第九話 試合の後に
14000PVを突破! 順調に進んでいってると思います!
「あー、疲れた……」
「本当にお疲れ様、クロー♪」
「あ、うん、ありがとう、彩那」
入学式早々の“決闘”が終わってか、はや二時間。
僕は今、彩那と二人きり(正解には、鞄の中にアパもいるが)で、控え室代わりの武器庫にいた。
もう使う必要のないこの部屋に二人きりでいるのは、人には言えないやましいことをするため……では、もちろんなく。
とある人物を、二人で待っているだけなのだが……。
「……ねぇ、彩那? 何かあったの?」
「え? どうして?」
「いや、さっきから上機嫌だし、全然腕から離れてくれないから」
そう。
彩那は今、僕の右腕にしがみつき、ずっと話し掛けてきているのだ。
こんなところを誰かに見られたら、彩那はどうするつもり何だろう?
まぁ、扉は閉まってるから大丈夫だろうけど。
「で、クローは私が何で機嫌がいいか、聞きたいの?」
「いや、別にいいんだけどね」
「そう、そんなに聞きたいの♪」
「いや、だから別に――」
「いいよ! クローだから教えてあげる♪」
「………………」
何故か、彩那に無理矢理押し通された。
語尾に音符を付ける程、良いことでもあったんだろうか?
しょうがないので、彩那に聞いてみる。
「……それで、何があったの?」
「あのね……クロー、今日も私のこと庇ってくれたでしょ? それが嬉しかったの♪」
「それって、いつものことでしょ?」
「クローにとってはそうでも、私にとってはそうじゃないの!」
「そういうものなの?」
「それに、その……今日のクローは、か、恰好良かったから」
「え? あ、ありがとう……」
顔を赤らめながら言う彩那に、僕はそう返事をする。
「………………」
「………………」
何故か、その場を支配する沈黙。
気不味くなったので、僕は咄嗟に話題を変える。
「それで……何で腕にしがみついてるの?」
「えっ!? ええと、その……そう! こっ、これは、ご褒美だよ!」
「ご褒美?」
「ほ、ほら、クローは今日も頑張ってたから! 男の子って、こうやって胸を当てると喜ぶんでしょ? 前にクラスの子が言ってたから――」
「む、胸って……!?」
彩那のその言葉を聞いた僕は、思わず顔を真っ赤にする。
「ぼっ、僕がそういうの苦手って、彩那は知ってるでしょ!?」
「そ、そうだけど……」
「それに、ご褒美って言っても、彩那は初等部の頃から、あんまり体型変わってな……あ!」
どうしよう。
混乱していたせいで、つい口を滑らせてしまった。
恐る恐る彩那の方を見ると、ゆらり、と闇色のオーラを立ち上らせていた。
「あ、あの……彩那さん? 貴女の得意属性は光属性じゃありませんでしたっけ?」
「クロー、私が七属性全て使えること、忘れたの?」
「め、滅相もございません……」
そう言えば、そうだった。
“ファンタジア”には、火・水・土・風・雷・光・闇の基本七属性が存在し、彩那はその全てをそつなく使いこなすことが出来る。
これは、とても珍しい事だ。
この世界では、亜人は二つ、魔人は四つ、純人は六つまでしか属性を使えないのが、この世界の常識。
だから、七つの――いや、本人は気付いていないが、八つ(・・)の属性を使いこなせる彩那は、まさに天才と言うべき存在であり、いつもは尊敬をしているのだが――今はそれどころではない。
『響き渡れ、“捕縛闇”』
「あ、彩那っ!? そんなことされたら、腕が動かせなくなるんだけど!」
「安心してよ、クロー♪ ……逃がさないから」
「ひぃっ!!」
どどどどうしようっ!?
右手に纏わり付く闇のせいで、この場から逃げ出すことが出来ない。
こうなったら……仕方がない。
「あ、彩那?」
「何、クロー?」
僕は、彩那の目をじっと見ると……勢い良く頭を下げた。
「そ、その……ごめんなさい! 流石にデリカシーが無かったと思います」
「……え!? クローが“デリカシー”って言葉を知ってるなんて……」
今、素直に謝ったのに、失礼なことを言われた気がする。
「ぼ、僕だって、女の子への謝り方くらい知ってるよ!」
この国の大臣の一人にして、“魅惑のカーサ”と呼ばれる、妖龍カサンドラに教えて貰ったから。
カーサは用も無く抱き着いてくるから苦手だけど、こういうことに関したアドバイスはとても的確だ。
「しょ、しょうがないから、今日は勘弁してあげる!」
現に、彩那はちゃんと許してくれたし。
やっぱり、カーサは凄いなぁ……。
「……あ、あんな潤んだ目で見られたら、許さないなんて言えないよ」
「え? 何か言った、彩那?」
「な、何でもないよ!」
彩那が小声で何かを言ってた気がしたのだが、即座に返事をされた。
まぁ、何もないんだったら、別にいいんだけど。
僕が、心の中でそう呟いた時だった。
トントン、と武器庫の扉を叩く音。
どうやら、待ち人が来たようだ。
彩那が慌てて“捕縛闇”を解除したのを確認した僕は、扉の外にいる人物に声を掛ける。
「入っていいよ!」
数瞬の後、扉が開いて二人の人物が、武器庫に入って来た。
僕は、その内の一人――今回の対戦相手だったガオンに聞く。
「どう、ガオン? 仲直りは出来た?」
「……あぁ、何とか許して貰えた」
「そう、それは良かった」
僕はそう言いながら、ガオンの後ろにいたもう一人の来客を見る。
そこにいたのは、銀髪のショートカットに、紅い右目に碧い左目――魔人特有の妖色眼が目立つ少女。
名は、ハノン・レイトレード。
“決闘”前に、ガオンに絡まれていた少女である。
ハノンは、ガオンの後ろから前に出ると、僕を見詰めながら言った。
「あ、あの……神刃くん、ありがとう!」
「気にしなくていいよ、ハノン。友達として、当然のことしただけだから」
「で、でも……」
「それに、クラス内で仲が悪い子たちがいると、僕も嫌だからね。そういう意味じゃ、あの“決闘”は僕の我が儘だったんだよ」
「………………」
「だから……気にしちゃダメだよ?」
「……うん!」
そこまで言うと、ようやくハノンも納得してくれたようだ。
ハノンは、何故か顔を赤らめながら僕の顔をじっと見詰めると、
「ありがとう」
と、もう一度だけ言った。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
先日10000PVを突破した記念に、『ツンデレ悪魔の設定集』と言う新作を掲載させて頂きましたので、そちらの方もご覧になって頂けたら嬉しいです。
それでは、感想・アドバイス等、お待ちしております。
また、次回“長かった一日(前編)(仮題)”をお楽しみに!
以上、現野 イビツでした。
……でも、いつになったら入学式が終わるんだろう?




