定の物理構造は、情報次元上において独自の特性を持つということが確認される。なかでも「人間」は、情報を直接書き換えるエネルギーのようなものを生成しており、この器官的性質及び構造が『クオリアニューロン』と命名された。


 ――2074年6月。


 クオリアニューロンが生み出す力を用いることで、エントロピーの可逆変化が可能であることが発見される。その力は一般にアルター・エントロピーと呼ばれる。


 ――2079年11月。


 アルター・エントロピーを使った量子の情報操作技術が確立され、ほぼ全ての元素の性質や量子的振る舞いを再現できる量子マシン『元素デバイス』が開発される。


 ――2081年2月。


 分割解釈が不可能な42種類の情報の最小概念『情報子(サンヒター)』を用いることで「この宇宙に存在する全ては完全に記述可能である」ことを、ADAMが数学的に証明。科学による真理への到達を示唆した。


 ――2081年9月。


 ADAMの証明が神の存在の否定であるとして、宗教団体の一部過激派が世界中で大規模なテロを実行。これを発端として原理主義者と科学自由主義者との戦争が勃発。後に『AI戦争(または人類回帰のための聖戦)』と呼ばれるこの戦争は、瞬く間に戦火を拡大しやがて核兵器を用いた世界的大戦へと発展した。


 ――2082年5月。


 ニューデリーの人口知性研究施設が爆撃を受け、インテレイドの生みの親アルファ・コールマンが死亡。


 ――2085年12月。


 各国の主要都市及び世界的な自然環境の破壊により、「勝者のいない戦争」としてAI戦争が終結。


 ――2091年7月。


 先の大戦による戦禍修復のため、新地球主義者を主とする各国政府の働きかけにより、人類の大半が地球から月と火星に移住。


 ――2100年2月。


 元素デバイスのエンタングル通信機能を利用した有機ネットワークリンクシステム、通称『OLS』が誕生。僅か1年で普及率が人類の99.99パーセントに達する。


 ――2113年4月。


 世界情報次元調査局設立。観測用インテレイド『AEOD(アイオード)』による情報次元探査プロジェクトが発足。これにより情報次元に実体の無い宇宙が存在することが確認され、当局はこの宇宙を『コードLM1』と命名。


 ――2114年8月。


 LM1の情報を解析した結果、その宇宙の性質や形態が、人類に親しみ深い空想の世界に酷似していることが判明。これを受けて当局はその別宇宙を『亜世界』と命名し、また差別化のために現実の世界は『源世界』と呼称されるようになった。以降2130年までで、延べ4万5千個の亜世界が発見される。


 ――2130年7月。


 個人の存在情報を『情報体(アートマン)』として亜世界に関連付けることによって、源世界の人間を亜世界へと転移させる次元転移技術が確立。そのための転移装置『クリサリス』が開発される。


 ――2135年5月。


 亜世界コードCT2に向けた人類初の次元転移実験が行われる。しかし現地で発生した事故により、CT2及び被験者は消滅。また同時に源世界においても2千万人を超える人間が消滅したと推定されるが、存在情報そのものが消失したため、誰一人として「誰が消えたか」を特定するには至らなかった。


 同年12月、世界情報次元調査局は、この全世界における人間の完全消滅等について以下のような発表を行った。



(当局内部資料より抜粋――)


「亜世界とは、多くの人間に認識・共有化されることで構築された想像上の世界観が、各個人の持つアルター・エントロピーによって固定化されることで創造され得る、新たな宇宙である。亜世界が消滅した場合、創造に深く関わった人間の情報も当該世界とともに失われ、消滅に至るものと考えられる。この消滅現象は、情報改変によるエントロピーの加速的な増大や整合性の欠損により、亜世界自体が情報を維持できなくなった場合に発生する。以降当局では、この両世界の情報消失現象を『FRAD(致命的且つ破滅的な情報改変災害)』と呼称する。また関連して、クオリアニューロンから発生し情報そのものを改変する力を、現在の俗称であるアルター・エントロピーから『アルテントロピー』へと改めるものとする」



 ――2137年2月。


 亜世界には過去の源世界から偶発的に次元転移した人間が存在することが確認され、『転移者』と呼ばれるようになる。また彼ら転移者の多くは強力なアルテントロピーを保持していることから、FRADを誘発する恐れが高いとされた。


 ――2138年4月。


 FRAD及びそれへと発展する恐れのある情報改変を規制する国際法『亜世界情報改変規制法(通称:改変法)』が成立。


 ――2140年10月。


 世界情報次元調査局は組織名を『世界情報統制局』と改め、改変法違反の取り締まりのための独立執行機関として再編。これに伴い、現場実務に当たる亜世界情報規制官として、極めて強力なアルテントロピーを保持する者達が選出・任命された。


 その彼らは後に、情報次元の絶対摂理を司り、亜世界とその設定(ルール)を護る者として『規制官(ルーラー)』と呼ばれた――。


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