第十話 長かった一日(前編)
久露埜 陽影さんの「ファルシオン学園の闘争記」を読んで、あんな感じの次回予告がしたいなー、と思う今日この頃。
「……さて」
ハノンと僕のやり取りを見ていたガオンが、口を開いた。
「そろそろ話を聞かせて貰おうか、クロー。仲直りの確認の為だけに、俺らを呼んだワケじゃないんだろう?」
「え!? そうなの、神刃くん?」
「うん。ガオンは、話が早くて助かるよ」
ガオンの言葉を聞き驚くハノンに、僕は軽く微笑みながら頷く。
「あ……そ、そうなんだ」
すると、ハノンは顔を赤らめながら頷き返してくれた。
ガオンが言ってたことに気付かなかったのが、そんなに恥ずかしかったのかな……?
「……なぁ、風紀委員ちゃん。俺、レイトレードが可哀相に見えてきたんだが」
「……勘が良いね、ガオンくん。でも、クローのあれは、いつものことだよ」
「……あんたも苦労してんだな」
「? 二人とも、何か言った?」
「「いや、何も」」
二人が小声で話していたようだから聞いてみたのだが、即座に否定されてしまった。
……まぁ、彩那たちも仲直り出来たようだから、よしとしよう。
「じゃあ、そろそろ本題に入ろうか」
「「………………」」
僕の言葉を聞いた瞬間、ガオンとハノンが軽く息を呑む。
それを見た僕は、軽く苦笑して二人に言った。
「二人とも、そんなに身構えなくていいよ。ちょっと、ある所までついてきて欲しいだけだから」
「ある所?」
「それって、何処だ?」
二人とも、仲良く同時に疑問を口にする。
それを見た僕は、笑いを堪えながら二人に言った。
「今から行くのは、“学生街エリア”にある教会――風紀委員会の本部さ」
ここは、学生街エリアの中でも、森林エリアとの境界線に近い場所に位置する花畑。
その中心にあり教会の前に、僕ら四人は立っていた。
「ここがその、風紀委員会の本部ってやつ?」
「うん、そうだよ」
「……その割りには、やけに小汚いんじゃねぇのか? 古いし、小さいし……」
「私もそう思うかも……」
その小さな二階建ての教会を見たガオンとハノンが、口々にそう言う。
それを聞いた彩那が、苦笑しながら言った。
「本当の風紀委員会の会議室は、校舎の二階にちゃんとあるよ」
「? じゃあ、何でここが本部なんだ?」
「風紀委員長の綺天塚先輩が、龍神信仰の信者だからなの。いつでも黒龍皇様のご加護が受けれますようにって、去年本部をここに移転したの」
彩那がそこまで話した時、ハノンが突然口を開いた。
「龍神信仰? 何それ?」
「……あー、ハノンは魔人だから知らないのか」
「神刃くんは知ってるの?」
「亜人には、割りとポピュラーな信仰だからね」
こちらに顔を向けてくるハノンに、僕はゆっくりと言った。
「この世界には数多くの宗教があってね。龍神信仰はその中でも、世界三大宗教に数えられるものなんだ」
「え!? そんなに凄いの?」
「まぁ、亜人の大半が、龍神信仰の信者だからね」
「へぇー……」
「内容は、世界で最強の生物たる“龍”を神として崇めるもの。特に、“黒龍皇”は絶対神みたいな存在とされるから、熱心な信者にとって、シュバルツシルトは聖地みたいなものなんだよ」
「なんか……六神信仰みたい」
「六神信仰?」
今度は、ハノンの呟きを聞いたガオンが、疑問の声を出す。
僕は苦笑しながら、その質問にも答える。
「六神信仰も三大宗教の一つで、信者の大半が魔人だというのが特徴の信仰だね。内容は、武神・智神・聖神・魔神・破壊神、そして創造神を崇めるというもの」
「ふーん……。でも、それの何処が龍神信仰に似ているんだ?」
「気付かない? 二つの信仰はどちらも、“強者を崇めて、加護を受ける”のを目的にしている。違うのは、その強者が実在するかしないかくらいだろうね」
「……信仰なんて、どれもそんなもんだろ?」
「そんなことないよ!」
「!? どうしたのさ、風紀委員ちゃん?」
彩那にいきなり怒られたガオンが、驚いて目を見張る。
そんなガオンを見た僕は、一応彼のフォローに入る。
……何か、さっきからこんな役回りばかりのような気が。
「えーと……三大宗教の最後の一つは、自然信仰って言って、彩那はその自然信仰を奉る神社の巫女だから」
「そ、そうなのか!?」
「そうだよ! 自然信仰は人と自然が“共存”するって考え方から、私好きなの!」
「そ、そりゃすまんかった……」
「フフッ」「クスッ」
彩那に気圧されるガオンの様子を見ていた僕とハノンは、同時に笑いを零す。
「なっ、なんだよ!」
「いや、二人も仲直りが出来て良かったなって」
「そうそう」
僕の言葉に、ハノンが直ぐさま追従してくれる。
ハノンとは、とても仲良くなれそう――
ギリッ!
「――痛ったぁぁぁあ! 彩那、いきなり何するの!?」
「知らないわよ!」
「え? えぇぇ!?」
横腹を抓っておいて、その言い草は理不尽だと思うんだけど!?
「……私が言うのも何だけど、神刃くんは乙女心が分かってないね」
「……頭は悪くないとは思うんだが」
また、ガオンとハノンが小声で話している。
軽い疎外感を覚えなくもない。
何となく肩身が狭く感じた僕は、今度こそ本題に入ることにした。
「それじゃ……彩那、お願い」
「……しょうがないなぁ。明日、何か奢ってね」
「りょーかい」
僕のその言葉を聞いた彩那は、満足そうに一回頷いた後、教会の扉を叩いた。
「綺天塚風紀委員長、只今参りました!」
一週間程、風邪で休ませて頂きました。更新が遅れて、本当に申し訳がありません。さて、休んでいる間、そろそろサイドストーリーなんかも書いてみたいなー、なんて思ってみたり。もし、こういう話を書いて欲しいなどという要望がれば、是非とも感想などでお申し付け下さい。
それでは、次回“長かった一日(中編)”をお楽しみに。
以上、現野 イビツでした。




