第十三話 4月19日
長い間、お待たせしました。
『“絶攻焔”、イグニッション!』
『“絶攻雷”、スタート!』
包み込むような焔の奔流を見た僕は、負けじと雷の大槍を発現して迎撃をする。
「くっ! 流石は、“閃雷”と言ったところか……」
「先輩も、なかなかやりますよ!」
「言ってくれる!」
僕の言葉を聞いた、模擬試合の相手である高等部二年で純人の先輩が、苦笑いをしながらそう言う。
勿論、試合の最中なので、それだけでは終わらないが。
先輩は持っていた大槌を振りかぶると、その頭部に魔法陣を展開させる。
そして──、
『“グランドクエイク”、イグニッション!』
「わわっ!?」
──その大槌を、勢い良く地面に叩き付けた。
土属性魔法“グランドクエイク”。
地面に与えた衝撃を倍増させて、相手にダメージを与える魔法だ。
まともに喰らったら、ただじゃ済まないだろう。
それを見た僕は、素早く両足に魔法陣を展開させる。
『“雷光靴”、スタート!』
雷電のブーツを編み上げた僕は、上空に跳んで衝撃から逃げる。
しかしこの回避方法には、一つの大きな欠点がある。
それは──、
『“岩石砲、イグニッション!”』
──二段攻撃の回避が難しいことだ。
上空では方向変換が難しいため、攻撃された場合は迎撃する他することがない。
僕は、右手に魔法陣を展開すると、再び雷の大槍を発現させる。
『“絶攻雷”、スタート!』
それを、闘技場の大地から打ち出された岩石の砲弾に投げ付けようとして――、
――キラッ!
『――っ!? “キャンセル”っ!!』
砲弾の表面が鏡面のように輝いたのが見えた僕は、咄嗟に雷の大槍を消し飛ばす。
――ザワワッ!
僕の行動を自殺行為と思ったのか、観客たちが一斉に悲鳴を上げる。
いや、観客だけでなく対戦相手や審判団も、似たような反応をしている。
どうやら、誰も砲弾の異変には気付いていないようだ。
「今魔法撃ったら、逆に危ないんだから……っ!」
僕はフィールドの外を一瞥しながらそう言うと、再び砲弾を見据える。
これなら、タイミングさえ合えば……。
心の中でそう呟いた僕は、右手に小さな、左手に巨大な魔法陣を展開させる。
そして、砲弾がぶつかろうとしたその瞬間――、
『“絶攻雷”、スタート!』
――右手の魔法陣から雷の球体を発現させ、更にそれを破裂させる。
「くっ……!」
右手に鋭い痛みが走り、体全体を爆風が襲う。
しかし、僕はその爆風を最大限に利用をして、空中で大きく体を捩る。
――ザワワッ!
観客席に再びどよめきが走るころにはもう、岩石の砲弾は、僕の体を紙一重で通り過ぎて行った。
勿論の如く、対戦相手の先輩は、見事に度肝を抜かれている。
このチャンスを逃すワケにはいかない。
僕は、左手をその先輩の方に向けると、右手で腰に挿したクナイを引き抜きつつ、先程用意していた魔法を発現させる。
『“天雷衝閃”、スタート!』
そこから放たれたのは、怒号を伴う雷光の奔流。
この模擬試合の基準ギリギリの雷属性魔法だ。
それを見た先輩が慌てて、土属性の防御魔法を発現しようとする。
が、それよりも先に天雷衝閃がフィールドに突き立ち、その衝撃で先輩の体を吹き飛ばした。
「かはっ……!」
地面に体を強く打ち付けた先輩は、肺から空気が搾り出されたためか、苦しそうに呻いている。
この様子だと、しばらく間はまともに動けないだろう。
フィールドに着地した僕は、心の中でそう呟いた後に、地面に倒れた先輩に近付く。
……うん、少し気を失っているだけで、怪我とかはしてないみたい。
取り敢えず、クナイを首筋に近付けて勝敗をしっかりと示してから、審判に目で合図を送る。
それを見た審判は、こちらを見て一度頷いた後、スタジアム全体に響く大声で言った。
「勝者、神刃 クロー!」
今日は、幻世歴4999年4月19日。
ガオンとの“決闘”があった入学式から二週間が過ぎていた。
その間、“閃雷”の二つ名を持ち、模擬試合の連続無敗記録を更新中の僕は、今日みたいに名を上げたい生徒達と“決闘”を行ってきたのだが……。
「ついに、積極的に手を出してきたか……」
僕は、控え室(武器庫)に戻る廊下の途中で立ち止まり、小声でそう呟いた。
脳裏には、先程の試合――特に、最後に放たれた“岩石砲“のイメージが強く浮かんでいる。
――あの、鏡面の如き光沢が。
「ねぇ……アパはどう思う?」
僕は、最近は変な生物の姿をしているお目付け役の意見を聞く為、フィールドの入口に置いていた鞄に声を掛ける。
……が、いつもなら欝陶しいくらいに口煩いアパが、なんの返事もしてこない。
「アパ……?」
僕は、不審に思って、首を傾げる。
そして、その時になって、僕はあることを思い出した。
「あ、そう言えば! ……アパには調査を頼んでたんだったっけ」
そうそう。
アパには、最近気になってきていたアレについて、調べて貰ってたんだった。
そこまで思い出した所で、僕は溜め息を一つ吐いた。
まだ情報が少ない以上、早急な判断は危険過ぎる。
しかも、間違いなくアレが僕ではなく彩那を狙っているから、少しのミスで彼女に危険が及ぶことに成り兼ねない。
絶対に、慎重に行動するのが一番なのだ。
「はぁ……」
僕は再び溜め息を吐くと、控え室に向かって歩き出す。
――僕には、少しでも長い間、彩那の側にいて彼女の安全を確保する義務ある。
そう心の中で呟いた瞬間、僕は自然と、早足で控え室に向かい始めていた。
「何もなかったらいいんだけど……」
僕は歩きながら、ぽつりとそう呟く。
龍族の掟である“守護の儀”が始まっかてから二週間。
僕の中では早くも、嫌な予感がしてきていた。
皆さん、お久しぶりです。
現野 イビツです。
テスト期間や、新作執筆などの様々な要因が重なり、半月近く休むことになってしまいました。
本当に申し訳ありません。
新しい作品、“神薙 零祈の自殺狩り旅”の投稿も始めましたので、そちらの方も一読下さい。
それでは、次回“蝙蝠襲来(前編)(仮題)”をお楽しみに。
以上、現野 イビツでした。




